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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2011年01月22日

ミナモザ『エモーショナルレイバー』01/20-23シアタートラム

 シアタートラム ネクスト・ジェネレーションvol.3(⇒募集情報)の第1弾はミナモザ。瀬戸山美咲さんが作・演出される劇団です。私は短編を1度観たことがあります。
 
 小劇場で活動している団体のステップアップを目的とした企画ですので、ミナモザがシアタートラムを使うのはもちろん初めて。ある事務所の人間模様を丁寧に描いたストレート・プレイでした。上演時間は約1時間45分。

 ⇒「シアタートラム ネクスト・ジェネレーション vol.4参加団体募集
 ⇒CoRich舞台芸術!『エモーショナルレイバー

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。
 都内マンション。今日も男たちはコツコツと電話をかけ続けている。彼らの“仕事”は「振り込め詐欺」。そこへひとりの女が「仲間に入れろ」とやってくる。男たちは「女にはできない仕事だ」と相手にしない。しかし、その集団にはすでにもうひとり女がいた。“心”を使って働く彼らの青春の行く末とは――。
 ≪ここまで≫ 

 舞台はマンションの一室で、ソファやデスクなどリアルな小道具が並んでいます。高い天井部分を黒い木の柱で埋めているので、天井の低さもマンションらしいですね。間口が広くて横に長い空間です。白い枠(梁?)で額縁を囲い、現実に近づけた具象美術でありながら芝居らしさもあります。そういえば黒い木は天井だけじゃなく上下にもありましたね。現代的な部屋が黒くこげた廃材で覆われているようでした。

 振り込め詐欺師たちの日常業務を覗き見する感覚になれたのが、まず良かったです。ある場面が劇中劇にも見えて、観察するうちに詐欺の実態とは関係のないことも想像できました。最後は意外な方向に着地して、少々面食らいましたが面白かったです。

 ここからネタバレします。

 “俺おれ詐欺”にもちゃんとシナリオがあって、その設定が凝っています。きちんと調査して書かれたのでしょうね。ヒエラルキーがはっきりした詐欺組織で、上司と部下の関係はまるで会社のよう。『エモーショナルレイバー』は直訳だと「感情労働」。自分の気持ちを殺して他人の金をだまし取る仕事ですから、当然つらいです。しかも集団での犯罪なので簡単にはやめられない。マフィア、軍隊などを連想しました。
 電話片手に台本どおりに話してみる場面(「患者を死なせてしまった医者が、母親に電話して金を無心する」という設定)は劇中劇のように楽しめました。必死ゆえとても滑稽。

 誰とでも寝ちゃうエンジェル(ハマカワフミエ)は妊娠して事務所を去る決心をします。子供嫌いの彼女は、色気ゼロの先輩ケイ(井上カオリ)に「私の子供をあげる」といきなり提案。ずっと子供が欲しくて、一緒に働いている同遼たちを自分の子供のように大事に思っていたケイは、エンジェルのお腹に手を当てて微笑み、2人は心を通い合わせます。振り込め詐欺からこんな展開になるとは予想せず。
 エンジェルが「ここにいる男たちは戦争してるんだ」と言うのに納得。たしかに電話する姿は兵士にも見えますよね。詐欺から親子、男女の話へと移って行きました。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:瀬戸山美咲 進行:矢作勝義

 瀬戸山さんが影響を受けた演劇人はつかこうへいさん、山﨑哲さん。世田谷パブリックシアターでアルバイトした経験もあるそうです。自分からたくさん話されて質問にもはっきりと答えてくださって、真面目で落ち着いた女性だなと思いました。

シアタートラム ネクスト・ジェネレーションvol.3
出演:宮川珈琲/井上カオリ(椿組)/中田顕史郎/印宮伸二(劇団神馬)/ハマカワフミエ/林剛央(本田ライダーズ)/坂本健一/小西耕一/柳沼大地/斉藤淳
脚本・演出:瀬戸山美咲 舞台監督:伊藤智史 照明:上川真由美 小泉和子 音響:前田規寛(M.S.W) 田上篤志(atSound) 舞台美術:泉真 劇中映像:松田修 ヘア&メーキャップ:進藤郁子 渋沢知美(資生堂ビューティークリエーション研究所) 演出助手:中尾知代(蜂寅企画) 宣伝イラスト:藤沢とおる スチール撮影:服部貴康 VTR撮影:中島良 長瀬拓 山崎敬史 立会達也(クリエイティブ・オフィス・ドエル) 制作:佐藤希(Andem) 制作協力:一ツ橋美和(少年社中)
【世田谷パブリックシアター】技術コーディネート・舞台:永井佐知 照明:杉本公亮 三谷恵子 井口眞 音響:阿部史彦 制作:矢作勝義 落合由人 藤田晶久 主催:財団法人せたがや文化財団 後援:世田谷区
ヘア&メーキャップ協力:資生堂ビューティークリエーション研究所 企画制作:ミナモザ 世田谷パブリックシアター 協賛:トヨタ児童d社式会社 協力:世田谷パブリックシアター友の会
【発売日】2010/11/21 劇場友の会会員 2000円 世田谷区民割引 2000円 U24(要事前登録・枚数限定・詳細はオンラインチケットへ)1250円 高校生以下 1250円 3劇団セット券 6000円(枚数限定・劇場チケットセンターで前売りのみ)
1月20日(木)19:30 ポストトーク出演:瀬戸山美咲+ハセガワアユム(MU)
1月21日(金)19:30 ポストトーク出演:瀬戸山美咲 司会:矢作勝義(世田谷パブリックシアター)
1月22日(土)14:00 ポストトーク出演:瀬戸山美咲+谷岡健彦(東京工業大学外国語研究教育センター准教授)
1月22日(土)19:30 ポストトーク 瀬戸山美咲+菅原そうた(映像作家)
※未就学児童はご入場いただけません。開演後は本来のお席にご案内できない場合がございます。ご了承ください。
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2011/01/post_211.html
http://minamoza.com

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年01月22日 11:48 | TrackBack (0)