宮田慶子新芸術監督が企画した“マンスリー・プロジェクト”の第一弾に伺いました。『ヘッダ・ガーブレル』上演中に同会場で、作家イプセンにまつわる作品を朗読形式で上演します。入場無料。予約受付は終了しています。
『スザンナ』はイプセンの奥さんのお名前。ノルウェーの作家ヨン・フォッセ(⇒過去レビュー)がテレビ用に書いた戯曲です。上演時間は約1時間弱。
⇒『ヘッダ・ガーブレル』制作発表
⇒CoRich舞台芸術!『ヘッダ・ガーブレル』
イプセンの妻スザンナの若い頃、中年の頃、年老いた頃を3人で演じます。1人の人物が3人出てくるだけでも面白そうなのですが、セリフから情景が浮かばないし演技に疑問もあり(全員ではありませんが)、退屈して眠くなりました。出演者は全員『ヘッダ…』に出演中ですので、お稽古の時間が足りなかったのかしら・・・などと邪推してしまいました。
新国立劇場での無料リーディング公演というと、鵜山仁芸術監督の企画がとても面白かったので(レビュー⇒1、2、3)、どうしても比べてしまいます。無料で『ヘッダ…』の装置が観られるだけでもお得ですが、やはり作品で満足させてもらいたいです。戯曲が面白そうなだけに、残念でした。そもそもがテレビ用の戯曲なので、朗読で見せるのは難しいのかしら。そんなことはなさそうなんですが・・・。
ここからネタバレします。
場所や時代が定まっておらず、ストーリーもない、非常に抽象的な世界を描いた戯曲でしたが、基本的にイスに座って、“本を読む”スタイルでした。読み方や演技にもっと工夫が必要だと思います(立って動いた方がいいという意味ではなく)。照明が変化するのは豪華でした。
イプセンの私生活について少し知ることができたのは良かったです。イプセンとスザンナは、イプセンが有名な作家になってから結婚。イプセンは人見知り。食べるよりお酒を飲む方が好き。彼らの暮らしは貧しかった。スザンナは「イプセンは私がいないとだめ」と思っている。戯曲が出来たら、イプセンはまず一番にスザンナに読んで聞かせた。イプセンには愛人がいた。
若いスザンナは婚約を決めるためのディナーでイプセンが来るのを待っている。中年のスザンナは息子の7歳の誕生日にイプセンが帰ってくるのを待っている。年老いたスザンナは自分の誕生日にイプセンが帰ってくるのを待っている。でも、イプセンは来ない・・・という構造がとても面白いと思いました。3人の(でも本当は1人の)人物が同時に夢を見ているようで、誰もが死者のようで。
出演:七瀬なつみ(若い頃)/青山眉子(年老いた頃)/田島令子(中年の頃)
作:ヨン・フォッセ 翻訳:アンネ・ランデ・ペータス/長島確 演出:宮田慶子
無料。応募期間:8/24(火)~9/20(月・祝)
http://www.nntt.jac.go.jp/play/20000400_play.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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