ハセガワアユムさんが作・演出されるプロデュース集団MU(ムー)の公演を久しぶりに拝見(過去レビュー⇒1、2)。『ゴージャスな雰囲気』(作:笹木彰人)と『めんどくさい人』の2本立てで、上演時間は約2時間10分(休憩なし)。
出演者はオーディションで選ばれたそうです。キャスト違いの3バージョンありまして、私は[A]を拝見。
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『ゴージャスな雰囲気』は自称ナルシストな男たちがなぜか人助けをすることになる、ちょっと皮肉なコメディーなんですが、ナルシストたちのナルシストっぷりが弱くて残念。絶対王様の劇団員ならどんな感じだったんだろうと想像しつつ観ることに。美を主張する三嶋義信さんの演技は少し信じられました。最後の展開は好き。ちょっとスカっとしました。さすが笹木彰人さんの脚本だなぁと懐かしく、嬉しく思いました。
『めんどくさい人』は主役の秋澤弥里さんの悩殺バディー(裸じゃないですよ)が素敵すぎて、とりあえずガン見(笑)。若い女性のきれいな体が大好きだ!(←いつもコレだ。笑えないですよね、すみません)
自分の気持ちがわからなくてモヤモヤし、周囲に当たりまくる“めんどくさい”女と、そんな彼女になぜか惹かれて、いじめられながらも彼女に付きまとう“めんどくさい”人たちが、欲に振り回されてみっともないこと三昧になるストーリーには面白みを感じました。
両作品について感じたことですが、舞台をはける(出ていく)時と登場する時の、理由とタイミングがもっと緻密だといいなと思います。劇場が小さいので余計に気になったのかもしれません。
2つの作品は関連性がない(と言っていい)ものだったので、装置にはもうちょっと変化が欲しかったですね。
ここからネタバレします。物語はうろ覚えです。正確さは保障できません。⇒キャストデータ
■[A]『ゴージャスな雰囲気(男)』
脚本:笹木彰人(絶対王様) 脚色・演出:ハセガワアユム(MU)
[出演]松田:芝博文 ・・・ このビルに軟禁される男。/将軍:藤田慶輔 ・・・ インパクトが好きなナルシスト。/鳳:三嶋義信 ・・・ 美しさが好きなナルシスト。/浜口:浜野隆之・・・ 自分の発想が好きなナルシスト。/秋山:土屋士 ・・・ トップにいるのが好きなナルシスト。
大きなガラス張りの窓があるビルの5階で、たくさんの人たちに自分たちの神々しいまでのナルシスト振りを見てもらいたいと思っているナル軍団。ひょんなきっかけで正午に自殺しようとしている松田と出会い、彼を助けようと必死に時間稼ぎをする。徐々に心を許していく松田。
すると突然、自分たちの過失(室内で花火をしたせい)でビルの2~3階が火事に。5階だからもう逃げられない!・・・とあせる間もなく、テレビ局のヘリコプターが飛んできて、ビルの周囲は大勢のヤジ馬に囲まれた。ナル軍団は大喜びし、煙に包まれながらナルシスト・ダンスを踊りまくる。自殺志願者だった松田もその中に混じって踊り、嬉しそうに笑う、シュールなハッピーエンド。
■[A]『めんどくさい人(女)』
脚本・演出:ハセガワアユム(MU)
[出演]山下花恵(29):秋澤弥里 ・・・ 両親の遺産が入り込み金持ちになる。ハードボイルドな性格で虚無が漂う。/武藤敦史(27):芝博文 ・・・ 元舞台俳優の売春夫。浮世離れしている花恵に恋心を抱く。/今口勝(27):三嶋義信 ・・・ 武藤と同じ劇団の俳優で同じく売春夫。青い鳥基金の幹部にもなるが現在行方不明に。/菊池みく(27):足立紀子 ・・・ 天然の育ちのいい子、性善説で生きている。花恵に更生を強要する。/野木(33):浜野隆之 ・・・ デリボーイクラブ「グラシアス」の店長。武藤の復帰を願っている不器用な観劇マニア。/美奈子(26):岩崎恵 ・・・ 同じく「グラシアス」の経理担当。こちらは今口に肩入れしてる。
山梨県(だったかな)に山を7つ持っていた親が死に、その遺産を運用して現金をたんまり持っている若い女・花恵(秋澤弥里)。もともとは教師をしていたけれど、今は札束と一緒に一人暮らしの自宅にひきこもり中。日常的に男娼あっせん会社から娼夫を買っており、乱暴なSタイプの今口(三嶋義信)と従順なMタイプの武藤(芝博文)がお気に入り。だが全く満たされない。金持ちだけが集まる品川(の埠頭で開かれた?)のパーティーで見た、青い鳥が忘れられない。あの鳥が欲しい・・・。
自分に近寄ってくる人間は全員が金目当てなんじゃないかと思ってしまうから、つい冷たくしてしまう。でも自分に自信がないから何でも金で解決しようとする。そんなループを自分で延々と続ける、ホントにめんどくさい女なんですね、花恵は(笑)。そういうゆらゆらした女ほど、今口みたいな強引な男が好きなわけですが、今口は結局自分勝手な暴君で彼女のことを愛してはいなかった(花恵がそれに気づいた)ので、花恵はさえないけど献身的な武藤を選びます。
そして武藤に「金がなくても私のこと好き?」「私はつまらない女なの、そんな私の話をずっと聞いてくれる?」みたいなことを3回も尋ねるのが、まためんどくさい(苦笑)。そこで、奴隷のように花恵にかしずいていた武藤が「(そんなことするのは)めんどくさいよ」と言って笑い、花恵もやっと素直に笑うことができて、キュートなハッピーエンドを迎えます。2人がはじめて平等な立場の人間同士になれたんでしょうね。
セリフで説明される人物の背景を、役者さんの演技で表現しきれているように思えませんでした。青い羽根を使ったニセ慈善事業における今口の盛衰や、今口と武藤の劇団時代の三角関係(2人に好かれた女は自殺)など、短い上に盛りだくさんなストーリーだったので難しいのかもしれませんね。
1つの紙袋で2000万円入っていたということは、花恵が持っていた3袋で6000万円。ざっくり見つもって約1億円の札束が部屋の中にあったのかしら。そういう“金”があふれている実感も持ちづらかったです。
今口と寝ている花恵の部屋に武藤が入って来て、武藤が今口を殺そうとする・・・という夢を、花恵が見ます。夢か現実かがわからないように演出されていて、とても面白かったです。
『ゴージャス…』は武藤が昔出演していた舞台だったという設定は、2本立てである意味が増してとても良かったと思います。※武藤の出演作の記録映像がテレビで流れることでわかります。
花恵につきまとっていたのは男だけではありませんでした。教師なのに生徒と駆け落ちし、それが明るみになって裁判に負け、貯金を全部なくして実家の八百屋を手伝っているという、花恵の元同僚の女(足立紀子)もでした。迷いなくまっすぐ、明らかに間違った方向に突き進んでいるのが、愚かで可愛いい人物だと思いました。
第20回下北沢演劇祭参加
[出演]芝博文、秋澤弥里、足立紀子、浜野隆之(下井草演劇研究舎)、太田守信(エムキチビート)、三嶋義信、岩崎恵(ポップンマッシュルームチキン野郎)、奥野亮子、藤田慶輔(ナイスコンプレックス)、土屋士、二面由希(動物電気)、花戸祐介、浜松ユタカ(動物電気)、渡辺磨乃、川添美和(劇団海賊ハイジャック)、酒井和哉、さいとうせいき
『ゴージャスな雰囲気』脚本:笹木彰人(絶対王様) 脚色:ハセガワアユム(MU)/『めんどくさい人』脚本:ハセガワアユム(MU) 総合演出:ハセガワアユム(MU) 舞台監督:伊藤智史 舞台監督補佐:伊藤淳二 照明:河上賢一(La Sens) 照明操作:中泰雅 音響:岡田悠(Ona-Space) 宣伝美術:イシイマコト[united.] フライヤー・舞台写真撮影:石澤知絵子 演出助手:古屋敷悠 制作協力:林みく(Karle) 稽古場協力:にしすがも創造舎 共催協力:下北沢演劇祭実行委員会 企画/制作:MU
【発売日】2009/12/14■前売:2700円/当日:3000円(日時指定・自由席)■全公演フリーパスチケット 5000円(A・B・C全バージョン&レイトショー含み、何度でも観劇OK)
[A]『ゴージャスな雰囲気(男)/めんどくさい人(女)』/[B]『ゴージャスな雰囲気(女)/めんどくさい人(男)』/[C]『ゴージャスな雰囲気(男女MIX)/めんどくさい人(マダムMIX)』
http://www.mu-web.net/
http://production-blog.mu-web.net/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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