俳優集団ハイリンドが第9回公演にして井上ひさし戯曲に挑戦。上演時間は約2時間15分(休憩なし)。赤坂RED/THEATERという小空間で、6人の役者さんが真摯に、思いっきり熱を込めて明治を生きた日本の庶民を演じます。
カーテンコールで6人が並んだ時、「あぁこんなに小人数だったのか、もっともっと沢山の人物がいたように思っていたのに」と目が覚めたような気持ちになりました。この驚きが、いいお芝居を見た時の私のバロメーターです。
⇒CoRich舞台芸術!『泣き虫なまいき石川啄木』
≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
啄木が残した15冊の日記。
「焼き捨てろ」と遺言された妻が、今読みはじめる。
啄木の死後、妻はそこに何をみたか。
東京本郷の床屋の二階を舞台に、
啄木、そして彼の家族と友人とが入り乱れ
織りなされるは
借金漬け、質屋通い、嫁姑のいざこざ。
「実人生の白兵戦」を身をもって体感する啄木。
事実より真実を求めた井上ひさし氏の手により、
啄木の最後の三年間が紐とかれる。
ハイリンドは
ただじっと手をみる。
≪ここまで≫
井上ひさし作品はこまつ座で木村光一さん、栗山民也さん、鵜山仁さんらの演出で拝見してきました。今回、小劇場劇団の自主公演で拝見して、井上戯曲を上演するのは難しいんだろうなと思いました。説明ゼリフが多いし登場人物はとても饒舌です。史実にもとづいた作品だから調査も大変でしょうが、フィクション性も高いのでただ真面目にやればいいわけではありません。笑いを生む会話が隙あらばと散りばめられていて、瞬時に気持ちを切り替えて濃いドラマを成立させる必要があります。
そんなハードルの高い作品に挑戦して、見事に目指した世界を成立させていたのではないかと思います。美術、衣裳、音響も上質さにこだわった、3500円の6人芝居。満足させていただきました。
石川啄木役の多根周作さんの演技の密度の濃さ、啄木の妻を演じた枝元萌さんの役柄に入り込んだような感情の激しさが、特に印象に残りました。
ここからネタバレします。
啄木の妻が過去を回想する形で幕が開きます。装置が大きく動いて、啄木の家族が暮らしていた2階のたたみの部屋が出来あがったのが素晴らしかったです。レッドシアターでここまで見せてくれるんだなと嬉しくなりました。
貧しかった石川一家。どんなにがんばっても暮らしは楽にならない、それどころか借金は増えるばかり。それは自分たちのせいじゃなくて、社会のシステムのせいではないかと気づくところに、今の日本と通じるものを感じ、切なくなりました。
【出演】石川一(石川啄木):多根周作 石川節子:枝元萌 石川一禎/カルバン博士:外波山文明(椿組) 石川カツ/片山カノ:はざまみゆき 石川光子/マッキントッシュ:温井摩耶(演劇集団キャラメルボックス) 金田一京助/金本:伊原農 石川京子(声):野々花
[作]井上ひさし [演出]水下きよし(花組芝居) [舞台監督]井関景太(るうと工房) [照明]石島奈津子(東京舞台照明) [照明操作]原雅(東京舞台照明) [音響]高橋秀雄{有限会社アラベスク} [音響操作]美月さやこ [舞台美術]爽井登子 [衣裳]阿部美千代(MIHYプロデュース) [方言指導]詩森ろば(風琴工房) [宣伝美術1西山昭彦 [スチール]夏生かれん [撮影ヘアメイク]田沢麻利子 [Webデザイン]藪地健司・藪地夏子 [ハイ友]杉森佑樹・鈴木貴雄 [小道具協力]高津映画装飾(株) 京阪商会 藤浪小道具(株) 椿組 [企画・製作]ハイリンド゙ [制作]石川はるか [制作協力]山本亜希 [協賛]イースターエッグ
【発売日】2010/02/14 前売/当日3500円 賛助会全ステージ2500円 ① 高校生以下割2500円 ②平日マチネ割3000円 (29日(月)/31日(水)14時の回のみ) ※①②は劇団扱いのみ
http://www.hylind.net/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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