青森を拠点に活動する渡辺源四郎商店と、埼玉を拠点に活動する東京デスロックの合同公演です。畑澤聖悟さん(渡辺源四郎商店)の戯曲を多田淳之介さん(東京デスロック)が演出されます。東京デスロックのメンバーが青森に滞在して創作したそうです。
多田さんならではの派手で大胆な演出で、戯曲の大事なところをギュギュッ!と力強く伝えてくれました。
⇒CoRich舞台芸術!『月と牛の耳』
レビューは記録程度です。
≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を一部追加。
東北の地方都市にある精神病院。
入居者のひとり、加賀谷敏(51)(牧野慶一)。「鳳凰院赤心拳」館長を務める格闘家である。
彼は7年前、日本で猛威を震った「プリオンウイルス脳炎」に感染して入院。
快方に向かうも入院中に脳出血に見舞われ、その後遺症により順行性健忘症となった。
知能はそのまま、障害を受ける以前の記憶もそのままだが、新しい物事を記憶することが全く出来ない。
「ホーム」の職員たち(佐山和泉 工藤静香 畑澤聖悟)は、彼の前では毎日が7年前、即ち1994年の4月25日であるかのように振る舞っている。
その日は、加賀谷の長女(工藤由佳子)が婚約者(夏目慎也)を連れて父を見舞いに来る筈の日なのだった……。
≪ここまで≫
家族の濃い会話劇でありながら、格闘技へのリスペクトと男のロマンも、笑いの裏に表に大切にしたためてられていました。入院中の加賀谷(牧野慶一)が格闘家であったこと、家族が格闘技でつながっていたことが、公演全体であらわされていたように思います。畑澤さんも多田さんもプロレスの大ファンなんですよね(チラシより)。
無数のタイル(パズルのピース)を並べたような大きな壁に、じわじわと変化するカラフルな照明。日常会話がかわされる病室から抽象世界へと、観客の思考を瞬時に飛躍させてくれました。
ここからネタバレします。
オープニングの出演者紹介は東京公演で追加されたそうです。工藤由佳子さんがプロレスラーのように登場しただけで感涙。肩と首の曲がり具合、静かながらもグラグラと闘争心に煮え立ったような目。
兄弟(工藤由佳子、佐藤誠、工藤良平、柿崎彩香)が舞台奥に一列に並んだ時、「家族」が見えました。
≪キラリ☆ふじみアトリエシリーズ12月≫ 参加費無料・申込不要
出演者:畑澤聖悟 多田淳之介 松井憲太郎(キラリ☆ふじみ館長)
トークまで聞いて感じたことです。
東京デスロックは2008年からキラリ☆ふじみのキラリンクカンパニーになり、2010年から多田さんが同劇場の芸術監督になられました。何度もキラリ☆ふじみに伺う内に、多田さんがその劇場の人であることが板についたというか、私個人にとってしっくり来たというか。やっと全身で受け入れられるようになりました。おかしな言い方ですが、なぜかホっとしたような嬉しい気持ちです。
多田さんおよび東京デスロックは、東京で暮らす私の近くにはもういなくて、違うステージへと進まれたのだなと感じています。少しさびしい気もしますが、時は過ぎるし人は成長しますものね。今後も1ファンとして見つめていきたいと思いました。むしろ東京デスロックおよび多田さんのことを鏡にして、自分のことを見つめ直した方がいいのかもしれません。
≪青森、埼玉≫
渡辺源四郎商店旗揚げ五周年記念事業/東京デスロック演劇LOVE2010~愛の共同作業~
出演:工藤由佳子、工藤静香、三上晴佳、工藤良平、柿崎彩香、宮越昭司、牧野慶一、畑澤聖悟(以上 渡辺源四郎商店) 夏目慎也、佐山和泉、佐藤誠、間野律子(以上 東京デスロック) 石橋亜希子(青年団)
脚本:畑澤聖悟 演出:多田淳之介 照明:岩城保 音響:泉田雄太 美術アドバイザー:山下昇平 演出助手:橋本清 ドラマターグ:工藤千夏 宣伝美術:宇野モンド 制作:服部悦子、西後知春 プロデュース:佐藤誠 主催:渡辺源四郎商店 東京デスロック 財団法人富士見市施設管理公社(埼玉公演)
【発売日】2010/10/02 一般前売 3,000円 当日 3,500円 学生・シニア(65歳以上)前売・当日ともに2,500円 ◯未就学児のご入場はお断りしております。
http://www.nabegen.com/
http://deathlock.specters.net/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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