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2010年08月13日

【写真レポート】東京芸術劇場「野田秀樹芸術監督就任1周年記者懇談会」07/08東京芸術劇場カフェ・コンチェルト③

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野田秀樹さん

 「野田秀樹芸術監督就任1周年記者懇談会」の写真レポート③です。⇒レポート① ⇒レポート②

 野田秀樹さんが記者の質問に次々と答えてくださり、東京芸術劇場そして池袋という街の今後が見えてくるようでした。

■ロンドン留学中にインスパイアされた人物は?

 ドンマー・ウェアハウス(Donmar Warehouse)の芸術監督サム・メンデス(Samuel Alexander Mendes)ですね。今は映画監督として有名です。メンデスのチョイスは間違いないと信じているので、ロンドン留学が終わった後も、ロンドンに戻る度に最初に観に行ったのはドンマー・ウェアハウス。芸術監督への信頼です。


■芸術監督になったメリットとデメリット

 メリットはえらそうになれたこと(笑)。なぜかわかんないけど納得してもらえるようになりました。背後に何かあるように感じるんじゃないですか?海外でも「アーティスティック・ダイレクターになったよ」と言うと、今までより真面目に話を聞いてくれる(笑)。彼らにとって芸術監督は力の強いものですから。
 余計なことですが、新国立劇場の芸術監督なんてものは海外においては、「その人の発言が日本の文化を代表する」ぐらいに受け取られるものなので、気をつけていただきたいですね(笑)。とはいえ私も“東京”の文化を背負ってるんですが。

 デメリットは時間的なこと。周りの方々がフォローしてくれるので、徐々に細かいことはやらないで済むようになっています。就任直後はすごく細かいことをやらなくちゃいけなくて。たとえばチラシを置き換えるとか(笑)。芸術監督以外の仕事をずいぶんやって、かなり時間のロスがありました。


■本多劇場ができる前、下北沢はピンクサロンの街だった

 池袋については、劇場が街の中心である必要はないけれど、お芝居を観ただけじゃなく帰り道になにかあるような場所になってほしい。劇場だけでできることじゃないから、色んな仕掛けや相談が必要。古本屋さん出身の現・豊島区長が劇場に理解がある人なので、その方と一緒にちょっとずつ変わって行けたらいいかなと。

 池袋は古い街で江戸川乱歩が住んでいたこともあり、もともと文化的な匂いがある場所だから、うまく下町のにおいと文化の匂いが混ざるようになればいいなと思う。自分ができるのは、ここでお芝居をやってお客さんを呼ぶことかなと思います。
 下北沢は本多劇場ができる前はピンクサロンの街でした。若い人がいっぱい集まるようになって、集まる人間の種類によって、街は変わっていくもの。劇場は毎晩大勢の人が来るから、街に影響を与える要素にはなれると思う。


■高校生割引1,000円の継続には助成が必要

 『ザ・キャラクター』は7月から高校生割引が始まります。好評です。すっごく身近なところでは、(出演中の)古田新太の娘が高校1年なので喜んでました(笑)。
 公共劇場のメリットを少しでもうまく還元できるように、どうすればいいのかと考えました。これ(高校生割引)を支えるにはお金が必要です。公の助成金から出すシステムができるようになればいいなと思います。
 助成金制度を知っていて、申請した人間にだけ助成金が与えられるのではなく、舞台を観に来たい人たちに還元すること。その意味で料金を下げるのは合理的だと思う。本当は国全体にそういうことへの理解が広がればいいんですけど。

 ⇒『The Blue Dragon』高校生割引は9月16日(木)受付開始!
  2011年の三谷幸喜新作、NODA・MAP新作でも実施!


■ちゃんとしたものを確実に見せ続けるしかない

 若い層がお芝居から少しずつ離れつつある。そこをどうするかが、日本だけでなく演劇というものの大きな問題になっている気がします。テレビや映画のスターを出演させてお客さんを増やすという単純な考えは、もう飽和状態になってるんじゃないかと。海外でも、例えばロンドンでマドンナが舞台出演したりしましたけど、意外に続かない。

 だから「ちゃんとしたものを確実に見せ続ける」というところに戻ってきちゃうんですよね。結局、(いい舞台を)観たことがないだけなんです。昨日、多摩美術大学の学生が35人まとまって『ザ・キャラクター』を観に来たんですが、僕の芝居をたぶん観たことなくて、今までは授業中もチャラチャラしてた1年生が、終演後に俺と会ったら初めてきちっとしてましたから(笑)。急に真面目な質問をぶつけてきたりして、「お前、今ごろかよ」って思ったけど(笑)。

 そういう機会があることで少しずつ変わってくるんだと思う。魔法のようなことはないんじゃないですかね。破格の高校生割引をするとかして、どうやって劇場に連れてくるか。他に何か方法があれば聞きたいです。良ければどんどん採用していくべきだと思います。このことをいつも頭の中に置いておかなきゃいけない。


■周りの人に支えられている

 周りの人に支えられているということが、この年になってやっとわかりました(笑)。本当にそのおかげだと思っています。
 芸術監督としてやることは文化と直結しているので、最終的には自分の現場に跳ね返ってくる。劇場は理想的には、劇団を持ったり役者を養成したりするもの。それがあれば先の世代の話ができると思う。


■リニューアル後のビジョン
 ※開館から20年経った東京芸術劇場は、劣化した設備を修復するために一時閉館します。2011年3月31日で今期の運営は終了。2012年秋にリニューアル・オープン予定。

 日本の演劇人が日本でつくっているものが劇場で上演されるのだから、(リニューアル後に)いきなり今までとは見違えるようなものができるわけじゃないです。長い目で見て、「お芝居は面白い」「もう一度観たい」と思われるような上質のものを発表していくことですね。今のラインナップが方向的には間違ってるわけではない気がしています。

 海外作品については、去年のプロペラや今年のルパージュは、ある程度演劇を知ってる人にとっては目新しい名前ではない。誰も名前を知らないような団体で、でも面白いものを、海外から見つけてこられればと思う。

 1つの劇場だけではなく、国内の劇場やアジアの劇場と連携すれば、海外作品をもっと呼びやすくなる。たとえば8月に主催するTACT/FESTIVAL(タクトフェスティバル)は、東京だけでなく日本の他地域の劇場と一緒に招聘しています。これが劇場の特性です。色んな劇場が連携していくべきじゃないかと考えています。


 「野田秀樹芸術監督就任1周年記者懇談会」写真レポートは以上です。
 ⇒レポート① ⇒レポート②


※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年08月13日 16:01 | TrackBack (0)