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2010年08月13日

【写真レポート】東京芸術劇場「野田秀樹芸術監督就任1周年記者懇談会」07/08東京芸術劇場カフェ・コンチェルト①

 野田秀樹さんが東京芸術劇場の芸術監督に就任して1年が経ちました(⇒就任記者発表)。野田芸術監督の1年間を振り返ると同時に、次のラインアップを発表する記者懇談会に出席させていただきました。

 劇場広報の方の進行で、野田さんが率直に今感じていること、考えていることを話してくださいました。なんと質疑応答の時間が1時間以上(!)設けられており、ざっくばらんでとても楽しい会でした。
 野田さんは記者とお互いの顔が見える対話をしていこうとお考えのようで、記者発表のスタイルにも独自性があらわれていますね。

 野田さんがおっしゃった言葉をなるべくそのままに、意味を歪めないように心がけてまとめてみました。長いレポートになりましたので、3エントリーに分けて掲載いたします。⇒レポート② ⇒レポート③

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■芸術監督の一年間を振り返って

 東京芸術劇場という劇場で芸術監督をすることには、2つの意味があるとわかってきました。1つは芸術監督は劇場という“場所”を本拠地にして企画をするということ。1年経ってずいぶん池袋にも愛着が出てきました。
 一番力を入れているのはラインナップです。劇場はハコ(建物)がどれだけ立派でも、はじまりはやはり中身。中で何をやっているのかが重要です。中身があってから、その次に劇場というハコの環境、そして劇場と街との連携、さらに東京および日本の文化の発信と広がっていくのでしょう。でもまずは劇場の文化として何を発表するかです。
 急に(芸術監督を)始めたわりには、周囲の人たちの助けもあって、自分としてはいいラインナップになったのではないかと思います。

 2つ目は、東京芸術劇場が公共の劇場であるということ。引き受けた時はあまり意識をしていなかったんですが、実際にやっていくと時々戸惑いがある。我々の“ものを作る”プロセスは、公の収支という1年のタームではやりづらいことがあるんです。それをどう改善するかが課題ですね。公共劇場が悪いというわけじゃなくて、公の場所でものを作るとはどういうことなのかを考えていけなければいけない。

 芸術監督というと日本では「自分のやりたいことをやる」「色(個性)を出す」ものだとされていて、実際そうなのですが、東京芸術劇場が公共劇場だというのもあってか、「他人がやりたいことも考える」ようになりました。自分がやりたいことをやる時は、自分が人様を巻き込むだけの形なのですが、他人がやりたいことを考えると、他人によって自分が巻き込まれる。それが面白いと思うようになりました。
 たとえば“芸劇eyes”という企画は僕が考え出したことではなく、我々のスタッフの中からのアイデアだったんです。昨年は若い人の芝居を5本上演し、それを観に行って、今までの自分だったら出合わなかっただろうことに触れました。人様に巻き込まれるということは、ものを作っていく上ですごく大事だなと思いました。以上が一年間の概観です。


■「芸劇が注目する才能たち、“芸劇eyes”」の成果とこれから

 前回の“芸劇eyes”では岩井秀人くん(ハイバイ/青年団演出部)の作品がとても面白くて。僕は観たことがなかったんです。こういう若い人も出て来てるんだと知って、自分が不勉強だったなと思いました。他の演出家も面白かったので、今年も非常に楽しみにしています。

 我々が若いころは上の世代(例えば唐十郎さん)が元気だったので、『あいつらをいかに潰すか』みたいな出方だったと思うんですよね。僕なんか特に「上の世代とは付き合わず押し進もう」という、我が強いところがあった。でも今の若い人は意外に上の世代とも会うし、話も聞いてくれる。会うと気のいい人が多いです。ただ“気のいい人たちが作っているもの”は、若干似ているというか、近いところがある。

 平田オリザさんが若い人といち早く接して、いつの間にかひとつの形を作ったと思うんですよね。私のように荒っぽくお芝居を作る人間からすると、「油断したかな」という気持ちもありまして(笑)。たとえばさっき言った岩井くんもそうですし、その層がつくったものが出てきていますから。我々“荒削り派”がちょっとなまけたかな…というのはある。それであわてて芸術監督とかやってるんですけど(笑)。

 若い人は目覚めたら早いのでそんなに悲観はしていないんですが、もう少しスケール感のある芝居を作ってくれないかなという欲求はあります。でもそれは押し付けることではないんで。

 ⇒レポート② に続く。


※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年08月13日 15:03 | TrackBack (0)