田村孝裕さん率いるONEOR8(ワンオアエイト)の2002年初演作(当時の会場は駅前劇場)の再演です。上演時間は約1時間45分。
日曜日のマチネはほぼ満席。カーテンコールは公演が開幕して初めてのダブルコールだったようです。私もずっと拍手していました。
劇場近隣の方々がご家族、お友だち、恋人と観られる、笑いあり涙ありの上質のストレート・プレイ。三鷹市の公共ホールにふさわしい現代演劇だと思います。2/14(日)まで。
⇒CoRich舞台芸術!『ゴールデンアワー』
≪あらすじ≫ 公式サイトより、(役者名)を追加。
とあるラーメン屋。主人は、ただ今入院中。店を任された息子(恩田隆一)。
近所の工場の従業員、常連さん達でにぎわう店内、そんな毎日の、何にも変わらない日々。
とそこに、幼い頃に生き別れになった、兄貴(ほっしゃん。)が現れる…。
久しぶりの再会。昔の記憶がよみがえる。「俺達どんな遊びしてたっけなぁ。」
≪ここまで≫
子供ってどんなに長い間離れていても、どんなにひどい仕打ちを受けても、どうしようもなく親を愛しているんですよね。ギリシア悲劇などの古典にも描かれていることだと思いますが、そういった人間の性(さが)から生まれる悲劇、喜劇が、とりたてて何の個性もなさそうな飲食店で、生まれていました。
関西風のベタなお笑いとドラマのバランスが独特で、田村さんならではのしつこさが良かったです(笑)。軽く笑っている中だからこそ、フっと訪れる残酷な裏切りや死の恐怖が冴えるのだと思います。
ここからネタバレします。これからご覧になる方は、絶対に読まないで下さいね!
両親が離婚したのは弟が8歳の頃。兄が何歳だったのかはわかりませんでしたが、おそらく小学生か中学生だったんじゃないかしら。弟は父の元に残り、兄は母とともに大阪に行きました。何十年ぶりかに兄弟が再会して、父親の入院する病院で兄は父に会い、弟も電話で母と会話することになります。それは4人が一緒に暮らしていた時代がよみがえった瞬間だったんですね。
最後の最後にラーメン屋の食堂が、家族で暮らしていたころの間取りへと大転換します。「ザ・ベストテン」が流れるテレビ、木彫りの熊、勉強机、壁に張った世界地図・・・。懐かしさと絶望が混じる、豊穣な時間、空間でした。誰もいない舞台を見つめて涙しました。
出演:ほっしゃん。 西山繭子 野本光一郎 和田ひろこ 恩田隆一 伊藤俊輔 宮沢大地 保倉大朔 高山のえみ 内山ちひろ 根岸季衣
脚本・演出:田村孝裕 舞台美術:香坂奈奈 照明:伊藤孝 音響:今西工 衣裳:福田千亜紀 演出助手:城野傭 舞台監督:村岡晋 舞台監督助手:藤林美樹 野村瞳 照明操作:下田めぐみ 音響操作:岸田直人 稽古場代役:數間優一 映像協力:荒船康廣 大道具:夢工房 小道具:高津映画装飾 運搬:帯瀬運送 宣伝美術:美香・桑山慧人(Pri-graphics) 制作助手:斉藤友紀子 制作:森川健太(三鷹市芸術文化振興財団)高田雅士 椎名浩子 プロデューサー:森元隆樹(三鷹市芸術文化振興財団) 企画製作:ONEOR8・(財)三鷹市芸術文化振興財団 主催:(財)三鷹市芸術文化振興財団
【休演日】8日(月)一般 前売3500円 当日3800円 高校生以下 前売・当日共に 1500円(当日学生証拝見) 三鷹市芸術文化会員 前売3150円 当日3400円
http://oneor8.net
http://mitaka.jpn.org/ticket/1002050/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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