スタンリー・キューブリックの同名映画が大好きなので、舞台化のニュースを目にした時は驚き、嬉しくなりました。でも「あの暴力映画(笑)をどうやって舞台に!?」という勝手な心配もあり(笑)。
主演は小栗旬さん、演出は河原雅彦さん。パンフは2,000円と高かったですが、買ってよかったです。映画ではなく原作をもとにしているんですね。上演時間は約2時間45分(途中休憩20分を含む)。
⇒CoRich舞台芸術!『時計じかけのオレンジ』
≪あらすじ≫ 公式サイトから部分抜粋。(役者名)を追加。
近未来のロンドンの町。コロヴァ・ミルク・バーにアレックス(小栗旬)を首領とするジョージー(高良健吾)、ディム(ムロツヨシ)、ピート(矢崎広)の4人組がいる。バーの外、ジャンキーをよってたかって、殴る、蹴る。さらに別の少年たちとの乱闘。棍棒、チェーン、ナイフが飛び交う。ドルーグ・ソングを歌い、ナッドサット語を駆使し、街を席捲するアレックスたち。・・・・
≪ここまで≫
舞台正面奥のLEDカーテン(って言うのかな)で映像がじゃんじゃか流れます。両袖が鏡張りの壁になっており、中央の映像が鏡に映る仕掛けです。壁三面に大きく映される映像は大迫力。劇団新感線公演のように書割として使われることが少なく、イメージ映像が多かったように思います。舞台上の生中継もあって刺激的。
4人のドルーグたちは映画のイメージそのままの衣装とヘアメイクでわくわく。映画だと過激な暴力にショックを受けながら、徐々にそれに酔って自分も凶暴になっていくような感覚があり、20代の私の興奮体験だったんですが、そこまでは盛り上がれなかったですね。劇中劇の視点もあったので、あえて覚めた状態が保たれることになったのかもしれませんが。
役者さんは吉田鋼太郎さん、キムラ緑子さん、石川禅さん、橋本さとしさんがかっこよかったです。あ、ベテランばかり。考えてみたら若手の方々はパンチが足りなかったな~。これから2ヶ月続く多地域公演なので変わっていかれることと思います。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
アレックス(小栗旬)が暴力の限りを尽くし警察に捕まるまでが約30分。スピーディーで良かったですね。「原作にはないシーンだが」「台本どおりに進むと思うなよ!」など、原作や演劇の前提にとらわれない傍若無人っぷりをあらわす演出(上演台本?)が面白いです。
途中休憩の20分間、アレックスはずっと舞台上にいて「洗脳されている」状態。観客サービスでもありますが、それぐらいつらい目にあってるという感覚を観客も得られるので効果的だと思いました。
犯罪率を低下させるためなら手段を選ばない内務大臣(吉田鋼太郎)たちや、人体実験を楽しむドクター(橋本さとし)らはこの社会をあらわしていますし、悪党が警官になり善悪が簡単に裏返るさまも風刺が利いています。復活したアレックスが政府との契約書にサインをし続ける場面は、アレックスが収容所で洗脳実験に合意するサインをした映像と重なりました。あいかわらずお互い様、というか・・・。
映画のエンディングの後に、もう1場面ありました。アレックスは黒髪の真人間になっています。「俺は大人になったのさ!」に驚いた(笑)。「暴力ばかりに傾倒していたのは子供だったから」「バイオレンスからクリエイションへ」「選択するのは大変だけど、選択こそ自由の醍醐味」など。原作者が映画版に憤慨して加えた教訓の部分なのでしょうね。メッセージがすごくはっきり示されて、戸惑いつつも、ちょっと納得。
「今、台本どおりに歌ってみせたのが、大人になった証拠さ」とのたまうアレックス。最後の歌の後に生バンドの演奏がありました。楽譜どおりに演奏して観客に聴かせてくれていると思うと、バンドの大人たちがすごくかっこよく見えたんです。ルールなしの遊戯って面白くないですものね。
≪東京、仙台、大阪、北九州、愛知≫ "A Clockwork Orange"
出演:小栗旬 橋本さとし 武田真治 高良健吾 山内圭哉 ムロツヨシ 矢崎広 桜木健一 石川禅 キムラ緑子 吉田鋼太郎 今奈良孝行 上地春奈 五大輝一 白井悟 西田健二 栗山絵美 高山のえみ 中林舞 平田小百合
原作・脚本:アンソニー・バージェス 上演台本・演出:河原雅彦 音楽監督:内橋和久 振付:井手茂太 美術:堀尾幸男 照明:小川幾雄 音響:大木裕介 衣装:伊賀大介 ヘアメイク:馮啓孝 殺陣:川原正嗣 映像:上田大樹 歌唱指導:伊藤和美 稽古ピアノ:宇賀村直佳 演出助手:西祐子 舞台監督:小林清隆 企画制作:ホリプロ 主催:TBS / トライストーン・エンタテイメント / ホリプロ
【休演日】1/5,11,18,25【発売日】2010/09/26 S席 11,000円(税込) / A席 8,000円(税込)
http://www.tbs.co.jp/act/event/clockwork-orange/
http://www.horipro.co.jp/usr/ticket/kouen.cgi?Detail=150
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。