渡辺源四郎商店(通称:なべげん)は現役高校教師で劇作家・演出家の畑澤聖悟さんが主宰する青森の劇団です。劇団拠点である青森市内の劇場アトリエ・グリーンパークに、今夏も訪れました。
中学生演劇体験ワークショップ“ココロとカラダ(で考える)”シリーズは2008年『修学旅行』、2009年『河童』(⇒ワークショップレポート)に続いて今年で3度目。演目は青森県立青森中央高校が昨年の全国高等学校演劇大会で上位入賞した『ともことサマーキャンプ』です。
7日間といっても1日目はオーディション(6/27に実施)、本番が3日間ありますから、実質的な稽古期間はたったの3日間なんですね。
青森中央高校演劇部のOB、OGらが出演するプロデュース公演も同時期に上演されました。上演時間は約45分。
【写真↓B班初日終演後のミーティング。右端の背中は畑澤さん。】
⇒畑澤聖悟さんのブログより:1、2、3、4、5、6、7
⇒CoRich舞台芸術!『ココロとカラダで考えるいじめと正義「ともことサマーキャンプ」』
≪あらすじ≫ 当日パンフレットより。昨年のレビューにも解説あり。
青森市内にある県立高校合宿所。3年2組のサマーキャンプ。2泊3日の学習合宿である。館内で「ともこを見た」という女子が早退する。ともこは学校の屋上から転落死したクラスメート。サマーキャンプは騒然となるのだが……。
≪ここまで≫
オーディションに集まった21人の中学生を全員出演させることにして、A班、B班の2バージョンを創作。本番はそれぞれ2ステージずつ。前回までは1バージョンで3ステージありました。
クオリティーが高かったですね~!最初から最後まで安定していて、「何か恐ろしいハプニングがあるんじゃないか?」という不安も感じなかったです(セリフが止まった瞬間がなかったわけではないですが)。そういえば開演直前に劇場入り口付近で出演者の子供たちと少し話した時も、全然緊張していない様子でした。「今日はB班の初日のはずなのに、なぜこんなにリラックス!?」と不思議に思ったほど。
昨年の『河童』ではなべげんのメンバーや高校演劇で『河童』に出演した高校生・大学生らが、中学生をマンツーマンで指導していました。今年は青森中央高校演劇部の現役高校生30人以上と、同部OB、OGである大学生および社会人10人以上が、出演者21人を指導する体制になっており、中学生1人につき最大3人の指導者がつくという非常に贅沢な環境だったようです(終演後のトークより)。
オーディションが6/27に行われたのも、昨年とは違うところですね。稽古開始までにセリフを覚えてきていたら、稽古の密度も上がったでしょう。また、2年連続、3年連続で参加している中学生もいるので、年々レベルが高くなってきているのかもしれません。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
テーマは「いじめによる自殺」ですから、鑑賞後の後味はずっしりと重たいもの。いじめをしていた女子高生とその親という2役を1人で演じます。あるセリフや動きをきっかけに突然演じる役柄が変化するのが面白いです。
加害者の女子高生5人に「本当のことを言ってくれない?」と弱々しい声で、でも本気で尋ねる新米教師と、同級生をいじめていた娘に「本当のことは絶対に言ってはいけない」と証拠隠滅を勧めた母親。鮮やかな対比になっています。
5人の女子高生の内の1人の「私、生きていかなきゃならないから(ともこには悪いけど、しらを切らせてもらうね)」というセリフで終幕。罪悪感を感じている2人を除く3人が舞台中央に立つラストシーンは、チェーホフ作「三人姉妹」と重なりました。
A班出演者:榊史也 澤谷理佑 林美奈 竹村朱麗 上打田内恵美 牧野レペッカ 橋爪萌 佐渡歩里 蒔苗有紀子 高坂真也 木村紗香
B班出演者:高坂友郁 大坂隼平 豊嶋未沙樹 大友玲菜 相馬祐希 阿部紘奈 渡辺梢 清藤真由子 川村いぶき 木島雄大 木村紗香
※冒頭のシーンには、A班・B班の全員が出演。ともこ役の木村紗香はAB両班に出演。
【作・演出・舞台美術】畑澤聖悟 【照明】浅沼昌弘 【ドラマターグ】工藤千夏 【プロデュース】佐藤誠 【制作】工藤由佳子、西後知春、柿崎彩香、秋庭里美、田守格子 【宣伝美術・イラスト】山下昇平
全席自由・予約制無料
http://www.nabegen.com/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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