メルマガでもご紹介しておりました注目企画「ネクスト・ジェネレーション vol. 2」が開幕。トップバッターは快快(ふぁいふぁい)。次は⇒1、2
快快は「CoRich舞台芸術アワード!2008」にて第一位を獲得しておりましたので、公演公式バナーがCoRich舞台芸術!のTOPページに貼られました。
平日3ステージ全てが満席。立ち見や通路席まで埋まる盛況ぶりでした。ロビーには舞台となった部屋の周囲の町の模型を展示。劇場への通路をカラフルに飾りつけるなど、ホスピタリティ溢れる空間になっており、観客を歓迎するムードを大々的に演出していました。物販も充実。観客としてとても嬉しかった。
そういえば戯曲は期間限定で公式サイトから無料ダウンロードできました。⇒快快ツイッター
⇒CoRich舞台芸術!『インコは黒猫を探す』
私は本編後に上演されたダンス短編『ビオレリヨ』との2本立てで1作品だと、勝手に受けとめました。作品全体の完成度は高いとは言えないと思います。でも自分の身体と言葉で、リアルな生活そのものを楽しいパフォーマンスにしていることに、個性を感じました。
不況の日本ではふらふらと気楽には生きられないですよね。だって明るい老後なんて全然想像できないし・・・そんな現実を受け入れつつ、元気にハッピー生き(ようとし)ていることを、説教くさくなることなく表現してくれているように思いました。
ここからネタバレします。
≪あらすじ≫
インコを2匹飼ってる青年の部屋。六畳のアパートで一人暮らししながらインコ溺愛中。友人が訪れる。そういえば3年前もこのメンツで集まったっけ。
≪ここまで≫
パっと見は何もないシアタートラム。床には(おそらく)ベニヤのパネルが敷き詰められていました。舞台奥に可動式のワンルームには畳の部屋と小さな台所、便器、浴槽。インコも本物が登場。
インコは可愛いし、クーラーがない部屋は熱いし、チゲなべは美味しいし、友達と飲むのは楽しい。友達の家への道すがら、いつもそこに居た黒猫がいなくなったことに気がついた。ちょっとさびしい・・・。そんなどこにでもありそうな今の若者のたわいない日常を、そのまま、本人の言葉と身体で楽しい見世物にしていきます。
インコや猫、バナナの写真、マクドナルドのロゴ(布へのプリント?)が張り付けられた衣裳が可愛い!!若者らしいカジュアルな洋服で、色調は淡いパステルで軽快さもあります。でもそのデザインが生まれた下地には憂いと知性がある気がします。いつでも自分を襲ってくる心の暗闇や、やがて訪れる隣り合わせの死を知っていて、その悲しみをこっそり抱いているような。これは演出や演技についても感じることです。
友達から結婚の知らせが届いて驚いたり喜んだり。でもなぜか照明は赤く黄色く、音も激しく。熱く派手に踊るのは、心がどうしようもなく騒いでしまうからじゃないかしら。だって今の時代、自分が生まれ育った環境を夢見ていては、結婚なんてすごく難しいから。⇒「10年前より200万円も安くなった35歳の年収~『"35歳"を救え』」
山崎皓司さんはいつもながらの身体をはったパフォーマンスが面白いです。“アーユルヴェーダ”の真似をしてサラダ油を全身に塗ったり。顔を赤く塗って火になったり。
インコ役は黒木絵美花さんと師岡広明さん。黒木さんはバレエの動きがとても可愛らしかった。
白い照明がステージの周囲をなぞるように、ぐるぐると動いて点滅していくのがかっこいい。七色のパステル調の可愛らしい明かりが回るのが可愛い。最後の方で床置きの多数のスポットライトが素早く順番に点滅して、光が動いているような演出もあり。これは過去公演でも注目されていました(⇒1、2)。
本編が終了してからダンスが始まるまでの休憩時間に流れた音楽が、たしか昔の人気香港映画の曲(←勘違いかも)、小沢健二さんの曲など。じわじわと涙が出て来てしまった。アーティストが優しい音楽で闘ってきた、歴史のようなものを感じたからだと思います。
★香港映画の曲で合ってました。映画「恋する惑星」の「夢中人」(Faye Wong)でした。教えてくださった方、ありがとうございました!
●ポストパフォーマンスダンス『ビオレリヨ』
出演:板橋駿谷 糸山和則 大石貴也 黒木絵美花 竹田靖 田島冴香(東京タンバリン) 田村健太郎 福田貴之 堀田創 前野未来 光永由佳 墨井鯨子(乞局) 師岡広明
作・演出:野上絹代
ラヴェルのボレロをバックに、互いに見知らぬ若者たちの日常会話が並列に集まって、やがて宇宙に。「ミスタードーナツのポンデリングは曼荼羅ににてる」等。反復するクラシック音楽に合わせたコミカルなダンスから、細胞の振動、太陽と惑星、銀河系。いのち。
20代の注目される作り手の共通点は、たわいない日常と宇宙が、直感的に、シームレスにつながっている表現にある気がしました。疑問に思ったらすぐにネット検索して、何でも画像や動画で知ることができる時代です。好奇心旺盛な若者ほど早く賢くなるのは当然。感心してる場合じゃないですよね、自分も勉強しなければ。
シアタートラムネクストジェネレーションVol.2 世田谷区芸術アワード“飛翔”2008受賞者公演
出演:中林舞 山崎皓司(以上快快) 板橋駿谷 黒木絵美花 菅原直樹 墨井鯨子(乞局) 竹田靖 千田英史(Rotten Romance) 師岡広明
脚本:篠田千明 演出・振付:野上絹代 舞台監督:佐藤恵 美術:佐々木文美 照明:富山貴之 音響:星野大輔 衣裳:藤谷香子 テキスタイルデザイン:大道寺梨乃 演出補佐:北川陽子 宣伝美術:天野史朗 キャラクターデザイン:しんぽうなおこ 写真:加藤和也 faifaiせーさく(制作):山本ゆい 【主催】世田谷区、財団法人せたがや文化財団 【企画制作】世田谷パブリックシアター 【後援】世田谷区 【協力】東京芸術劇場(財団法人東京都歴史文化財団)、東急電鉄、東急ホテルズ、渋谷エクセルホテル東急
【発売日】2009/11/15 全席指定・税込 前売 一般=2,500円 TSSS(学生席)=1,250円(枚数限定、要事前登録) 高校生以下=1,250円(劇場チケットセンターにて前売のみ取扱い/要年齢確認) 劇場友の会会員=2,000円 世田谷区民割引=2,300円(劇場チケットセンターにて前売のみ取扱い) 当日2,500円 3劇団セット券 6,000円(枚数限定、劇場チケットセンター電話&店頭にて前売のみ取扱い。ネクストジェネレーションvol.2で上演する「快快」「演劇ユニットG.com」「FUKAIPRODUCE羽衣」の3公演がセットになったお得なチケット。)
http://faifai.tv/faifai-web/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。