羊屋白玉さんが振付・演出(出演も)される指輪ホテル。とうとう初めて拝見いたしました。上演時間は約1時間30分。
『CANDIES』は数年越しのプロジェクトなんですね。ダンスでありながら演劇的な要素も多く、視覚に訴える要素が強いパフォーマンスでした。あ、嗅覚も(笑)。
ひとことでまとめられるものではないと思いますが、私は“少女が成長するにつれてさまざまなものを喪失していく様”と受け取りました。
d-倉庫のロビーは売店もあるし、広くておしゃれでいい雰囲気ですよね。
⇒CoRich舞台芸術!『CANDIES - girlish hardcore』
何もない(と言えるであろう)真っ黒な四角い空間で、5人の“女の子”がステレオタイプな少女らしさを表象しつつ、徐々にその内側に隠された毒味をさらしていきます。できればもっとドキドキしたり、ヒリヒリしたりするのが私好みだったかも。
衣裳が可愛かったです。黒い空間に女の子らしい色使いのレースやフリルなどが映えます。丈の長い黒いスカートをうまく使って肌を露出させる振付が多く、その都度肌をさらす意味を考えました。スカートの丈の長さが絶妙なんですよね~。
ダンサーらしい体つき(および動き)の人が少なかったように思います。“普通の女の子”を見せるためなのかしら。
女性の声のテキスト(録音)がスピーカーから流れましたが、できれば生の声で聴きたかったですね。声と演技との質感の差が気になりました。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
出演者の体に書かれた凡字(梵字)、蛙、パンダ、鶏、豚、兎の面、“虫が巣くって死んだ妹”、バスケットボールのパスの訓練・・・。
バイオリンを弾く少女(北村あらたさん?)が「狼から生まれた、だから私は女の子」と言った時、すごくシュール!!と思って笑いがこみあげました(でも私以外には笑い声は聞こえず・・・)。
蛙のおでこにお灸をすえるのも可笑しかったな~。もぐさに火をつけるので匂いも充満。アイスクリームのコーンを角にして、それを食べちゃうのも良かった。
温めたホットプレートの上にまたがり、白いトロっとした液体を落として(生みおとして/排泄して)、焼けたそれを食べる場面が、私にとっては一番面白かったですね。「排泄したものを再び自分の中に戻す」「生んだ子供を食べる」などと想像。
若い女、幼女、年老いた女の3人の声がスピーカーから聴こえて、その言葉の意味が頭に入ってくるのが、私にとっては情報過多でした。出演者の体、踊り、声、衣裳などの表象だけでも十分すぎるほど雄弁だったので。
背中は大胆に見せるけど乳房は絶対に見せない、という振付はもったいない気がしました。でも隠すから“少女”なのかな。
最後はシンプルな振付だけど長い、長い、ダンス。ピンク色のパジャマ風な衣裳を徐々に脱いで、肌にぴったりとしたレオタードのような衣裳だけになります。ずっとタバコを吸い続けるのは観客としては少々つらかったですが、静かに熱くなっていく空間がスリリングでした。
出演者の中では兎の面をかぶっていた村田朋未さんがとてもかっこ良かったです。村田さんだけが前回も出演されているとのこと(トークより)。
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
出演:羊屋白玉 サカグチさん(飛び入り。演劇・ダンスの評論家)
≪東京、札幌、福岡≫ CANDIES - girlish hardcore by Shirotama Hitsujiya 指輪ホテル新春ツアー
出演:北村あらた、酒井由貴、角田真奈美、原田有貴、村田朋未
振付・演出:羊屋白玉 美術:坂田有希子 衣装:飯島まゆみ 音楽:樅山智子、舩橋陽 音響:木下真紀 照明:アイカワマサアキ 舞台監督:糸山義則 企画制作:指輪ホテル NPO法人アートマネージメントセンター福岡 糸山裕子 壁村真理 王丸あすか 主催:指輪ホテル 共催:NPO法人アートマネージメントセンター福財団法人 NPO法人コンカリーニョ イムズ 助成:平成21年度文化芸術振興費補助金(芸術創造活動特別推進事業) 協力:財団法人セゾン文化財団、d倉庫、1926スタジオ
【発売日】2010/01/09 前売 3,000円 / 当日 3,500円
http://www.yubiwahotel.com/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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