前川知大さん率いる劇団イキウメの新作です(直近の劇団公演の舞台写真入りレビュー⇒1、2)。「図書館的人生」シリーズはNHKでも放送された人気短編集(過去レビュー⇒第1弾、第2弾)。これまでの公演を観ていなくても大丈夫です。
今回は「“食”についての短篇集」。いつも通り物語の展開に引きこまれながら、安心して楽しめるお芝居でした。演劇ならではの演出がもっと多い方が私好みですが、劇団員の方々の演技の幅が広がって、1人ひとりの個性に確かな厚みが感じられたのが収穫でした。上演時間は約2時間10分。
当日券を前日に予約できます。詳細はイキウメの公式サイトでどうぞ。
【舞台写真↓ 撮影:田中亜紀】
⇒CoRich舞台芸術!『図書館的人生vol.3 食べもの連鎖』
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
【プロローグ的なもの】
あらすじ:菜食にこだわった料理教室。先生(板垣雄亮)はちょっと怖い目だけどカリスマ性があるようだ。
【#1 人の為に装うことで、誰が不幸になるっていうんだ?】
あらすじ:菜食生活に移行したい妻(岩本幸子)とお肉が食べたいという夫(浜田信也)。
夫が肉だと思って食べたのが野菜(グルテンミート)だった、ということなります。無理強いよりも嘘がいやで、でも嘘よりももっと根幹にある何かを裏切られたという気持ち。ちょっとわかるな~と思いました。夫が舞台から客席通路へと飛び出すラストが面白いです。浜田さんはいつもより弾けっぷりが大胆で良かったですね。でももっとぶっ飛んでもいいと思いました。
【#2 いずれ誰もがコソ泥だ、後は野となれ山となれ】
あらすじ:万引きの美学を追求する男(安井順平)と懸賞で生計を立てる女(加茂杏子)。
“万引き界”というものがあるという設定が、前川さんっぽくてたまらなく面白いです。ルール(美学)を守らない万引きの天才(緒方健児)の犯行をチクるという、万引き界における大変なルール違反をしてしまう主人公(安井順平)。警察につかまるのかな~と思ったら、万引きGメンに採用されて、しかも以前より万引きをしやすくなったというオチ。お見事。
髪を後ろで1つにしばった緒方さん。ちょっとやさぐれた野性的な雰囲気が良かったです。
【#3 人生という、死に至る病に効果あり】
あらすじ:ライター(浜田信也)が取材した料理教室の先生(板垣雄亮)には、驚くべき過去があった。なんと彼は115歳だという。
幕開けで玄米の料理をしていたので、てっきり1種類しか食べないのは玄米かと思ったのですが、まさか飲血とは。そこから吸血鬼へとつながりホラーなムードが増すのが素敵。
献血のためと偽って、先生(板垣雄亮)が菜食主義者の女性(伊勢佳世)の血を採る場面が良かったです。左腕に針を刺し、血が管を通って行く間、先生が女性を見つめるのがエロティック。
【#4 マヨネーズの別名は、全体主義的調味料】
あらすじ:料理教室の先生(板垣雄亮)がテレビの3分間クッキングに出演する。
トマトソースの煮物なのに、大窪人衛さんが「すいませんマヨネーズありますか?」と言って終幕(笑)。
≪東京、大阪、広島、福岡≫ ※舞台写真は劇団よりご提供いただきました。
出演:浜田信也、盛隆二、岩本幸子、伊勢佳世、森下創、窪田道聡、緒方健児、大窪人衛、加茂杏子、板垣雄亮、安井順平
脚本・演出:前川知大 美術:土岐研一 照明:松本大介(enjin-light) 音響:青木タクヘイ 音楽:安東克人 衣裳:今村あずさ ヘアメイク:西川直子 演出助手:石内エイコ 舞台監督:谷澤拓巳(至福団) 制作:中島隆裕 吉田直美 演出部:棚瀬巧 渡邉亜沙子 上嶋倫子 照明助手:吉村愛子 映像協力:冨田中理 大道具制作:C-COM舞台装置 小道具:高津装飾美術(株) 運搬:(株)マイド 宣伝美術:図工ファイブ 宣伝写真:TALBOT. 舞台写真:田中亜紀 当日運営(東京):坂口厚子 林弥生 稽古場助成:財団法人セゾン文化財団 助成:文化芸術振興費補助金 主催:イキウメ/エッチビイ株式会社
【発売日】2010/09/11 前売り4,000円 当日 4,200円(全席指定・税込み)
http://www.ikiume.jp/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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