2010年12月16日
渡辺源四郎商店×東京デスロック合同公演『月と牛の耳』12/03-05富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ
青森を拠点に活動する渡辺源四郎商店と、埼玉を拠点に活動する東京デスロックの合同公演です。畑澤聖悟さん(渡辺源四郎商店)の戯曲を多田淳之介さん(東京デスロック)が演出されます。東京デスロックのメンバーが青森に滞在して創作したそうです。
多田さんならではの派手で大胆な演出で、戯曲の大事なところをギュギュッ!と力強く伝えてくれました。
⇒CoRich舞台芸術!『月と牛の耳』
レビューは記録程度です。
≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を一部追加。
東北の地方都市にある精神病院。
入居者のひとり、加賀谷敏(51)(牧野慶一)。「鳳凰院赤心拳」館長を務める格闘家である。
彼は7年前、日本で猛威を震った「プリオンウイルス脳炎」に感染して入院。
快方に向かうも入院中に脳出血に見舞われ、その後遺症により順行性健忘症となった。
知能はそのまま、障害を受ける以前の記憶もそのままだが、新しい物事を記憶することが全く出来ない。
「ホーム」の職員たち(佐山和泉 工藤静香 畑澤聖悟)は、彼の前では毎日が7年前、即ち1994年の4月25日であるかのように振る舞っている。
その日は、加賀谷の長女(工藤由佳子)が婚約者(夏目慎也)を連れて父を見舞いに来る筈の日なのだった……。
≪ここまで≫
家族の濃い会話劇でありながら、格闘技へのリスペクトと男のロマンも、笑いの裏に表に大切にしたためてられていました。入院中の加賀谷(牧野慶一)が格闘家であったこと、家族が格闘技でつながっていたことが、公演全体であらわされていたように思います。畑澤さんも多田さんもプロレスの大ファンなんですよね(チラシより)。
無数のタイル(パズルのピース)を並べたような大きな壁に、じわじわと変化するカラフルな照明。日常会話がかわされる病室から抽象世界へと、観客の思考を瞬時に飛躍させてくれました。
ここからネタバレします。
オープニングの出演者紹介は東京公演で追加されたそうです。工藤由佳子さんがプロレスラーのように登場しただけで感涙。肩と首の曲がり具合、静かながらもグラグラと闘争心に煮え立ったような目。
兄弟(工藤由佳子、佐藤誠、工藤良平、柿崎彩香)が舞台奥に一列に並んだ時、「家族」が見えました。
≪キラリ☆ふじみアトリエシリーズ12月≫ 参加費無料・申込不要
出演者:畑澤聖悟 多田淳之介 松井憲太郎(キラリ☆ふじみ館長)
トークまで聞いて感じたことです。
東京デスロックは2008年からキラリ☆ふじみのキラリンクカンパニーになり、2010年から多田さんが同劇場の芸術監督になられました。何度もキラリ☆ふじみに伺う内に、多田さんがその劇場の人であることが板についたというか、私個人にとってしっくり来たというか。やっと全身で受け入れられるようになりました。おかしな言い方ですが、なぜかホっとしたような嬉しい気持ちです。
多田さんおよび東京デスロックは、東京で暮らす私の近くにはもういなくて、違うステージへと進まれたのだなと感じています。少しさびしい気もしますが、時は過ぎるし人は成長しますものね。今後も1ファンとして見つめていきたいと思いました。むしろ東京デスロックおよび多田さんのことを鏡にして、自分のことを見つめ直した方がいいのかもしれません。
≪青森、埼玉≫
渡辺源四郎商店旗揚げ五周年記念事業/東京デスロック演劇LOVE2010~愛の共同作業~
出演:工藤由佳子、工藤静香、三上晴佳、工藤良平、柿崎彩香、宮越昭司、牧野慶一、畑澤聖悟(以上 渡辺源四郎商店) 夏目慎也、佐山和泉、佐藤誠、間野律子(以上 東京デスロック) 石橋亜希子(青年団)
脚本:畑澤聖悟 演出:多田淳之介 照明:岩城保 音響:泉田雄太 美術アドバイザー:山下昇平 演出助手:橋本清 ドラマターグ:工藤千夏 宣伝美術:宇野モンド 制作:服部悦子、西後知春 プロデュース:佐藤誠 主催:渡辺源四郎商店 東京デスロック 財団法人富士見市施設管理公社(埼玉公演)
【発売日】2010/10/02 一般前売 3,000円 当日 3,500円 学生・シニア(65歳以上)前売・当日ともに2,500円 ◯未就学児のご入場はお断りしております。
http://www.nabegen.com/
http://deathlock.specters.net/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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市原佐都子卒業研究公演『虫虫Q』12/09-12桜美林大学徳望館小劇場
桜美林大学4年生の卒業研究公演です。マームとジプシー、バナナ学園純情乙女組、範宙遊泳、乞局などに出演経験のある若い女優さん5人が出演。面白かった!
桜美林大学の学生の作品はダンスと芝居の境界線がないんですよね。演劇界の次世代が着々と育っているのを実感。上演時間は約1時間10分。
⇒CoRich舞台芸術!『虫虫Q』
何もないブラックボックスがビビッドに動く身体のみで劇空間に。セリフも演技も動作もダンスも、身体表現という意味で彼女らにとっては同じものなのでしょうね
20代前半日本人女子の等身大の生態を、少人数の会話と痛い独白でシニカル&コミカルに表現。女優5人全員が堂々として、それぞれに魅力的です。弱くてダサい自分を嗤いながら、感情も肉体も丸ごと自愛する強さも備えています。しっかり客観した上でデフォルメしているのが素晴らしい。
タイトルの『虫虫Q』はNHKの子供向け番組『むしむしQ』(むしまるQ?)から来ているようです。アニメのキャラはコミカルなのですが、超リアルな実写映像で、グロテスクさも剥き出しのまま、虫の生態をクイズ形式で紹介します。この作品は女子大生が自分たちを紹介していました。
ここからネタバレします。
一人暮らしの女子大生。夜中に知らない男にレイプされるがまま。立ったまま寝る。:吉田聡子
伊勢丹が好き。美味しいものに目がない。外見や他人が気になってばかり。語尾がウフフ。:竹中香子
16歳の時から弁当屋とアパートの往復人生。ニノが好き。息声しか出ない。:岡崎菜穂子
覗き見する耳年寄りの処女。誰にでも「がんばって!」と無責任に、でも本気で叫ぶ。:大森美里
性交渉の体験数多し。バンドマンの彼の子を妊娠するがウザがられる。語尾が歌声。:市原佐都子
出演:竹中香子、大森美里、岡崎菜穂子、吉田聡子、市原佐都子
脚本・演出:市原佐都子 舞台監督・舞台美術:加藤唯/照明:塚原佑梨/音響:吉村紳平/映像:御園涼平/衣裳:飯塚ゆかり 橋本ゆりか/宣伝美術:吉田聡子/演出助手:舘巴絵/制作:市川公美子/制作協力:萩谷早枝子/監修:今井朋彦
【発売日】2010/11/03【通常】前売り:800円/当日:1000円【土夜割】前売り:500円/当日:700円※割引Q…11日(土)19:30の回対象
http://musimusikeiko.blog94.fc2.com/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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