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2010年06月13日

【レポート】芸団協2010「ラウンドテーブル『劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!』【1】」04/30-05/01芸能花伝舎1-1

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劇場法(仮称)RT【1】

 『劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!』【1】は大和滋さんによる講義その1です。中継動画が全編こちらで見られますので、このエントリーでは私が特に重要だと思ったことをまとめました。
 ⇒【劇場法(仮称)RT全体のまとめページ

 先日の世田谷パブリックッシアターでのレクチャーでも大和さんのお話を伺いましたが、さらに詳細に渡る内容でした。⇒PowerPointのプレゼンテーション資料(PDF)

 ■美術館は美術館、博物館は博物館、でも劇場・音楽堂は「公立文化施設」
 ■なぜ法律を制定するのか?公立文化施設とは?
 ■芸団協の取り組みについて

■美術館は美術館、博物館は博物館、でも劇場・音楽堂は「公立文化施設」

 地方自治法上で公の施設とされるものは公園や駐車場なども含め、全国に30万施設ある。その中でいわゆる実演芸術の上演に適した公立文化施設は約2000施設あると言われる。30万の「公の施設」すべてを一律の法律で扱っていいのか?

 実演芸術をやる施設はなぜか広義に「公立文化施設」と名乗ってきている。先述の2000施設は「実演芸術を上演するのにふさわしい設備を有する施設である」と定義した方がいい。

 公立文化施設のサービス提供には2つの考え方がある。例えば駐車場はスペースを使用してもらうこと自体がサービスの提供だが、上演施設の場合、同じように舞台を貸すというサービスのほかに、上演しているもの(例:演劇やコンサート)がサービスである。劇場・音楽堂は、芸術をサービスとして提供することを専門とする機関であると定義できる。特別法を作ってその違いを認めてはどうかというのが劇場法の提案だ。

 実演芸術を上演できる公立文化施設は、各地の地域住民に大きな役割を果たしている。それがなくなったら鑑賞機会がなくなってしまう地域もある。
 実演芸術の専門的な機能に特化した施設がきちんと存在していないと、今後の日本全国レベルで見たときの実演芸術の振興という観点からは、非常に限界がある。「公立文化施設」ではなく「劇場・音楽堂」として国が関与(支援)する、実演芸術を重点的に振興する拠点を作った方がいいだろう。
 それらの特化した拠点について、法律に専門的な部分を作っていく必要性があるのではないか。例えば図書館には図書館法、美術館には美術館法があるように。


■なぜ法律を制定するのか?公立文化施設とは?

 原則として、公立文化施設は市民(県民)のための施設。例えば市民が使うから“市民会館”という名称になっている。「正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない」「公の施設を利用することについて、不当な差別的な扱いをしてはならない」等の規定がある。つまり現状では、ある特定の団体(劇団やオーケストラなど)に長期利用をさせることが、法律違反になることがある。

 しかし、ホールを市民の発表会などで使う以外に、市民が観客になることも「芸術文化への参加機会」である。席に座って芸術鑑賞をすることは、ホールの利用である。
 「施設を貸すこと(貸し館)」だけを事業目的としている館が多いが、その中から「芸術の鑑賞機会を提供する(作品を作って上演する/作品を買い取って上演する)」ことを主目的にする館を認定する。国民への貸し館を妨げるものではない。それを法律で定める。


■芸団協の取り組みについて

 昨年3月に「社会の活力と創造的な発展をつくりだす劇場法(仮称)の提起」を発表(⇒PDFあり)。11月にはシンポジウム「文化芸術による人づくり、社会づくり、国づくり」(⇒議事録PDFあり)を開催し、劇場法を提議してきた。そして今年4月16日に「実演芸術の将来ビジョン2010(第1次案)」(⇒PDFあり)を発表した。

 昨年末の事業仕分けでは「文化予算は大幅縮減」という結論が出た。それを受けた内閣の予算編成では、文化庁予算はほぼ横ばい、芸術団体への支援は3年後に2分の1にするという結果となった(⇒ご参考「文化芸術について自分なりに考えてみました」)。芸団協としては、文化予算を増やしていく中での、劇場法の制定を目指している。

 事業仕分けの議論の中身がそうだったように、基本的に文化芸術の公共性についての議論が抜け落ちている。10年前にできた文化芸術振興基本法の理念を問い直し、新たな提起をしていきたいと考えている。

 実演芸術のこれからのあり方を総合的に提起するために、今年になって検討開始した内容をまとめたのが「実演芸術の将来ビジョン2010」(以下、「ビジョン2010」)。皆さんの意見を集めて5月末に芸団協としての正式な機関決定をして、社会に提起していきたい。※だからまだ決定したものではない。


 ★芸団協は実演芸術の将来ビジョンの実現に向けて、文化予算増を願うキャンペーンを開始します。7月1日に専用WEBサイトがオープン予定です。 ※予定日を6/25から変更(2010/06/17)


芸団協ラウンドテーブル「劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!」
主催:社団法人日本芸能実演家団体協議会
http://www.geidankyo.or.jp/12kaden/04pro/manage/gekijo_rt100430html.html


※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年06月13日 23:19 | TrackBack (0)