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2010年12月03日

【写真レポート】Studio Life「舞台『11人いる!』『萩尾望都原画展』合同制作発表」11/26博品館劇場

 男優集団Studio Lifeが萩尾望都さんのSF漫画の名作『11人いる!』を舞台化します。『萩尾望都原画展』との合同制作発表に伺いました。Studio Lifeの制作発表⇒
 Studio Lifeは1996年の『トーマの心臓』初演から、これまでに4つの萩尾作品を舞台化した実績があります(レビュー⇒)。

 『11人いる!』は私も大好きな漫画で、何度か繰り返し読みました。今公演が初の舞台化ではないですが、作・演出の倉田淳さんはじめ劇団員の皆さんの言葉に、Studio Lifeならではの新しい『11人いる!』を生み出そうという意欲が満ちているのを感じました。

 倉田さんと萩尾さんの対談では貴重な創作秘話だけでなく、今求められる人間関係などについても率直に語ってくださいました。

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萩尾望都原画展

 ●デビュー40周年記念・萩尾望都原画展 ⇒公式サイト
 【名古屋】 名古屋栄三越 7階催物会場
  2010年12月22日(水)~2011年1月3日(月)
  一般700円、高大生500円、中学生以下は無料
 【福岡】福岡アジア美術館
  2011年1/24(月)~3月13日(日)
   一般1200円(前売1000円)、高大生1000円(800円)、小中学生600円(400円)
  ※東京会場で未公開だった原画も出品されます。⇒昨年の制作発表
  
 ●Studio Life『11人いる!』公式サイト
  ≪東京、名古屋、大阪≫
  2011年02/05-28あうるすぽっと
  一般発売開始:2010年12月26日(日)
  東京公演:全席指定 一般(前売・当日)¥5500 
  未就学児童の入場不可。
  ⇒CoRich舞台芸術!『11人いる!

 ※ポスター↓のグラフィックデザインを手掛けたのは萩尾さん。photoshopで作成されたそうです。
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 ≪『11人いる!』あらすじ≫ プレスリリースより。
 宇宙大学の入学試験の最終テスト。外部との接触を断たれた宇宙船で、10人1組が53日間の宇宙飛行を成し遂げるというものだった。非常信号の発信ボタンを押して外部と接触を取れば、生命は保障されるが、連帯責任で全員が不合格となる。
 しかし、宇宙船・白号(ハクゴウ)には10人のはずが、なぜか11人いた。スタートから謎を抱え、閉塞された宇宙船で次々起こる不可解な出来事。それぞれに生まれる不安、疑い、対立、反目、友情・・・受験生たちの試される時が始まった。
 ≪ここまで≫

 ■萩尾望都×倉田淳 記念対談 (写真左から:倉田淳さん、萩尾望都さん)
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 倉田「『11人いる!』は1975年に描かれたSF作品です。誕生秘話をぜひ教えてください。」
 萩尾「中学校の頃からSFに夢中でした。宮沢賢治の『ざしき童子(ぼっこ)のはなし』(⇒青空文庫)という短編を読んだら、“お座敷で10人で遊んでいたら、いつの間にか11人になっていた”という、可愛いけど、ぞくっとするお話で。『いつの間にか、居ちゃいけないところに、10人じゃなくて11人居た』という話が書きたいと、高校生の頃から考えていました。でもキャラクターが11人分思いつかなくて(笑)。デビュー後に編集者の方から長編を書かないかと言われた時、今なら描けるかなと思って描きました。」

 倉田「11人全員が個性的なキャラクターで、楽しくて仕方がないです。続編『東の地平・西の永遠』はいつ描かれたんですか?」
 萩尾「続編は本編を描いている最中に出来ました。『11人いる!』を描くのに3ヶ月かかったので、その間、『この人はこの後どうするんだろう』『どういうところで育ったんだろう』などという妄想が起こって(笑)、描き終わった頃には11人全員の惑星の話が、ある程度できていたんです。」

11人いる! (小学館文庫)
萩尾 望都
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 倉田「フロルというキャラクターは性が未分化で、男女が定まっていませんね。」
 萩尾「私のSFの発想はすべて自分が読んだSFから得てまして。60年~70年代のSFは宇宙を開拓する設定のものが多くて、そこで色んな宇宙人が出てくるんです。アーシュラ・K・ル・グィンの小説『闇の左手』では、その惑星の人間は全て性が定まってなくて、繁殖期になってから男と女に分化するんです。その本がすごく面白くて。
 生物学の易しい本などを読んでみたら、生まれつき性別が決定してるのは哺乳類と鳥類だけなんですって。貝や魚などは生育の過程や環境によって、たとえば生まれる時の温度で性が決まったりする。じゃあフロルみたいなのがいてもいいかなって(笑)。」

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 倉田「『11人いる!』の舞台となる宇宙では、星が小競り合いを繰り返しながら、最終的には統合されて宇宙大学ができたという設定です。この全宇宙の大きさから考えると、起こっていることは“小競り合い”なんですよね。現在の地球の、日本の中の小競り合いやトラブルについてはどう思われますか?」
 萩尾「ずーっと人間は小競り合いを続けていくのかなと思います。どちらも自分が正しいと思ってるんですよね。本当にそう信じてるからどうしても争いは起こってしまう。でもひたすらコミュニケーション、コミュニケーション、コミュニケーションで、なんとか打開するしかないなと思います 一方を壊滅させて、もう一方が生き残る時代じゃない。もうそんな時代は続かないんじゃないかと思います。」

 倉田「コミュニケーション、重要ですよね。『11人いる!』では隔離された宇宙船で色んなアクシデントが起こる中、受験生たちは他者と対峙することによって、自分の立場や負の部分を受け入れていきます。自分が負だと思っている部分を受け入れながら生きていくための、アドバイスをお伺いしたいです。」
 萩尾「倉田さんのおっしゃるとおりで、自分の負の部分というのは克服したり闘ったりするものではなく、受け入れるものなんじゃないかと思うんです。コンプレックスを無くそうと思って努力すると、どうしても自分に厳しい人間になってしまう。自分に厳しいと、他人にも厳しくなってしまうから、むしろ負を受け入れて、自分のことを許してあげる。そして他人のことも許す。その方が生きやすいんじゃないかなって思います。そのあたりの兼ね合いは一人じゃできないから、やっぱり他人を介して、お互いにコミュニケーションを取りながら、距離感を測りながら、自分で発見し、理解していく。そんな風にして許し合っていくのが一番いいのではないかと思います。」
 倉田「それは『トーマの心臓』にも通じることですよね。先生の作品には、人が生きていくための道が非常に深く刻まれている。そこにいつも感動しているんです。」
 ※舞台版『トーマの心臓』はStudio Lifeの代表作で、15年間で合計7回上演されています。

トーマの心臓 (小学館文庫)
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 倉田「中学生の頃からSFにハマってらっしゃるとのことですが、今、面白いと思う作品はありますか?」
 萩尾「SFには今もハマってます。最近のSFはインターネットやハイパースペースなど、記号で形成されていくものが多いので、コンピューターがよくわからない私には大変なんですが、ロイス・マクマスター・ビジョルド(⇒Wikipedia)のSFは古き良き時代のスペース・オペラの名残りがあって、読めば、わかるんです。舞台は宇宙なんだけど人間的な生活をみんなが営んでいる。そこに未来感がどんどん入ってきて、すごく面白いですね。」

【写真(敬称略)上段左から:青木隆敏 曽世海司 山﨑康一
 下段左から:及川健 山本芳樹 萩尾望都 松本慎也 三上俊】
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●『11人いる!』への意気込み、期待をひとこと!

【劇団代表・河内喜一朗さん】
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 河内「『11人いる!』は舞台が無現の宇宙空間でありながら、密室劇の要素がある芝居的な題材で、昔から倉田もやりたがっていた作品です。代々木アニメーション学院のご協力を得まして、宇宙空間を表現するための舞台いっぱいのスクリーンに映写するコンピューター・グラフィックや、ハリウッド映画並みの特殊メイクにも挑戦したいと思っております。」


【作/演出・倉田淳さん】
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 倉田「『11人いる!』を舞台化させていただけることになり、本当に幸せです。稽古を一番待ち望んでるのは私だと思います。
 『11人いる!』は宇宙が舞台のSFで、非常にユニークなキャラクターがたくさん登場します。舞台という限られた空間でイメージをどう広げるか、身を引き締めてトライアルをしていきたいと思っています。芝居の面白さは、お客様がいかに想像力を広げてくださるかにかかっています。代々木アニメーション学院の方々のお力をお借りして、その入り口をとにかく丁寧に作り上げていきたい。白号は男性ばかりが乗る船なので、スタジオライフにぴったりではないかと思います。がんばります。」


【原作・萩尾望都さん】
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 萩尾「今までスタジオライフでは割とリリカルな話を上演して頂くことが多かったので、結構ハードな要素がある『11人いる!』が、どんな風になるのか非常に興味があります。演出家の倉田さんが女性ですからリリックな面は出せるでしょうし、それに対して役者さんが全員男性ですので、相反する別の魅力がうまく出せるんじゃないかなと思っています。特殊メイクについても今から期待感がますます高まっています。」


【山本芳樹さん(Alcorチームのタダトス・レーン役)】
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 山本「この作品が舞台でどうなるのか今のところわかりませんが、リハーサルで徐々に積み上げていくんだと思います。楽しみです。萩尾先生の素晴らしい作品とスタジオライフの持っている世界が、いい化学反応を起こして新たな舞台を作って行けたらいいなと思っています。うまく融合して、いいコラボレーションができるように、これからの稽古で精進していきたいと思います。」
 ※質問:役作りはどのようにされますか?
 山本「宇宙船のみんなとの会話や関係をどれだけ作っていけるかですね。あとは、若い役なので若さを保って行きたいなと思います(笑)。」


【松本慎也さん(Mizarチームのタダトス・レーン役)】
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 松本「『トーマの心臓』『訪問者』『メッシュ』『マージナル』に続いて、また大好きな萩尾先生の作品に出演できることをすごく幸せに思います。『11人いる!』は閉鎖された密室空間における集団試験という、演じる側にとってこれほど面白い遊び場はないというぐらい、燃えるシチュエーションです。僕たちスタジオライフの魅力は関係性と心情を繊細に、丁寧に表現することだと思いますので、観に来てくださったお客様にはドキドキはらはらしながら、目の前で繰り広げられる、生の極限状態の人間の感情のぶつかり合いを楽しんでいただきたいです。演出家、キャストそしてスタッフの皆さまとともに、真摯に芝居に取り組んでいきたいと思います。」
 ※質問:役作りはどのようにされますか?
 松本「困った時は原作に立ち返ること。原作の持つ力に助けていただきます。劇団なのでみんなとイメージを共有して作り込むことができる。稽古がいやというほどできるので、そこを強みに作っていきたいと思います。」


【三上俊さん(Mizarチームのフロルベリチェリ・フロル役)】
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 三上「僕が演じさせていただくフロルという役は、物語の中でメニールと呼ばれることがあります。それはフロルの星では“ガキ”という意味で、フロルは活発で負けん気が強く、言葉遣いや礼儀を知らないところもあります。でも心の中には優しさと思いやりがある人物なんです。またメニールは、他の星では“天使”という意味も含まれます。思いやりと優しさをしっかり持った上で、元気に明るく演じたい。見た目が男性か女性か分からないということなので、見た目も中身も天使のような存在になれたらと思います。」


【及川健さん(Alcorチームのフロルベリチェリ・フロル役)】
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 及川「学生時代にアニメーション部に在籍してまして、その時にアニメ化された『11人いる!』を観ました。かつての部員がスタジオライフのファンクラブに入って、今も私を観に来てくれているんです。来年、この作品を上演させていただくことに、不思議なご縁を感じております。隣に座っている(同じAlcorチームの)山本(芳樹)と、白号のみんなと、よくコミュニケーションを取りながら一生懸命つとめてまいりたいと思います。」


【青木隆敏さん(Alcorチームのバセスカ役)】
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 青木「萩尾先生の作り出された登場人物の1人になれることに、すごくドキドキしています。今回演じるバセスカは王様です。王様を演じるのは初めての挑戦なので、これまたドキドキしているのですが、威厳のある態度と高貴なオーラをまとえるように、そして萩尾先生の登場人物らしい繊細な心理描写も忘れずにきちんと演じたいと思います。」


【山﨑康一さん(グレン・グロフ役)】
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 山﨑「『11人いる!』は萩尾先生の本の中で『トーマの心臓』の次に読ませていただきました。すごく緊張していますし、嬉しいです。先生の作品は追えば追うほど逃げていくので、どこまで追えるのか挑戦していきたいと思っています。そしてどこまで自分の哲学が芽生えるか、稽古が楽しみです。僕と林勇輔が特殊メイクをやらせていただきます。期待していてください。」


【曽世海司さん(Mizarチームのバセスカ役)】

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 曽世「自分がもともとSF好きなので『11人いる!』を読んだ時の感動は今でも忘れられません。SFに必要な要素、面白い要素が、すべて作品の中に凝縮されていて、胸をわしづかみにされました。ずっとやりたいと思ってきた作品に出させていただけることになり、嬉しくてわくわくしております。
 『11人いる!』では白号という宇宙船の限られた空間の中で、人間同士の感情がぶつかり合います。スタジオライフは男だけの劇団で、非常にコミュニケーションが取りやすい集団です。遠慮会釈なく舞台の上でもケンカできる間柄を普段から培ってきていますので、密室劇をやるには得なカンパニーだと思います。スタジオライフが『11人いる!』をやることが、ひとつの事件になればと思います。
 僕自身も青木(隆敏)と同じ王様を演じさせていただくので、威厳とオーラをきちんとまといたい。それがあって初めて、はみ出てくる感情が面白くなるんじゃないかと思います。役者としての挑戦にも身ぶるいしているところです。どうぞご期待ください。」

 ●Studio Life『11人いる!』は東京、名古屋、大阪公演ともに12月26日(日)より一般発売開始です!

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【Alcor(アルコル)チーム】タダトス・レーン:山本芳樹 フロルベリチェリ・フロル:及川健 バセスカ:青木隆敏 ソルダム四世ドリカス:仲原裕之 アマゾン・カーナイス:鈴木智久 チャコ・力カ:冨士亮太 ドルフ・タスタ:篠田仁志 トト・二:松村泰一郎 ヴィドメニール・ヌーム:林勇輔 ガニガス・ガグトス:船戸慎士 グレン・グロフ:山﨑康一 長老ほか:倉本徹
【Mizar(ミザール)チーム】タダトス・レーン:松本慎也 フロルベリチェリ・フロル:三上俊 バセスカ:曽世海司 ソルダム四世ドリカス:関戸博一 アマゾン・カーナイス:堀川剛史 チャコ・力カ:原田洋二郎 ドルフ・タスタ:牧島進一 トト・二:神野明人 ヴィドメニール・ヌーム:林勇輔 ガニガス・ガグトス:船戸慎士 グレン・グロフ:山﨑康一 長老ほか:倉本徹
※出演者は都合により変更となる場合もございます。ご了承ください。※Alcor(アルコル)チーム Mizar(ミザール)チームのダブルキャスト。※山本芳樹は東京公演のみの出演。名古屋、大阪公演のタダトス・レーン役は松本慎也。
原作:萩尾望都((c)萩尾望都/小学館文庫) 脚本・演出:倉田淳 企画・製作:Studio Life
プレイガイド発売開始日 2010年12月26日(日)※東京公演・名古屋公演・大阪公演同時発売
【チケット料金(全席指定・税込)】◆東京公演 一般 5,500円 / club LIFE会員 5,000円 ◆名古屋公演 一般 5,800円 / club LIFE会員 5,400円 ◆大阪公演 一般 5,800円 / club LIFE会員 5,400円 未就学児童の入場不可。
http://www.studio-life.com/stage/11nin2011_new/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年12月03日 13:58 | TrackBack (0)