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2010年11月29日

山梨県高等学校文化連盟・山梨県高等学校文化連盟演劇専門部「第32回山梨県高等学校演劇大会」11/14山梨県立県民文化ホール小ホール

 はじめて高校演劇の審査員をさせていただきました。朝9時から夜7時過ぎまでの長丁場。出場していた高校生と顧問先生の1ステージにかける熱い気持ちが、広い会場に静かに満ちているように感じて、身が引き締まりました。下記は上演記録と、関東大会出場が決まった2校の作品についての感想です。

 最優秀賞を受賞した甲府昭和高校『冒険授業』が12月にアトリエ春風舎で上演されます!

 ●高校演劇サミット2010 ⇒公式サイト
  2010年12月17日(金)~19日(日)@アトリエ春風舎
  参加校:都立飛鳥高校『デイドリーム』作:若林美穂(生徒創作)
      山梨県立甲府昭和高校『冒険授業』作:中村勉(顧問創作)
      都立世田谷総合『せたそーのあゆみ』作:柴幸男(既成) 潤色:岡崎恵介
  ※『せたそーのあゆみ』は2009年の『あゆみ めぐろパーシモンREMIX』がもとになっています。

20101114_yamanashi_kentaikai.JPG

 ここからネタバレします。

【1】甲府第一高校『夏休みの風景 2011』★優秀賞二席
 作:はやおとうじ(既成)

【2】山梨高校『同級生』
 作:石原哲也(既成)

~~~昼休み ~~~

【3】甲府南高校『はたらけ喫茶』★優秀賞一席
 出演:渡辺優仁 青柳心 伊藤愛 鎌矢良平 後藤遥果 大木英俊 
 作:甲府南高校演劇部(生徒創作) スタッフ:内藤嵯紀 齋藤大樹 上西哲平 粕川周平 弦間春華
 〈作品紹介〉東京都某所の喫茶店。そこに昼夜を問わず通い続けるのは、二ート♂(27歳)、二ート♀(23歳)フリーター♂(20歳)。遊んでばかりのグダグダ楽しい毎日の中に、時折垣間見える彼らの苦悩。彼らは何を思って働かないのか。そして彼らは、無事に社会に出ることはでさるのだろうか―!?

 ツンデレなウェイトレス(青柳心)におびえながら、今日もだらだらだべり続けるニートたちだったが、1人、また1人と正社員(鎌矢良平)になったり専門職(伊藤愛)に就いたり、まっとうな人生を歩み始める。1人のこった27歳の新島(渡辺優仁)は・・・。

 ナンセンス・ギャグが冴えていて驚きました。モンティー・パイソンみたい!選曲センスも素晴らしい。例えばただのダジャレなのに、BGMの妙と演技および動きの演出が面白かったので、爆笑できました(例:「ホットドッグって熱い犬、そんなの食べられない」というセリフにピアノ曲を流す等)。
 太郎の「男女」の歌に合わせて踊ったり、特に必要ではないのに会話中にジャンプしたり、激しい身体表現を急に繰り出す見せ場がとっても魅力的。神(?)役の男性(大木英俊)がひとことも発しないのも面白かったです。
 作・演出・出演されている生徒の方々自身が、本気で面白いと思うものを選んで、練り上げて上演しているから、嘘のない、爆発力のある、そして今に通じる笑いが生まれるのだろうと思います。

 起承転結の「転」に当たる部分であろう、新島がウェイトレスの言葉に心動かされて教師になる決意をする場面。演技も脚本も少々説得力に欠けたように感じました。でも暗闇にサスが当たる新島の独白は正統派演劇的で良かったです。


【4】白根高校『南アルプスの少女:演劇部辞めます編』
 作:河野豊仁(顧問創作) 


【5】甲府昭和高校『冒険授業』★最優秀賞
 出演:村社忠之 平山美奈子 中沢綾 吉岡風人 龍澤史菜 長谷部里穂 矢崎翔太 小林真伊 濱口綾乃 池谷遥 志村みゆき 滝本愛海 込山愛美 
 作:中村勉(顧問創作) 演出:濱口綾乃 演出補:池谷遥 舞台監督:濱口綾乃 美術:滝本愛海 村社忠之 長谷部里穂 照明:小林真伊 平山美奈子 音響:込山愛美 吉岡風人 衣裳:濱口綾乃 龍澤史菜 小道具:池谷遥 音響オペ:込山愛美 照明オペ:小林真伊
 〈作品紹介〉冒険授業! これは冒険についての授業であり、授業の中で冒険をするお話です。というより授業は冒険なんです。さあ出かけましょう冒険の旅へ!何万キロも何万年も遠くへ!

 柴幸男さんの『わが星』や『あゆみ』などの影響を大きく受けたであろう脚本・演出でしたね。でも単純な模倣ではなく、高校生が上演するオリジナルの演劇作品として完成度の高いものになっていました。

 幕開け。高校生(とおぼしき)男女が床に寝転がっています。死んでるようだし眠っているようでもあります。スローモーション、ストップモーションの動きで立ちあがる、歩くなどを繰り返すのはコンテンポラリー・ダンスのよう。稽古の行きとどいた群舞は、時間を止める、凝縮する、引きのばすなどの演劇的効果を生み出していました。
 一人ずつ違う学校の制服を着ることで、特定のクラス内ではなく、世界中の高校生が舞台にいることを表現。世界を1つの空間に凝縮し、生死を暗示して時間も可視化したのです。オープニングでいきなりコレですから、期待値が異様に上がりました。

 布団をボールに見たてたドッジボール、見えない縄の縄跳びなど、演劇ならではの演出で楽しませてくれます。セリフを短く区切り、例えば1つの単語を色んな言い方で発語することで、発音や声色次第で意味が変わるという言葉の可能性を見せていました。

 やがて登校拒否をしているのであろう1人の女子生徒に焦点が絞られます。彼女は巨大なエンドウマメのような抱き枕を擬人化して友達と呼び、自分の殻の中に閉じこもっているのです。彼女の夢の中の学校に、実体の世界から生徒と先生が飛びこんできます。学校の現実と誰かの夢とが交錯するのは面白いですが、個人的には、せっかく宇宙の果てのまた向こうの抽象世界まで広がりそうな舞台が、1人の人間の頭の中にシュルルルル~・・・としぼんでしまったように感じて落胆しました。人間の中の宇宙を感じとれれば良かったんでしょうが、そうはなりませんでした。作品の中に没頭していたせいで、私はすっかり感情移入しちゃってたんですね(笑)。

 高校の授業を描写する際に「分ければわかる」と言って、文章を細かい文節に分けたりしていました。的外れかもしれないですが、「分ければわかる」だけでなく「わかれば変わる」まで具体的に表しても良かったんじゃないかと思いました。どの時代も変化こそが人間が欲してやまないものであり、変化が奇跡を起こすきっかけになったり、それ自体が奇跡だったりしますよね。授業で起こす奇跡を演劇的に見せることができれば、タイトルの『冒険授業』がよりしっくり合うだろうと思います。


【6】岐南高校『あの電話』
 作:宇田川豪犬(既成)


【表彰】
・山梨県高等学校演劇連盟最優秀賞:甲府昭和高校 ★関東大会出場★
・山梨県高等学校演劇連盟優秀賞一席:甲府南高校 ★関東大会出場★
・山梨県高等学校演劇連盟優秀賞二席:甲府第一高校
・山梨県高等学校演劇連盟優秀賞(上演順):山梨高校、白根高校、岐南高校
・創作脚本賞:『冒険授業』中村勉、『はたらけ喫茶』甲府南高校演劇部
・舞台美術賞:甲府第一高校
・バックヤード賞:甲府第一高校


【つぶやき】
 劇作家の篠原久美子さんと一緒に審査できたのがとても幸運でした。2人とも新宿駅から甲府に参りましたので、日帰りの行き帰りの電車の中でじっくりお話しできました。篠原さんと私は演劇へのかかわり方も好みも違いますが、根本の部分で共感しているところがありました。例えば、演劇とは人と人との間に存在するものだということ。そして高校生および顧問の先生のがんばりを評価することを前提にしつつも、やはり上演作品そのものが評価対象だと考えること、などです。

※甲府昭和高校と甲府南高校のクレジットは、第31回山梨県高等学校芸術文化祭総合パンフレットおよび、当日いただいたその他の資料より。
平成22年度第31回山梨県高等学校芸術文化祭演劇部門発表会・兼・第32回山梨県高等学校演劇大会
審査員:篠原久美子(劇作家) 高野しのぶ(劇評) 山口高信(三島南高校顧問)
主催:山梨県高等学校文化連盟 山梨県高等学校文化連盟演劇専門部
高校演劇山梨県大会結果 http://blogs.yahoo.co.jp/kokubo14st/archive/2010/11/14 
高校演劇 大会結果 速報ブログ「2010山梨県 県大会結果」
http://blog.goo.ne.jp/keito-28/e/801c5efc198b2778b971b9516f88f63b

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 23:13 | TrackBack

フェスティバル/トーキョー10・黒田育世『あかりのともるかがみのくず』11/09-15にしすがも創造舎

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チラシ

 フェスティバル/トーキョー10の主催演目です(⇒記者発表)。インタビューをさせていただいた黒田育世さんが構成・演出・振付・出演されるダンス公演。 ⇒Choice!WEB ⇒web DICE

 初日を鑑賞しました。最初の20分で涙ボロボロ。舞台の端から端まで歩くだけで、人の一生をさらりと描いてしまいます。テーマは“お母さん”とのことでしたが、性別や時代を超えた生命そのものを、むさぼるように、ダークに描いた作品でした。上演時間は約2時間15分。

 ロビーに厳選シアター情報誌Choice!が置いてありました。終演後に手にとって帰られる方が多くて嬉しかったです。
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 ⇒CoRich舞台芸術!『あかりのともるかがみのくず

 前回のF/T09秋に上演された『花は流れて時は固まる』とは打って変わって何もない黒い空間。スズランテープのような素材の黒いひも状のすだれが、三方を囲みます。その裏に色んな道具が準備されていました。

 結合、共食い、圧縮、繰り返し・・・強烈でした。何か起こるごとに感動しますから、目を離せないんです。でも凝視しつづけるには過激すぎる内容で、観てる私の方がフラフラになっちゃって、終盤はほとんど朦朧としていました。
 翌日は両目が腫れてました。たぶん涙を流し過ぎたんだと思います。

 ここからネタバレします。

 開場時間から舞台上には1人の女性が立っていました。赤いビキニ姿。脚の長さ、手の長さ、体のふくよかさ、表情の柔らかさから母の象徴である土偶を想像。後でわかったのですが、他のダンサーよりも背が低い目の女性でした。

 薔薇とピストルは女性と男性。ピストルの上に茶色い粘土をドカっと乗っけて、その上に薔薇を刺します。粘土は排泄物と受け取ったので、そのオブジェだけで人類を示してるように思いました。こんな風に一瞬でいとも簡単に生、性、世界を表してしまうので、気が気じゃないというか、全然気を抜けない状態でした(笑)。

 人の頭(首から上)が数珠繋ぎになったオブジェ(?)が黒いすだれの向こうに吊り下げられています。黒田さんがその首たちをいとおしく抱きしめて立っていました。グロテスクだけれども、私を含む人間全員を温めてくれているようにも感じます。

 「私を見て!」という叫び。人間は、いや、動物も植物も生命のあるものはみんな、そう叫んでいるのかもしれません。命が輝くのは、誰か(何か)との関係があるからだと思います。誰かに見られないと自分では輝いているかどうかわかりませんし。でも「見て!」と叫ぶばかりで、他人を見ようとしないのも事実。自分の欲望を満たすために貪欲に周囲をむさぼりつくす、命の傲慢さ。その美しさ。

 黒田さんが1人で舞台中央にいる場面で終幕かと予想したのですが、そうはならず。金色の吹雪が降り注ぐ中、1人ずつ全員がトランポリンでジャンプするシーンは、もう、疲れ切ってしまい、眺めているのがやっとでした。

Ray of light, shards of mirror
出演:大江麻美子 大迫英明 梶本はるか 烏山茜 菊沢将憲 末長真 寺西理恵 西田弥生 黒田育世
構成・演出・振付:黒田育世 音楽:松本じろ 照明:森島都絵(インプレッション) ムーヴィング:PCライツ 音響:山田恭子 舞台監督:寅川英司+鴉屋、大友圭―郎 舞台監督アシスタント:佐藤恵 可野千鶴 美術コーディネート:大津英輔+鴉屋 美術コーディネートアシスタント:福島奈央花、坂本遼 小道具:栗山佳代子 小道具アシスタント:横川奈保子、今村智美 小道具協力:山下昇平、木村春子、満木夢奈 演出部:北村泰助、松澤紀昭 衣装:坂本千代 衣装アシスタント:生野舞穂、菊谷彩、山口茜、小野澤彩夏 フロント統括:竹岸実夏 協力:公益財団法人セソン文化財団 制作協力:ハイウッド
【F/Tスタッフ】プログラム・ディレクター:相馬千秋 制作:植松侑子、三五さやか 【F/Tクルー】制作クルー:今井彩乃、大和田沙織、川村美幸、塩澤亜美子、鈴木奈緒、谷口綾美、谷ロ舞、谷山友惟、細井麻沙子、藤井孟、藤原顕太、山田千尋、横山由衣 舞合技術クルー:尾越有紗、小嶋裕太、榊原杏奈、胥森、竹澤ひさみ、谷山友惟、生江裕美子、野島結、長谷川真緒、日色ともみ、藤下彩 主催・製作:フェスティバル/トーキョー
【休演日】11/12【発売日】2010/09/05 自由席 一般 前売 4,000円(当日 +500円)、学生 3,000円、高校生以下 1,000円(前売・当日共通、要学生証提示)
http://www.festival-tokyo.jp/program/kuroda/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 22:04 | TrackBack

青年団リンク 本広企画『演劇入門』11/27-12/13こまばアゴラ劇場

 ハイバイの岩井秀人さんの新作戯曲を映画監督の本広克行さんが演出、というだけで興味が惹かれます。そして原作が平田オリザさんの著書「演劇入門」だというのですから、小劇場ファンとしては必見ですよね。⇒公演公式サイト

 いったいどうやって「演劇入門」を演劇にするのかしら・・・と素直に疑問に思って劇場へ行き、当日パンフレットを開いてビックリ。どうぞ皆さんもビックリしてください(笑)。上演時間は約1時間40分。

 とても珍しい午前公演があります。お子様がいらっしゃる主婦の方にいい時間帯かも。
 ⇒12月2日(木)11:00~ 特別追加公演(特別価格2,000円)

演劇入門 (講談社現代新書)
平田 オリザ
講談社
売り上げランキング: 11983

 ⇒CoRich舞台芸術!『演劇入門

 あらすじは公式サイトに載ってます。観る前に読みたい方はどうぞ。

 青年団の公演も岩井秀人さんの作品も色々観てきた私は、いわゆる小劇場オタクですので、オタク視点でたいそう楽しませていただきました。でも演劇をよく知らない観客が演劇に触れるきっかけ(つまり演劇の入門)としても、楽しめるような導入になっています。実際、終演後のトークの時にわかったのですが、いつものアゴラ劇場の客層よりも小劇場フリークの観客が少なかったと思います。

 劇中劇が連続する構造になっていて、役者さんは複数の役を瞬時に切り替えながら、色んな種類の演技をします。上演される劇中劇のジャンルが多様で、演じる役も変わるし、観客に話しかけることもあります。また、最初から最後まで筋の通った1つの物語が、時おり劇中劇を浸食します。複雑で見ごたえがありますが、これは役者さんは、かなり、大変・・・。ジャンルの異なるお芝居をダイジェストで次々と演じることで、役者さんの技術や個性の差がよくわかる状態になっていると思います。見かたによっては俳優品評会ともいえる、サバイバルな作品じゃないでしょうか(笑)。

 出演者全員が青年団の劇団員ですが、それぞれに違った演技手法を持ってらっしゃるのだなと思いました。もちろん得意・不得意もありますよね。特に○○○○役は複数の方が順番に演じていきますので、比較せざるを得ないと思います。上手い下手ではなく、どの役者さんの演技が自分好みなのかがよくわかりました。私は鄭亜美(ちょん・あみ)さんの爆発力というか、感情と声が一体となったパワーに魅せられました。

 ここからネタバレします。

 岩井秀人さんが初めて演劇を体験してから、しゃべり言葉の演劇(=現代口語演劇)の作り手になるまでの実体験が、そのままストーリーになっています。“岩井秀人”が登場して、初めて出た市民劇の稽古場(七五調の翻訳劇)、大学の演劇学科の授業風景(清水邦夫作『朝に死す』)などを、外側から眺めながら解説するのです。岩井さんご自身にとっての“演劇入門”を見せつつ、古いスタイルの演劇から現在よく上演されている演劇への変遷としてとらえることもできます。色んな意味で“演劇入門”な公演になっているんですね。

 『東京ノート』の舞台が現れた時は演劇史の勉強をしている気分(笑)。『東京ノート』の家庭教師と元女子高生の「妊娠告白」場面を2種類(古屋隆太&中村真生、山内健司&荻野友里)観せてもらい、その後、平田オリザ人形(志賀廣太郎さんが操ります)がダメ出しをします。よくできた人形でした(笑)。平田さんが休憩15分の間にその場で寝るのも実話でしょう。

 まさか岩松了さんの『月光のつゝしみ』を青年団の役者さんで観られるとは!!岩井さんの処女作にして代表作の『ヒッキー・カンクーントルネード』は、兄を山本雅幸さん、妹を鄭亜美さんのペアで。そして最後はなんと、ハイバイ公演『』の家族全員が集合した修羅場をたっぷり上演。配役は父:古舘寛治、長男:島田曜蔵、長女:川隅奈保子、長女の夫:永井秀樹、次男:古屋隆太、次女:荻野友里。
 これらについては、私はどうしてもオリジナルと比べざるを得ず、真っ白な気持ちで観ることはできませんでした。初めてチャレンジするには手ごわい戯曲ばかりでしょうから、役者さんはとっては大きな挑戦ですよね。

 1本通った筋とは、岩井さんと実父(志賀廣太郎)との対立関係でした。『て』を観た父が「やっぱわかんないわ」と言って、2人は微笑みあって(?)終幕。あそこまで赤裸々に見せても通じ合うどころか、とりつくしまもない人間関係の絶望的な現実。でも作った舞台を観てひとことでも会話が交わせたことに、希望は見つけられると思いました。また、演劇を観て「わかんない」という感想を持ってもいいんだ、ということでもありますよね。


 ≪終演後のトークセッション≫
 出演:本広克行 君塚良一(映画監督、脚本家・放送作家/『踊る大捜査線』脚本)

 君塚さんは本広さんのお薦めの舞台をどんどん観に行かれているそうです。最近面白かったのはあいちトリエンナーレでのヤン・ファーブル作品、『自慢の息子』『葬送の教室『ガラスの葉』『異邦人』とのこと。通ですねー!

 君塚さんが色んなお話をされた中で、この作品を“役者殺し”の舞台だとおっしゃっていて、その言葉自体は色んな解釈ができると思いますが、私も同感でした。

出演:山内健司 志賀廣太郎 永井秀樹 川隅奈保子 島田曜蔵 古屋隆太 古舘寛治 山本雅幸 荻野友里 桜町元 鄭亜美 中村真生
原作:平田オリザ 脚本:岩井秀人(青年団演出部/ハイバイ) 演出:本広克行 美術:杉山至 照明:岩城保 音響:中村嘉宏 音響操作:井川佳代 舞台監督:中西隆雄 演出助手:鹿島将介 フライヤーデザイン:京 (kyo.designworks) 写真:momoko japan Web・広報協力:SAL Corporation Inc. (株)クロト 制作:野村政之 堤佳奈 仲田佳世 芸術監督:平田オリザ 企画制作:青年団/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 協力:(株)ロボット 主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 平成22年度文化庁芸術拠点形成事業
11月28日(日)19:00の回 ゲスト:君塚良一さん(映画監督、脚本家・放送作家/『踊る大捜査線』脚本)
11月29日(月)19:30の回 ゲスト:山内ケンジさん(CMディレクター/城山羊の会 主宰)
【発売日】2010/10/09【前売・予約・当日共に】一般:3500円 学生・シニア:2500円 高校生以下:1500円*全席自由・日時指定・整理番号付*学生・シニアの方、当日受付にて学籍・年齢を確認できる証明書をご提示ください。*本公演は芸術地域通貨ARTS(アーツ)をご利用頂けます。*未就学児童はご入場いただけません。
http://engeki.motohiro.com/
http://www.komaba-agora.com/line_up/2010/11/motohiro_kikaku/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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