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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2010年09月15日

飛ぶ劇場『睡稿(すいこう)、銀河鉄道の夜』09/03-05ぽんプラザホール

 「ぽんプラザホール10周年記念 福岡・九州地域演劇祭」参加作品です。⇒内覧会レポート ⇒CoRich舞台芸術!内特設サイト 『星の王子さま』、『水をめぐる2』を経てぽんプラザホールへ。東京、京都から来た友人と会えたので、3か所を迷わずハシゴできました。持つべきものは友!ありがとうございました!

 飛ぶ劇場は泊篤志さんが作・演出される北九州の劇団です。宮沢賢治の小説『銀河鉄道の夜』をなんと観客参加型の音楽劇に!上演時間は約1時間50分。千秋楽は当日券に数十人並び、入れないお客様もいらしたそうです。

 パーカッションやギターの生演奏あり、元気な歌と踊りあり。親子連れにもお勧めしたい、とても楽しい作品でした。座・高円寺で小学生に観てもらうのとかどうかしら。ぜひ東京公演を!

新編銀河鉄道の夜 (新潮文庫)
宮沢 賢治
新潮社
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 ⇒2009年の舞台写真
 ⇒「銀河鉄道の夜」(青空文庫)※全文読めます。
 ⇒CoRich舞台芸術!『睡稿(すいこう)、銀河鉄道の夜

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 星祭の夜、ジョバンニはいつの間にか銀河鉄道に乗り、親友カムパネルラと銀河を旅する…。飛ぶ劇場版「銀河鉄道の夜」は、教室でうたた寝するジョバンニを、同じく教室のイスに座った観客(=クラスメイト)が見守ります。そしてアフリカンパーカッションのリズムに乗り、いつの間にか登場人物たちと観客が一体となって、“ほんとうのさいわい”を探して銀河を旅するのです。
 ≪ここまで≫

 劇場入り口で車掌さんが切符(型のチケット)にはさみを入れてくれるところから、気分は急上昇。入場して目に入ったのは、2方向から客席がはさむ形状のほぼ何もないステージ。その場で「参加席」「非参加席」を選ばせてくれます。いつもならお芝居にはなるべく参加しない私ですが、演劇祭の盛り上がりにつられ、お友達2人と一緒だったのもあって参加席へ。⇒参加席の方が早々と埋まりました。東京だったら考えられないです。

 車掌・先生他を演じられた木村健二さんが、客いじりにもナチュラルなサドっぷりを発揮されていて(←ほめ言葉です)、とってもスムーズかつ和気あいあいと進行しました。福岡のお客様はノリがいい!進んで楽しもうとされています。最初に観客に「参加席」を選ばせるのもミソなのでしょうね。隣に座っている知らない人も一緒に動いて(セリフを言って)くれると信じられるので、怖がらずに自分も参加できます(小心者ですみません)。

 さて肝心の『銀河鉄道の夜』の内容ですが、登場人物の性格等については泊さんの解釈が加えられていますし、観客参加の楽しいイベントも盛りだくさんで、複数のエピソードが重なる演出などもありましたが、全体的には原作にかなり忠実だったと思います。宗教についての考えや井戸に落ちたさそりの言葉から、ちっぽけな1人の人間である自分自身に立ち戻り、素直に「ほんとうのさいわい」を求めたい気持ちになりました。私は宮沢賢治作品はあまり好きな方ではなかったのですが、ちょこっと新発見した気分。泊さん、ありがとうございました。

 セリフやエピソードの軽快な面白さから原作理解へと導いてくれたのも良かったですし、言葉では具体的にはあらわせないような、演劇的な広がりや深みもありました。ぼんやりと白くて「乳の流れのあとだ」と言われたりする銀河(原作より)。その正体は実は無数の星の集まり・・・だけではないと思える、幸せなラストが迎えられました。

 演技で気になったのは、ジョバンニが「驚く、戸惑う、大声で反応する」のが、決まったパターンになっているように見えたこと。あとは上演時間ですね。子供向けなら1時間30分前後だといいなと思います。

 【写真↓会場であるぽんプラザホールのエントランス付近にて】
20100905_tobugeki_kanban.JPG

 ここからネタバレします。

 鉄道がジョバンニとカンパネルラのいる教室と重なったり、沈没する船から人々が逃げる場面にカンパネルラも登場したり。
 「ほんとうのさいわい」を見つけるために、ジョバンニが銀河鉄道から現実世界へと戻ることを選ぶのに感動。

 公演終了後に個人的に泊さんからお聞きしたことによると、宮沢賢治作『銀河鉄道の夜』は第一稿、第二稿と執筆が重ねられており、例えば第三稿と第四稿では内容が異なるとのこと。泊さんがお好きな版を元に劇作されたそうです。また、北村想さんの『想稿・銀河鉄道の夜』がなかったら本作は生まれたかったとも。

 【写真↓上は参加席ゆえにいただいたメモ。下は切符型チケット。】
gingatetsudo_ticket.JPG

ぽんプラザホール10周年記念 福岡・九州地域演劇祭
【出演】ジョバンニ:大畑佳子 カムパネルラ:寺田剛史 車掌・大学士他:木村健二 ザネリ・鳥捕り他:葉山太司 尼さん・青年他:鵜飼秋子 助手:川口大樹(万能グローブ ガラパゴスダイナモス) 生徒:上野詩織 生徒:中川裕可里 演奏:Aji(劇団AFRICA)
原作:宮沢賢治 脚本・演出:泊篤志 照明:岩田守((有)サム) 衣装:ころもチョッキンカンパニー 劇中歌作曲:泊達夫 振付:藤虎 小道具:中川裕可里 脇内圭介 舞台監督:森田正憲((株)エフジーエス) 制作:藤原達郎 大畑佳子 木村健二 プロデューサー:北村功治(kitaya505) 企画・製作:飛ぶ劇場
【発売日】2010/06/21 前売: 1,800円 / 当日: 2,000円 日時指定・全席自由
http://www.tobugeki.com
http://10kinen.info/stage/tobu.php
http://stage.corich.jp/special/fukuoka-kyushu.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年09月15日 12:40 | TrackBack (0)