『寝台特急“君のいるところ”号』は2000年に初演され、今回で4度目の上演となる中野成樹+フランケンズ(通称:ナカフラ)の代表作のようです。私は初見。
今月のメルマガでもご紹介しましたWi!Wi!Wilder2010参加作品で、米国の劇作家ソーントン・ワイルダーの『寝台特急ハヤワサ号』を、中野さんが誤意訳・演出されます。上演時間は約1時間20分。
⇒柴幸男さんのブログに詳しい感想あり
⇒CoRich舞台芸術!『寝台特急“君のいるところ”号』
≪あらすじ≫
ニューヨークからシカゴに向かう寝台列車の中。そして、外の世界。
≪ここまで≫
舞台奥には線路を示すのであろう格子が貼りられた白いパネルが3枚。小道具は折りたためる茶色いイスが数脚。照明でパーテーションして場面転換をします。いつもながら粋で、ほんわかと優しいムード。音楽の鳴るタイミングも音量にもこだわりを感じます。
幼稚園児のペープサートを懐かしく、嬉しく思い出しました。お遊戯やおままごとなど、私にとってとても身近で大好きだったものに備わっている演劇の特性が、そのまま演出に生かされていて、なぜだか人生そのものを暖かく肯定されたような心地になりました。また、これがアメリカ戯曲だということで、国境を超える普遍性も感じます。
観客に語りかけるセリフもあり、劇中劇の構造にもよくなりますが、演技(作りもの、見世物)であることを徹底しているところが潔いと思いました。周到に用意された展開に笑ったり、泣いたり、前のめりに入り込んで楽しませていただきました。
役者さんは皆さん清潔感があってストイックで、とても好感の持てる雰囲気でした。いつもながら衣裳もおしゃれだし。中でも医者役の洪雄大さんが面白かったですね~。
ここからネタバレします。
線路が床ではなく壁になっているのがいいなと思ったら、やがてそれが車窓になったり、取り外されて天国への梯子になったり。
おっちょこちょいのボーイ(福田毅)が1ヵ月後には仕事を辞めることが予言されたり(乗客と結婚するから)、心臓の発作で倒れた妻(小泉真希)が、車中であっけなく死んでしまったり。かと思うと、死んだ妻が天使(野島真理)と相談する場面は無言のまま長い時間が取られていたり(観客には声が聴こえません)。舞台で進む時間がぎゅっと縮まったり引き延ばされたりします。
やはり妻(若い女性)が亡くなるところでは『わが町』を思いだして涙ぐんじゃいますね。「さようなら」とか言われちゃうと、ね!
もともとの戯曲は読んだことがないので詳細はわかりませんが、明らかに役者さんのプライベートなことが話される場面がありました(医者役の洪雄大さんがボーイ役の福田毅さんを責めるところとか)。ショー・マスト・ゴー・オン的な内容ですが、それもきちんと“脚本どおりの作りもの”であるように演じているのが良かったです。劇世界がとても大事にされていると思いました。
狂女役の斎藤淳子さんを見て「月ちゃんだ!」と思ってしまう私はプチ『わが星』中毒♪
出演:フランケンズ(村上聡一、福田毅、洪雄大、竹田英司、田中佑弥、野島真理、石橋志保、斎藤淳子) ゲスト(小泉真希)
作: ソーントン・ワイルダー『寝台特急ハヤワサ号』より 誤意訳・演出:中野成樹 舞台監督:井関景太(有限会社るうと工房) 照明:高橋英哉 音楽:竹下亮 美術:細川浩伸(急な坂アトリ エ) 制作:加藤弓奈 提携:(有)アゴラ企画・こま ばアゴラ劇場 主催:中野成樹+フランケンズ
料金:全席自由前売り2800円、当日3000円、高校生 以下1800円(前売り・当日とも) チケット発売:4月20日(火)
http://www.frankens.net/