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2010年11月08日

tpt『おそるべき親たち』10/21-11/03東京芸術劇場小ホール2

 『おそるべき親たち』はジャン・コクトーの戯曲なんですね。小説の『おそるべき子供たち』はよく耳にしますが、この作品は知りませんでした。演出はTPTに所属する熊林弘高さん。

 スタイリッシュな装置と衣装、試行錯誤の末に選びだされた演技。豪華キャストによる贅沢な時間でした。ストーリーもとても面白くて大満足。上演時間は約2時間30分(休憩15分を含む)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『おそるべき親たち

 ≪あらすじ≫ チラシより。(役者名)を追加。
 イヴォンヌ(麻実れい)は一人息子ミシェル(満島真之介)を溺愛しており、その恋人マドレーヌ(中嶋朋子)の出現に憤りを隠さない。息子は叔母レオ(佐藤オリエ)の薦めで父ジョルジュ(中嶋しゅう)に相談するが、恋人の名を聞いてジョルジュは仰天する。マドレーヌは彼の愛人だったのだ。一家はミシェルに促され、マドレーヌの家を訪問することとなるが・・・。
 ≪ここまで≫

 舞台が客席方向に張りだした形になっていて、三方から客席が囲みます。私は上手側の席で、横から観る位置でした。中央の方が見やすいんだろうなと思っていたのですが、横からしか表情が見えない場面もあり、ちょっと得した気持ちにも。

 親たちは黒い服で、若い男女は白い服。上流階級のミシェルの家は黒いステージに丸くて赤いベッド。製本の仕事をしているマドレーヌの部屋は、ベッドにも床にも白い布をかぶせ、対比させます。

 ミシェルとイヴォンヌの大胆な甘えっ振り、退廃っぷり。ふらふらと優柔不断そうに見えて、獣のように豹変するジョルジュ。賢いのにそんなジョルジュに首ったけのレオ。美しいけどあからさまに薄幸そうなマドレーヌ。真面目に演技をすればするほど可笑しいお芝居でした。こういうストレート・プレイがとても好きです。

 ここからネタバレします。

 放蕩の限りを尽くしてきたのであろうイヴォンヌたちの屋敷は「ジプシーの家」。

 ジャン・コクトーの作品ですのできっと大団円にはならないだろうとは思っていましたが、最後にイヴォンヌが衝動的に毒を飲んで死んでしまうのはちょっとショック。それをじっと見届けるレオ。私の席からは彼女がどんな表情をしていたのかがわからなかったんです。もしかしたらレオの計算通りの結末だったのかも・・・?と想像。後から同じ回を観ていた友達に聞いたところ、「どちらともとれない、無表情だった」とのこと。いいですね!

Les parents terribles by Jean Cocteau
出演:佐藤オリエ 中嶋しゅう 麻実れい 満島真之介 中嶋朋子
作:ジャン・コクトー 台本:木内宏昌 演出:熊林弘高 美術:島次郎 照明:笠原俊幸 衣裳:原まさみ 音響:長野朋美 ヘア&メイクアップ:鎌田直樹 舞台監督:増田裕幸 演出部:松井美保 深瀬元喜 美術助手:角浜有香 照明オペレーター:三輪弓子 音響オペレーター:鹿野英之 城戸智行 衣裳進行:田近裕美 ヘア&メイクアップ:宮﨑智子 大道具:(有)C-COM 桜井俊郎 武田寛 背景美術:(株)美術工房拓人 松木邦彦 盆:(株)テルミック 﨑山雅之 照明:(株)K.Color-s 音響:(有)オフィス新音 衣裳製作:安川朝子 戸川和枝 横田裕二 佐藤美香 鷲津愛子 斎藤幸子 帽子製作:宮野敏夫 靴製作:木口充恵 制作助手:藤田千穂 斎藤萌子 宣伝美術:高田恵子 写真:松本理加 ARTISTIC DIRECTOR:門井均 PRODUCFRS:門井絵璃 亘理智子 木村明日香 提携:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
【休演日】11月1日【発売日】2010/09/04 全席指定6,000円 学生3,000円 10/21プレビュー公演4,000円(学生券なし)
http://www.tpt.co.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 23:44 | TrackBack

【稽古場レポート】こまつ座『「水の手紙」「朗読劇 少年口伝隊一九四五」』10/28新国立劇場合唱スタジオ

 『朗読劇 少年口伝隊一九四五』は今年4月に亡くなった劇作家の井上ひさしさんが、新国立劇場演劇研修所のために書き下ろした朗読劇です(過去レビュー⇒)。
 2008年の日本ペンクラブによる初演以後、毎年夏に新国立劇場が上演してきましたが、この度、こまつ座で上演されることになりました。出演者は同研修所の修了生で、演出は同研修所所長の栗山民也さんです。学年の異なる修了生たちが集まった新国立劇場の稽古場に伺いました。

 初の舞台化となる『水の手紙』と2本立ての上演になります。日替わりゲストが超豪華!2本の朗読劇の後に、井上さんとお仕事をされた俳優やアーティストの方々が、井上さんへのラブレターを読まれるそうです。チラシ↓はA4が2枚つながった大きさですね。
kudentai_flyer.JPG

 ●こまつ座『「水の手紙」「朗読劇 少年口伝隊一九四五」』 ⇒公式サイト
  11/12-21紀伊國屋サザンシアター
  全席指定 一般6,300円 学生割引4,200円
 ※日替わりゲストトーク出演者:すまけい 麻実れい 白石加代子 熊谷真実 井上芳雄 石原さとみ 小曽根真&神野三鈴 高畑淳子 佐藤B作 辻萬長 剣幸 木場勝己 土居裕子 藤原竜也 大竹しのぶ

 ⇒CoRich舞台芸術!「「水の手紙」/「朗読劇 少年口伝隊一九四五」

 『朗読劇 少年口伝隊一九四五』(以下、『少年口伝隊』)は原爆孤児の3人の少年の物語です。朗読劇といっても登場人物を演じる時はしっかり演技をしますし、立って歩いたり、全員で同じ動きをするなどの演出もあります。

 栗山「「井上作品には珍しく、感情を排して叙事的に書かれている。“記録”をどのように次の世代の“記憶”にしていくのかが、この作品のテーマ。朗読というシンプルな劇で、劇中劇もないし、笑いの入る隙間もない。それぐらい“凄い”現実を渡していく。」

 幸せな日常が突然壊れること、原爆のすさまじさ、恐ろしさ、そして焼け野原を襲った巨大台風。当時の広島の風景が、若者の澄んだ言葉でよみがります。稽古場には方言指導の先生もいらしていて、細かく発音を直されていました。

 栗山「言葉を読みながらお客さんに渡していくのが“朗読”の“劇”。センテンスを人間の言葉として渡して、感情を伝えてね。作者は色んな精神状況を個々のセリフに振り分けている。前の人の言葉を自分も読んでいるように、自分の感情も上げていって。
 火の海の中に入った時に言うセリフってどういうことなんだろう。俳優の想像力が問われるところだよ。」

kudentai_keiko.JPG

 昨年、井上ひさしさんの2人芝居『父と暮せば』に出演された、1期生の岡野真那美さんにお話を伺いました。
 岡野「井上さんの作品をやらせていただくのは『父と暮せば』に続いて2作目です。さきほど栗山さんが“記録を記憶に”とお話しされましたが、『少年口伝隊』を読んでいて、体に残っているものがあふれるように感じました。私自身は広島で暮らしたことはないのに、一度経験した広島が戻ってくる感覚があって。自分でも不思議です。」

 主要人物である少年3人を演じるのは宇井晴雄さん、長元洋さん、米川貴久さん。修了公演でも少年役を演じた方々ですが、さらに可愛く、子供らしくなっていました。研修所を卒業してからさまざまな公演にかかわってこられて、ずいぶんと余裕が出てきたのではないでしょうか。

 『少年口伝隊』の稽古が終わると『水の手紙』の衣装合わせがありました。亡くなる前に井上さんが「『水の手紙』は芝居にしてください」と栗山さんにおっしゃったそうです。その約束を果たす追悼公演なんですね。
 残念ながら『水の手紙』のお稽古はなかったので拝見できませんでしたが、修了生が歌の自主稽古をするところを覗かせていただきました。

kudentai_uta.JPG

 音楽が得意な人たちが中心になって稽古を進めます。リーダーは竹田桂さん、ピアノで音程をとるのは長元洋さん、合唱を聴いて音のずれやテンポを確認するのは香原稔彦さん。いつも感じることですが、新国立劇場演劇研修所の研修生および修了生は、見る、聞く、感じる力が優れているように思います。あ・うんの呼吸でコミュニケーションが円滑に行われ、合唱の精度が上がっていきました。

 今公演の出演者は1期から3期の修了生です。現在研修所では4期から6期の生徒が学んでいます。同じ教育を受けて共通言語を持つ若い俳優が毎年輩出され、その実績が着実に成果としてあらわれてきているように感じます。今後、修了生だけが出演する公演は増えていくでしょう。そして当然ですが、競争も激化していくことと思います。国立の俳優学校の恩恵を一人の観客としてありがたく享受しつつ、長く見守っていきたいです。

出演(あいうえお順・女性から):青木花(※鈴木良苗改め) 岡野真那美 河合杏南(※河合杏奈改め) 熊坂理恵子(※熊坂理恵改め) 滝香織 辻村優子 藤井咲有里 吉田紗和子 吉田妙子 渡辺樹里(※渡邉樹里改め) 宇井晴雄 金成均 窪田壮史 香原稔彦(※香原俊彦改め) 西原康彰 竹田桂 長元洋 西村壮悟 山本悠生 米川貴久
ヴィオラ演奏:徳高真奈美 ギター演奏:宮下祥子
作:井上ひさし 演出:栗山民也 協力:新国立劇場演劇研修所
入場料 6,300円(全席指定・消費税込み) 学生割引4,200円 *学生割引:中学、高校、大学、各種専門学校ならびに演劇養成所の皆様を割引いたします。
http://www.komatsuza.co.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 13:06 | TrackBack