めぐろパーシモンホール・パレットプログラム演劇コースを毎年拝見しています(過去レビュー⇒1、2、3)。今年の作・演出は工藤千夏さん(青年団演出部・うさぎ庵・渡辺源四郎商店)。
『真夜中の太陽』はラフカット2009で初演され好評だったので、2010年5月に谷山浩子さんの公演でも再演された短編です。私は再演を拝見して傑作だと思っておりましたので、中高生がこの演目に取り組むと聞いて、嬉しくて小躍りしてしまいました。上演時間は約45分。
こちらのブログによると、めぐろパーシモンホール・パレットプログラム演劇コースは来年も継続決定!
期待を上回る仕上がりでした!ティーンの男女の歌声にダダ泣き・・・。終わってもしばらく拍手が鳴り止まなかったです。
男の子が6人参加していたので、男子学生役が書き足された“めぐろパーシモン・バージョン”になっていました。外国人役も日本人役に書き換えられていましたので、ますます高校演劇で上演しやすくなったのではないでしょうか。
終演後に初演版出演メンバー数名と中高生が『真夜中の太陽』を一緒に歌ってくれました(↓写真)。指揮は宣教師マービン先生役だったジェイソン・ハンコックさん。※写真撮影可でした。
ここからネタバレします。
男の子が明治神宮外苑での出陣学徒壮行会(1943年)の答辞を朗読します。体も声も気持ちも、当時とは全く違います。その差を目で見て、耳で聴いて知ることの衝撃たるや。
空襲警報が鳴り、先生と老婆を除く全員が逃げ惑う場面で、「死に物狂いで防空壕に走る」という演技になっていませんでした。“空から落ちてくる爆弾に焼き殺されるかもしれない恐怖”がないんですよね。私は『真夜中の太陽』でもっとも大切な場面の1つだと思っていたので、ちょっとがっかり。
でも子供たちがどう感じているか(演じているか)にかかわらず、抽象世界は鮮やかに、意味はどっしりと、確かな重みを持ってストレートに伝わってきました。戯曲と演出がセットになって、揺るがない強度があるのだと思います。
終演後のトークで工藤さんがおっしゃっていましたが、稽古時間は1日4時間で計4日間という短期間だったそうです。それでここまで作り上げられたことに驚嘆します。歌もちゃんと三部合唱になっていて凄い!
「戦争について議論するような時間はなかった」ともおっしゃっていて、それは残念です。青森の中学生版『河童』を観たせいもあり、私が過度に期待しすぎなのかもしれませんが。
発表会があるワークショップなので、作品を完成させることが優先されるのは当然ですが、ワークショップで『真夜中の太陽』に取り組む意味としては、やはり子供たちが戦争について考えることなのではないかと私は思います。次回があるならば、日数を増やして(←ココ重要!)、一緒に考えたり、意見交換したりする時間を作っていただけたらと思います。
「真夜中の太陽 めぐろパーシモン・バージョン」
出演(公募による中学生・高校生21名):菊地尚輝 瀬口聖徒(カオリの孫) 南舘優雄斗 宮本周平 新美航平 長田咲紀 井上春香 花岡海 丸山由生奈 永井智美 宮澤茉理絵 木目田千春 市川萌夏 須川萌(カオリの孫) 池田佳央理(カオリ) 大西千尋 関口佳 佐藤麻央 小林千尋 木﨑千温(キザキ先生/カオリの息子の嫁) 矢島亮(ヤジマ先生) ピアノ伴奏:加藤充華
原案・音楽:谷山浩子 作・演出・指導:工藤千夏 [主催]財団法人目黒区芸術文化振興財団 [協力]有限会社アゴラ企画 [演出・指導]工藤千夏 [アシスタント]加藤充華 [音響]藤平美保子(T.E.S) [区民ボランティア]朝吹弓子/山本郁子/松本照代/福島豊/板本円/渡辺祐子
14:00(開場)/14:30(開演) 全自由席:300円 ※車椅子席:同料金
http://www.persimmon.or.jp/event/913.php
http://www.persimmon.or.jp/hosting-performance/914.php
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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