ドイツの劇作家マリウス・フォン・マイエンブルクさんの4人芝居を河原雅彦さんが演出されます。上演時間は約1時間20分。
面白かったーっ!!美術、照明、衣装、音楽が洗練されていて、気軽に娯楽作品として楽しめて、戯曲のテーマもしっかり味わえました。前に観た時は全然わかってなかったんだな~と反省。
2回のカーテンコールが終わって黒い幕が下りたのですが、拍手が鳴り止まず3回目のカーテンコールがありました。
東京公演は本日で終了ですが、大阪公演が7/15(木)にあります!
⇒徳永京子さんのツイート(1、2、3)
⇒CoRich舞台芸術!『醜男』
あらすじなどは以前のレビューでどうぞ。
開場時間は黒い幕が下りていますので、舞台は全く見えません。ここから装置などについて書きますのでネタバレしますが、読んでから観に行っても大丈夫だと思います。
世田谷パブリックシアターという大きな劇場で、出演者はたったの4人ですが、全く問題ありませんでした。舞台空間を埋めつくすのではなく、わざと余らせてバランスを取っている美術および演出がかっこいいです。
装置と照明が美しいです。白くて四角い巨大なパネルが舞台奥にそそり立っているのですが(でも天井いっぱいじゃなく)、正方形の四角いブロックがわざと歪んで積み上げられたような表面になっています。そこに緑や青、ピンクなどの鮮やかな照明が当たったり、文字映像が投影されたり。
役者さんはその壁の正面の、これまた四角く区切られたステージで主に演技をされます。ステージ周囲はぐるりと一段上がっており、その段差のところに仕込まれた照明が床を照らします。床も白いので間接照明のような効果が大きいですね。ステンレス製(のような銀色)のテーブルが2つあり、つなげてベッドになったりします。テーブルにも照明(おそらくLEDライト?)が入っていて、下から表面を照らすのがきれい。
壁と床を照明で区分けするように照らし、瞬時に場面転換します。“絶世の醜男”レッテを演じる山内圭哉さん以外の役者さんは数役を演じ、転換した瞬間に違う役に変化します。演劇ならではのスピード感のある演出で、小気味よく物語は進みます。
「翻訳戯曲ならではのぎこちないセリフ運び」にならず、かといって現代の日本語に無理やり落とし込んでいるわけでもなく、いい間(ま)を取ってしっかり笑いを生んで、物語に興味が持てる話し方をされていました。戯曲の意図をくみ取って、役柄のキャラクターを決めて行かれたからではないかと勝手に想像。
顔か~・・・自分も外見は気になっちゃいますね・・・特に脚とか。だって内山里名さんのあの美脚を見せつけられたら、ねぇ!(笑)
ここからネタバレします。
自分とそっくりの美男が増加してお払い箱になったレッテは、とうとう高いビルからの飛び降り自殺を図ることに。レッテは鏡に映る“僕”と語り始め、“僕”が僕を乗っとり、苦しめているのだと口論になります。すべて自問自答なんですよね。実際のところ山内さんが1人で2人分のせりふを言い続けます。
でもレッテを愛人にしていた富豪の老婦人(内山理名)と、同じくレッテを愛していた老婦人の息子(斎藤工)が、レッテを救うことになります。なんと息子もレッテの顔に整形しており、「“僕”は僕が大好きだ!」と全肯定。そして3人はともにベッドへ…(笑)。
顔の美醜で価値観が簡単に揺れ動き、自分の顔を捨てて手に入れた美顔に執着し、やがて顔とともに自我も失ったことに気づいて絶望するも、自分と同じ顔をした他人に優しくされたら無根拠に立ち直っちゃう。なんて節操のない!(笑) 何か(誰か)に依存していないと自分を確かめられないのは情けないな~と思います。でも“自分だけの顔”を失ったなら、根なし草のようになっても無理はないかもしれません。
整形手術の場面では「シェフラーは(顔の骨を)削る」といった文字が壁に投影されます。レッテが鏡に映った“僕”と自問自答する終盤の場面でも、並行して老婦人の息子の手術が行われており、なんと壁の文字が反転しました。“僕”の視点があらわされたのだと思います。字幕でも演出するのが凄い!
医師(入江雅人)もとうとう自分の顔を整形するに至る、という顛末でした。天井から吊り下げられたのであろう(?)入江さんを壁の上にチラっと見せて、最後の最後に劇場上部の余白を使うという気の利いた演出でした。
≪東京、大阪≫
出演:山内圭哉、内山理名、斎藤工、入江雅人
脚本:マリウス・フォン・マイエンブルク 演出:河原雅彦 翻訳:内藤洋子 美術:中根聡子 照明:佐藤啓 音響:大木裕介 衣裳:四方修平 ヘアメイク:西川直子 演出助手:松倉良子 舞台監督:田中直明 主催: 財団法人せたがや文化財団 企画制作:世田谷パブリックシアター
【発売日】2010/05/22 S席6,300円/A席 4,200円 高校生以下 各一般料金の半額(劇場チケットセンターのみ取扱い、年齢確認できるものを要提示) U24 各一般料金の半額(劇場チケットセンターにて要事前登録、登録時年齢確認できるもの要提示、オンラインのみ取扱い、枚数限定) 友の会会員割引 S席5,800円 世田谷区民割引 S席6,000円
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2010/07/post_189.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。