英国の劇作家ジョー・ペンホールさんの戯曲『BLUE/ORANGE』は、2000年にロンドンのナショナルシアターで初演され、ローレンス・オリヴィエ賞、イブニング・スタンダード賞、Critics' Circle Theatre賞を受賞したそうです(パンフレットより)。私はこれまでに2作品拝見しています(過去レビュー⇒1、2)。
中嶋しゅうさん、チョウ・ソンハさん、千葉哲也さんの三人芝居というだけでも必見ですよね。ワハハと笑いながらも不安にさせられる、スリリングなお芝居でした。お三方ともすごい熱演で、千葉さんは演出もされています。上演時間は約2時間40分(途中休憩10分を含む)。
※八幡山のワーサルシアターにはじめて伺いました。駅を出たところにポスターを持った方がいて、案内してくれたおかげでたどり着けました。ありがとうございました!
⇒CINRA.NET「ロンドンの精神病院で24時間の心理戦『BLUE/ORANGE』が待望の日本公演」
⇒CoRich舞台芸術!『BLUE/ORANGE』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
ロンドンにあるNHS(英国国民健康保険)精神病院での、ある二十四時間。
一人の精神病患者と二人の医師が織り成す会話劇。彼らの眼に見えてくるものとは・・・
人種、狂気とダーウィンの権力闘争の扇動的な物語。
≪ここまで≫
客席が2方向から舞台を挟みます。病院らしい無機的な空間。ウォーターサーバーの水に明かりが入るのがいいですね。
研修医ブルース(千葉哲也)はクリス(チョウ・ソンハ)を統合失調症だと考え、彼の入院期間を延ばしたいと提案しますが、上司のロバート医師(中嶋しゅう)はベッドが空いていないなどの理由から、ルールどおり強制的に退院させようとします。
患者が黒人で医師は2人とも白人であることから、イギリスの人種差別問題が絡んできて、とても面白かったです。こういう戯曲がイギリスの国立の劇場で初演されるんですね。
言葉は解釈によって180度違う意味になり得るんですよね。人間は他人を知りたがるけど、実際のところは自分自身のことも全然わからないんだよなぁと、くるくると表情を変える3人を見つめながら考えました。
ここからネタバレします。
クリスが本当に精神を病んでいるのかがわからなくなり、むしろ直情的で危険なのはブルースの方かもと思えてきます。言葉巧みにブルースを丸めこむロバートもまた、医者の本分を忘れ思考停止病にかかっているようにも。
ブルースが知らない内にクリスがすっかりロバートにほだされて、ブルースにとって不利な発言をするようになります。友人だ、仲間だと思っていた相手が、一晩の内に豹変するのって本当に恐ろしいですよね。でも現実にはよくあると思います。この方たちのことが浮かんだりしました(私にとってはタイムリーな感じで・・・)。
舞台の上下にある劇場のドアをうまく使った演出でした。私は劇場入り口に近い方の客席に座ったのですが、その席から見て上手(右)側のドアは透明のガラス戸だったので、暗い壁に囲まれた診療室に時おり抜けができるのが良かったです。上手(左)側のドアを空けた時に音楽が鳴るのも効果的でした。
出演:中嶋しゅう チョウ・ソンハ 千葉哲也
脚本:ジョー・ペンホール(Joe Penhall) 演出:千葉哲也 企画:中嶋しゅう 翻訳:鴇澤麻由子 舞台監督:村田明 照明:吉川ひろ子 音響:藤平美保子 美術:中村公一 衣裳:ゴウダアツコ ヘアメイク協力:鎌田直樹 演出助手:野崎美子 舞台製作:クリエイティブ・アート・スィンク 加賀谷吉之輔 音響オペレーター:福澤美穂 照明オペレーター:鶴田美鈴 宣伝写真:引地信彦 宣伝美術:冨田中理(Selfimage Produkts) 制作:横内里穂 角前敦子 制作協力:RIDEOUT 版権コーディネーター:マーチン R P ネイラー 製作:シーエイティプロデュース プロデューサー:江□剛史(シーエイティプロデュース) 田中浩補(RIDEOUT)
【発売日】2010/02/14 前売:4500円 当日:4800円 ※全席自由、全て税込み金額になります。
http://www.stagegate.jp/performance/2007/blueorange/index.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。