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しのぶの演劇レビュー
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2010年11月27日

フェスティバル/トーキョー10公募プログラム・マームとジプシー『ハロースクール、バイバイ』11/24-28シアターグリーン BASE THEATER

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チラシ

 マームとジプシーは藤田貴大さんが作・演出を手がける、出演者を公演ごとに募集するプロデュース形式の演劇ユニットです(⇒過去レビュー ⇒2010年2月公演出演者募集エントリー)。
 『ハロースクール、バイバイ』はフェスティバル/トーキョー10公募プログラムに選ばれた公演です(⇒記者発表)。公演が始まる前に前売りチケットは完売していました。上演時間は約1時間30分。

 超満員の初日の客席には舞台系マスコミ、劇評家、プロデューサー、劇場制作、小劇場フリークの観客など、アンテナを張ってる人たちがいっぱい。開演前からそんなことにドキドキしました。そしてお芝居も刺激に満ちたものでした。若い役者さんが大健闘!

 無料配布の当日パンフレット(↓写真)はなんとカバーが布製です!女の子の顔の刺繍がほどこされています。そういえば前回公演ではボタンがついてましたね。
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 ⇒wonderland初日レビュー
 ⇒ステージチョイス!オススメコラム(徳永京子)
 ⇒CoRich舞台芸術!『ハロースクール、バイバイ

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。 
 ある街の片隅。ある中学校。女子バレーボール部員たち。
 部活動最期の試合が始まる。試合中、部員たちの脳内を、
 幾つもの思い出が駆け巡る。学校に入ってから、今まで。
 取り巻く人間とのあれこれ。でも、ただただ彼女たちは、
 この試合の最中を生きてる。入口から出口までの、最中。
 永遠にも感じられる、最中。一試合の、凝縮された時間。
 彼女たちの体温と、風景を、立体的に映した青春群像劇。
 ≪ここまで≫

 舞台は床に白い線が入っている程度で、ほぼ何もないと言える空間です。役者さんは登場していない時、舞台上下の端っこで待機しています(袖に隠れている人もいたかも)。

 海に近い中学校の女子バレーボール部員たちと、彼女らの近くにいる男子たちの日常。中学生のたわいない学校生活の1ページが、登場人物それぞれの視点から何度も繰り返し演じられます。少年少女にとっての鮮烈な経験は、繰り返されることでその鮮度と寿命が延びるように感じました。
 中心となる人物が変わり、場面を見せる角度も変わるので、全く同じことを繰り返すわけではありません。見せ方だけでなく感情表現や声の大きさなど、演技も変わっていくのが面白かったです。人の数だけ真実があるし、思い出は美化されるものだな~などと考えました。

 バレーボールの試合の場面は、6人の選手とマネージャーが元気に声を出して激しく動き回ります。決まった振付どおりに動いている(はずである)ことを忘れるほど生々しくて、フォーメーションの巧みさは知的格闘技のよう。獣のように熱く激しく1つのことに打ち込む様は滑稽にも見え、やがてそれが人生のほんの一瞬間の出来事なのだと感じるごとに、切なさが胸に込み上げます。
 
 具体的な何かを伝えようとしたり、特に重要なシーンを目立たせたりすることなく、感情の衝突や発せられもしなかった胸の奥の思いを、その場で起こっているように自然に見せることを心がけていたのではないかと思いました。だからだと思うのですが、舞台がずっと遠景でした。小さな劇場で上演されるごく普通の日常のお話で、登場人物はその場、その時に命を燃やすように生きていて、打ち寄せる波の冷たさを肌で感じるぐらいヴィヴィッドなのに、遠い遠い、どこか知らない場所の風景が、静かに広がっているような。その距離感が独特で心地よかった。

 蛍光灯や電球を使った照明のセンスがとっても良かったです。音楽に合わせて明かりの場所が変化するのもかっこ良かった。派手ではないんですが急所をとらえていると思います。
 選曲もいいなと思いましたが、鳴るタイミングが少々気にかかることがありました。曲の尺に合わせて場面を組み合わせているように感じたのは残念。約90分の上演時間を長いと感じてしまったのは、そのせいなんじゃないかと思います。

 あと、セリフがとても良かったですね。いまどきの中学生の言葉は私にはわかりませんが、わざとらしさがなくて、会話のキャッチボールも心地よかったです。お互いに投げっぱなしでキャッチしてなくても。

 ここからネタバレします。

 男女の肉体的、精神的性差があらわれたかどうかぐらいの時期の幸せな青春を描くだけでなく、その年齢の子供たちが経験するには悲しすぎる、もしくは残酷すぎる出来事も折り込まれています。
 引越しで転入してきた女子。毎年のように転校するのでずっと帰宅部でしたが、新しいクラスメートに誘われて女子バレーボール部に入部。運動部の中学生ライフを満喫しますが、また東京に引っ越すことに。想像するに、父と母が別居(離婚?)状態なんじゃないかしら。
 新聞部のイケてない男子の家業は銭湯。銭湯はやがて取り壊しになります。サッカー部の男子は父親と別れて暮らしていて、悪い先輩とつるんでいます。得体の知れない荷物の運び屋をやらされており、預かった袋を開けてみたら、モデルガンが。

 ただ、前作の方がひりひり感は強かったように思います。同じ“14歳もの”とはいえアプローチが全然違うので比較できるものではないですが、どちらかというと物語の面では前作の方が私好みでした。
 藤田貴大さんのツイッター(⇒)によると「14歳を描く新作はここで終わり」のようですね。次回作が楽しみです。

≪京都、東京≫
KYOTO EXPERIMENTフリンジ"HAPPLAY"/F/T公募プログラム参加
出演:伊野香織(しほ) 荻原綾(あじさい) 河野愛(きよ) 木下有佳理(ちづみ) 斎藤章子(まきこ) 成田亜佑美(るな) 緑川史絵(のぶえ) 尾野島慎太朗(よしみ) 波佐谷聡(はまだ)
脚本・演出:藤田貴大 舞台監督:森山香緒梨 舞台監督助手:加藤唯 照明プラン:吉成陽子 照明オペ:明石怜子 音響:角田里枝 衣裳:NINGENDAYO. パンフレット:青柳いづみ 演出助手:舘巴絵 かもめ中学校校歌:じゃがいもハニー(作詞・作曲:召田実子) 記録写真:飯田浩一 宣伝美術:本橋若子 制作:林香菜 共催:アトリエ劇研 宣伝協力:有限会社ネビュラエクストラサポート
【発売日】2010/09/05 ご予約 2000円/当日券 2200円
http://mum-gypsy.com/
http://www.festival-tokyo.jp/program/mum_gypsy/


※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年11月27日 01:25 | TrackBack (0)