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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2010年05月12日

シス・カンパニー『2人の夫とわたしの事情』04/17-05/16シアターコクーン

 英国の作家W・サマセット・モームが1919年に書いた戯曲を、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんが演出。主演は松たか子さんです。お2人は初顔合わせなんですね。上演時間は約2時間40分(途中休憩2回を含む)。

 装置も衣裳も豪華なドタバタ喜劇でした。90年も前の海外の王道ラブコメを、小劇場出身のケラさんが演出されているのが意外というか、不思議な感じがしました。シアターコクーンでの上演ですが、新橋演舞場やル・テアトル銀座にいるような心地にも。

 ⇒CoRich舞台芸術!『2人の夫とわたしの事情

 ≪作品紹介≫ 公式サイトより一部抜粋。
 原題を「HOME & BEAUTY(故国と美女)」というこの戯曲の設定は、まだまだヴィクトリア朝時代の厳粛な価値感が色濃い20世紀初頭の英国のある上流家庭。 第一次世界大戦終結後、愛する夫を戦争で失い、戦争未亡人となったヒロインは、夫の親友の求愛を受け、めでたく再婚を果たします。 しかし、あろうことか、そこに、戦死したはずの"前" 夫が、ひょっこり帰還! 苦労して帰国したと思ったら、自分は死んだことになっていて、しかも親友が自分の後釜に!? "2人の夫"を前に呆然とする美しきヒロイン。 まさに、戦争に翻弄された "けなげな妻"と "2人の夫たち" の涙なくしては語れない大悲劇・・・・・・なのかと思いきや、英国紳士たるべく自己犠牲の精神をフルに発揮して、「自分こそが身を引くべきだ」と、なぜか積極的に主張し合う"2人の夫たち"。そして、"けなげ美女"であるはずのヒロインも、実は、天真爛漫というか天衣無縫というか、結局のところは、「世界は自分のために回っている」と心の底から信じて疑わないタイプ。当然、愛情なんて言葉だけでは計れない様々な欲望やキワドイ思惑が絡まり合っている模様で、事態は組んず解ぐれつ、予想外の展開へ! 果たして、この「重婚狂騒曲」のフィナーレで、真の幸福をつかむのはどちらのカップルなのか・・・?!
 ≪ここまで≫

 松さんがドレスを着て豪華な装置の中にいる図から、新橋演舞場での『嵐が丘』(2001年1月・岩松了演出)を思い出しました。ケラさんが新橋演舞場でスタンダードな喜劇を演出する日も近いのでしょうか。きっと成功する気がします(←勝手)。※ケラさんはすでに明治座で演出されていました!⇒2003年3月公演『さくら

 笑いはベタもナンセンスも自在。ふと恐怖がよぎる場面も照明、音響で盛り上げてくださり、贅沢なマチネ鑑賞になりました。
 松さんと段田安則さん、渡部徹さんをはじめ芸達者な役者さんたちの演技を観て、ケラさんがご自身のブログで「うまい役者」について書かれていることにも納得。ただ、うまい役者のうまい演技が続くのって、私にはちょっと退屈だったりも。

 演劇ジャーナリストの徳永京子さんのツイッターでのご発言から(⇒)、新劇の状況(新劇を上演する劇団の現在)についても少し考えました。新劇って一体何なのかと問われてもはっきりとは答えられないんですが(すみません)、戦中から今も続いている老舗劇団が上演するストレート・プレイがそれに当たるんじゃないでしょうか。最近はあまりそういう作品が観られていないので私には比べようがないのですが、ケラさんの他にも小劇場界から、そういった作品を演出できる若手演劇人がぐんぐん育ってきていると思います。

 ここからネタバレします。

 休憩が終わると装置が完全に変わっていて感激。2幕の青い壁の客間にあった、妙ちきりんな人型のオブジェさいこー。松さん、皆川猿時さんがお立ち台(山車?)に乗ってドアから出てくるのも可笑しかった。

 松さんの母親役の新橋耐子さんはやっぱり凄かったです。プロだなーと思います。いるだけでほほえましいし、毒々しい(笑)。
 大森博史さんの代役で弁護士役を演じられた猪岐英人さん。ナイロン100℃公演でもよく拝見してますが、機械仕掛けの人形のような動き(演技)がとても面白かったです。

"Home and beauty" by W. Somerset Maugham
出演:松たか子 段田安則 渡部徹 猪岐英人 皆川猿時 水野あや 池谷のぶえ 西尾まり 皆戸麻衣 新橋耐子 ※大森博史が体調不良のため降板し、代役は猪岐英人。
原作:ウィリアム・サマセット・モーム 演出・上演台本:ケラリーノ・サンドロヴィッチ 翻訳:徐賀世子 美術:二村周作 照明:小川幾雄 衣裳:前田文子 音響:水越佳一 ヘアメイクデザイン:勇見勝彦 演出助手:西祐子 舞台監督:瀧原寿子 プロデューサー:北村明子 提携:Bunkamura 企画・製作:シス・カンパニ― チラシ画:金子國義
【休演日】4/19,26 5/3,10【発売日】2010/03/07 S席¥9,000/A席¥7,000/コクーンシート¥5,000
http://www.siscompany.com/03produce/27futari/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年05月12日 09:45 | TrackBack (0)