風間杜夫さん、阿部サダヲさんら豪華キャストを迎えた岩松了さんの新作は、なんとヤクザのお話。前売りは完売。当日券等の情報は公式サイトでどうぞ。上演時間は約2時間40分(途中休憩15分を含む)。
終わってほしくなかった・・・・もっともっと観ていたかったです。
⇒CoRich舞台芸術!『シダの群れ』
≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
組長が病に伏している。現在は、組長の片腕で、かつて香港でマフィアの一員だったという噂のある水野(風間杜夫)が仕切っているが、ある日、大事件が発生する。組長の孫が、敵対関係にある組によって人質に取られたのだ。その原因をつくってしまったのは、下っ端チンピラの森本(阿部サダヲ)。水野が決行を命じた銃撃戦の末に孫は戻って来るが、この事件によって組の将来の問題が一気にあぶり出される。組長の息子のツヨシ(小出恵介)。ツヨシの妻(江口のりこ)と愛人(黒川芽以)。組長の長年の愛人で、今は水野に明らかな秋波を送る真知(伊藤蘭)。その息子で、組員から厚い信頼を得ている人格者のタカヒロ(江口洋介)。そして水野、森本。それぞれの立場で、かつてない切実さで、組の未来と自分の幸せを考え始める彼ら。問題は、それがどれもが少しずつ別の方向を向いていることだった。やがて、その違いがはっきりと思い知らされる出来事が起きる。その時、現実から最も遠い理想を抱いていた森本は……。
≪ここまで≫
幕開けからぎゅっ!と心奪われて、ずーっと気持ち良く集中しっぱなしでした。セリフに出てくる物語の鍵になる言葉、例えば人名や過去の思い出話など懸命に拾い上げて、目の前にある世界を味わおうと躍起になりながら、次々と核心からそらされていく感覚にも身をゆだねていました。とても、とても、いい心地でした。
数人が同じ部屋で一緒に会話をしているのですが、それぞれが全然違うことを考えて(望んで)いて、お互いにそっぽを向いているような状態なんです。どこを見ても何かが起こりそうで、でも何が起こるのか全く予想できないからすごくスリリング。そして実際に何かが起こると、得も言われぬタイミングだから驚いて体がビクっとしたり、出来事の意外さに吹き出し笑いをしたり・・・。
ガランとした空間に3人の女性がふらっと立っている場面が、1枚の完成された絵画に見えたりもしました。ずーっと、ずっとずっと、見つめていたかったな~・・・。そういえば転換中の完全には暗転しない明かりも、今までに味わったことのない、重たい目の浮遊感を味わいました。
役者さんは皆さん、とても色っぽかった!一体なぜなんでしょうね、岩松さんの作品で誰もがセクシーになっちゃうのは!
近藤公園さんが最初は山崎銀之丞さんに見えて、しばらく勘違いしていました(すみません)。近藤さんは岩松作品によく出演されていますよね。今回もセクシーだったな~。
ここからネタバレします。
高さがある倉庫のような美術は、上手にらせん階段、中央に大きな窓、下手には上へも下へも行ける階段があります。小道具や家具なども含めて具象美術と言えるぐらいディテールに凝ったものでしたが、空間全体が抽象世界にも見えて、制限のない広がりを感じ取れました。明かりも意味深だったな~。
森本(阿部サダヲ)が「掃除好き」だったなんて。そういえば台所のシンクをいつも磨いていました。みんな善かれと思って動いてるんですよね。それがぶつかって戦争になってしまう。
最後の場面で組内に2人の死者が出ます。その唐突さ、あっけなさに息をのみ、でも人の死なんてこんなもんだよなと納得。この裏ではおそらく運転手(裵ジョンミョン)にタカヒロ(江口洋介)が殺されています。彼のテーマ曲(と森本が言っていた)テレサ・テンの「つぐない」が流れるのが、なんとも奇妙な切なさでした。
≪東京、大阪≫
出演:阿部サダヲ 江口洋介 小出恵介 近藤公園 江口のりこ 黒川芽以 尾上寛之 裵ジョンミョン 伊藤蘭 風間杜夫
脚本・演出:岩松了 美術:伊藤雅子 照明:沢田祐二 音響:藤田赤目 衣裳:堀井香苗 ヘアメイク:宮内宏明 擬闘:栗原直樹 振付:夏木陽子 舞台監督:福澤諭志 主催:Bunkamura
【休演日】9/9,16,24【発売日】2010/07/03
S9,500円 A7,500円 コクーンシート5,000円
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/shosai_10_shida.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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