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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2010年09月02日

流山児★事務所『櫻の園~喜劇四幕~』09/01-07あうるすぽっと

 千葉哲也さんがチェーホフの『櫻の園』を演出されます。翻訳・台本は木内宏昌さん。木内さん訳は2005年にTPTで上演されていました(千葉さんがロパーヒン役で出演)。今回はそれの改訂版なのかしら。

 私は『桜の園』がとっても好きなので最後まで楽しく拝見しましたが、チェーホフ初心者の方にはわかりづらいかもしれません。流山児★事務所の劇団公演ということで、劇団らしさもそのまま前面に出した演出なのかなと思いました。
 上演時間はうろおぼえですが、たぶん2時間30分ぐらい(途中休憩1回を含む)だったと思います。

 ⇒CoRich舞台芸術!『櫻の園~喜劇四幕~

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより一部抜粋。(役者名)を追加。
 ラネーフスカヤ(安奈淳)は娘:アーニャ(関谷春子)の付き添いでパリから5年ぶりに「櫻の園」へ戻ってくる。帰郷を喜ぶ兄:ガーエフ(流山児祥)、養女:ワーリャ(伊藤弘子)、老僕:フィールス(塩野谷正幸)たち。しかし、「櫻の園」は借金返済のため売りに出されている。商人:ロパーヒン(池下重大)は土地の一部を別荘用地として貸し出せば、難局は避けられると助言する。しかしラネーフスカヤは散財する癖が抜けず、「櫻の園」の破産の危機も真剣に受け止めようとしない。ワーリャとロパーヒンは互いのことを想っているが、どちらからも歩み寄れないままでいる。アーニャは新しい思想を持った大学生:トロフィーモフ(イワヲ)に憧れ、自立して働くことを決意する。競売にかけられた「櫻の園」の運命は?
 ≪ここまで≫

 現代的でかっこいい美術でした。舞台中央奥にある壁が倉庫の扉のように開きます。上手奥の壁に描かれた巨大なイラストは女の子の胸から下の部分かしら。選曲も奇抜でしたね~。流れた時に「えっ?」と少し驚くけれど、納得のいくものでした。

 何度も観てる『桜の園』。よく言われることですが、自分が年をとるにつれて気になる人物や、印象に残るシーンは変わっていくものですね。登場人物は老若男女そろっていますから、ずっとずっと何度も観続けられるんでしょうね。主要人物の誰を見ても「こういう人いるいる~」と思ってしまいます。今までに観たものと比べる視点でも楽しみました。

 千葉さんの演出作品はいくつか拝見してきましたが、私はとても好きです。千葉さんご自身が俳優だからというのが大きいのでしょうけど、舞台の上にいる人たちに嘘がないように見えるからです。千葉さんの「今」と、役者さんの「今」をそのまま舞台に乗せるからじゃないかしら。そのままをさらすのが前提なので、出演者には過酷かもしれません。戯曲を出演者の身体にゆだねて、演出家があまりコントロールをしない場合は、好みが分かれる結果になることもあるかと思います。この作品もかなり好き嫌いがあるでしょうね。

 チラシを見ててっきり下総源太朗さんがロパーヒン役だろうと思い込んでいたので、最初に驚きました。池下重大さんがっ、ロパーヒンっ!!期待を裏切らない素晴らしい演技でした。なんでいつもあんなにセクシーなんでしょうね、池下さん!

 ここからネタバレします。

 今回はラネーフスカヤ(安奈淳)の娘アーニャ(関谷春子)にしみじみしました。歴史を軽んじて、家を捨てて、未来ばっかり見つめている若者。親を乗り越えていくけれど、親を無条件に愛し続ける若者。愚かで悲しいけれど、美しい若者。

 桜の園がロパーヒンに競り落とされ、皆が屋敷を去る最後の場面。ロパーヒンがワーリャ(伊藤弘子)に熱いキスをしますが、結果的にはワーリャが拒むという別れになっていました。「ロパーヒンが正直に愛を告白したのに、ワーリャがかたくなに断った」というストーリーになるのは、私個人としてはあまり好きじゃないですね。2人とも勇気がなかった、同時に貧乏くじを引いた、最後の最後まで運も縁もなかった・・・という方が苦々しくて好き。

 戯曲に登場する男性を女優さんが演じていました(エピホードフ役の町田マリーさん、ヤーシャ役の朝比奈慶さん)。一体なぜなのかしら。私には必要性が感じられませんでした。

あうるすぽっとチェーホフフェスティバル2010参加作品
出演/安奈淳 流山児祥 塩野谷正幸 伊藤弘子 池下重大 町田マリー 関谷春子 栗原茂 イワヲ 小林七緒 坂井香奈美 朝比奈慶 下総源太朗
作/A・チェーホフ 翻訳・台本/木内宏昌 演出/千葉哲也 美術/石原敬 照明/沖野隆一 音響/藤田赤目 衣裳/萩野緑 舞台監督/廣瀬次郎 照明操作/野中千絵 音響操作/常田千晴 演出助手/荒木理恵 衣裳助手/阿萬由美 舞台監督助手/鈴木麻名実 山丸莉菜 制作/米山恭子 ヘアメイクアドバイザー/鎌田直樹  宣伝美術/Flyer-ya 主催/流山児★事務所 芸術監督/流山児祥
【発売日】2010/07/03 全席指定 一般:4,500円 学生割引:3,500円 *学生割引は流山児★事務所のみの取扱
http://www.ryuzanji.com/r-sakura.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年09月02日 10:52 | TrackBack (0)