野田秀樹さんの新作です。宮沢りえさん、古田新太さん、橋爪功さんら超豪華キャスト。チョウソンハさんの初NODA・MAP出演にも注目していました。
書道教室とギリシア神話の混濁の中からある事件が浮かび上がります。最後の一筆に、一突きに、胸を刺し貫かれました。「過去を忘れるな」という怒りと悲痛の叫びを受け取りました。
劇場ロビーで戯曲が掲載された「新潮 2010年 07月号」を購入。野田さんの公演では毎回必ず買ってる気がします。
⇒2010年9月27日(月)23:00~WOWOWで放送されます
⇒CoRich舞台芸術!『ザ・キャラクター』
早口の大量のセリフ、走り回るメインキャスト、そして舞台を埋める若いアンサンブル。陽気で楽しげな空気や、不穏で荒々しい空気を、大勢の人間の声と体が生み出していました。最初は書道教室、ギリシア神話と、にぎにぎしくて活気のある世界が描かれます。謎が解けるに従って、面白おかしい物語の奥にある静かで冷え切った世界、死んだような目をした若者がじーっと動かずに閉じこもっている闇を描いていたことがわかってきます。
激しい身体表現と膨大なセリフとなると、パっと見はいつもの野田さんらしい作風だと受け取れるのですが、実はそれとは対照的な、正反対といえるものを表していたのだと気づいた時、あらためて演劇という表現の多様さ、層の厚さを感じました。走ったり跳んだりぶつかったりすればするほど、声を振り絞って必死で叫んだりすればするほど、怠惰で無為な、醜悪な人間の、底なしの穴のように息苦しい、、空虚な闇が静かにあらわれるように感じました。
高校生割引(なんと1000円!)で知り合いが2人ほど観に行ってくれました。すごく嬉しかった。野田さん、NODA・MAPそして東京芸術劇場の皆さん、ありがとうございました。
【写真↓東京芸術劇場の正面より】
ここからネタバレします。
チョウソンハさんの背中にあった「幻」に宮沢りえさんが一筆足して「幼」となった時、私も胸を(背中からと言ってもいいかも)刺し貫かれたような、頭から冷や水を浴びせかけられたような、痛みをともなう衝撃を受けました。オウム事件の根っこにある私たち自身の問題は「幼稚」だってこと。舞台を見上げられなくなって肩がふるえて、涙がしぼり出されました。隣の席の人には迷惑だったかもしれません。
『新世紀エヴァンゲリオン』をつくった庵野秀明監督が、おそらくあれは10年ぐらい前だったと思うのですが、テレビのインタビューでおっしゃったことを即座に思い出しました。
庵野「本当の大人はアニメなんて見ないですよ(僕は子供なんです)。」
たしか『ゲド戦記』の試写を初めて見た時の宮崎駿監督も、初監督をされた息子さんについて「子供だ」とおっしゃっていました(←テレビのドキュメンタリーで見ました)。
私はアニメも漫画も大好きですが、それを楽しむことと、その世界に入り込んで外を見なくなることとは別だと思います。私の場合、演劇にどっぷり浸かってその周囲を見ていないと言われてもしょうがないのかもしれません。もう十分以上に大人なくせに、まだまだ幼稚です。それを面と向かって野田さんに指摘されたように感じました。
第15回公演
出演:野田秀樹、橋爪功、宮沢りえ、古田新太、藤井隆、美波、池内博之、チョウソンハ、田中哲司、銀粉蝶 ※稽古中のけがで一時降板した銀粉蝶の代役に高橋惠子、大西智子(6/20-30)。※私が観た回は高橋惠子さんでした。
アンサンブル出演:パンフレット紛失中(涙)により後ほど加筆予定。
脚本・演出:野田秀樹 美術:堀尾幸男 照明:小川幾雄 衣裳:ひびのこづえ 選曲・効果:高都幸男 振付:黒田育世 ヘアメイク:宮森隆行 舞台監督:瀬崎将孝 プロデューサー:鈴木弘之 提携:東京芸術劇場(財団法人東京都歴史文化財団) 企画・製作:NODA・MAP
【休演日】月曜日(6/21をのぞく)、6/24(木)【発売日】2010/04/17 S席9,500円、A席7500円、サイドシート5,500円 ※25歳以下の方は、劇場チケットサービス窓口でのみ、サイドシート3,000円でご購入いただけます(要身分証)。
http://www.nodamap.com
http://www.nodamap.com/site/news/138
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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