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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2011年01月26日

東京芸術劇場プロデュース『チェーホフ?!』01/21-02/13東京芸術劇場小ホール1

 稽古場レポートを書かせていただいた『チェーホフ?!』を拝見しました。プレビューが1/21から始まっており、2日間の休演日を挟んでの初日です。
 
 楽しかった~~~!!次々と美しい絵が現れる紙芝居のようで、ちょっぴり怖いけどどうしても先が、奥が見たくなる魅惑的な絵本のようで、精巧な巨大パペットショー(人形劇)のようで・・・♪弦楽器が何台もそろった生演奏に体をゆだね、無邪気な子供のように夢を見た約1時間20分でした。

 チェーホフを知らなくても全く問題ないと思います。言ってしまうと、タイトルから「チェーホフ」を抜いて『?!』だけでもいい気がしました(笑)。でも専門家の方によると非常にチェーホフらしいそうです。凄いことですね。

 ※2月1日(火)19:00の回終演後のトークのゲストは茂木健一郎さんです。残席わずか!
 ※1月29日(土)連続サミット『チェーホフ?!』はこうして生まれた
  「第3回 新たなるチェーホフ」 
  メインパネリスト:鴻英良 ゲスト:岩松了/タニノクロウ ほか

 ⇒ツイートまとめ「茂木健一郎氏がタニノクロウ氏演出の舞台『チェーホフ?!』を「絶対に行った方がいい」と絶賛」(2011年2月2日)
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 【舞台写真↓撮影:田中亜紀】
chekov_stage_photo.JPG

 分厚い木の枠に赤い緞帳、その下にはオーケストラピット。劇場に入るなりテンションはダダ上がり!開幕すると、凝りに凝った衣裳、装置、生演奏に、作品の一部になることに徹する実力派俳優たち・・・贅沢過ぎて芸劇小ホール1だってことを忘れました。劇場の事情を知らない観客だから言えることだと思いますが、「実はこんなこともできる劇場だったのね!?」と驚いてしまいました。

 本を持つ少年(?)が白髪の謎の女性(?)に導かれて、森の中(?)でさまざまな風景に、人に、出会っていきます。幻想的な短い場面が連続していくのをドキドキしながら見つめました。舞台で描かれることは全てチェーホフの作品(小説や博士論文)がもとになっているそうですが、私は全くといっていいほど引用元はわかりませんでした。幕が開いた途端に夢中になってしまい、チェーホフのことは最初から頭から離れちゃいました(笑)。

 目に見えるものをその人なりに味わえばいいんだと思います。私のようなただの観客とチェーホフの専門家が一緒に鑑賞して、お互いに違うものを感じ取っているものの、双方が楽しめる作品になっているんですよね。『星影のJr.』を思い出しました。また、視覚的に「美しいもの」は、それだけで確かな価値があるものだなと改めて感じました。タニノさんは凄い演出家だと思います。

 5人の役者さんも素晴らしかったです。篠井英介さんが明るく、コミカルな雰囲気でもって観客を迎えてくださいました。歌声にもうっとり。

 終演後に小劇場好きのお友達とお話していたんですが、タニノクロウ作品を初めて観る人にお薦めかも、です。タニノさんが主宰する庭劇団ペニノでは、もっとグロテスクだったりエロティックだったりしますので。見た目も内容(ストーリー?)もそれに比べたら少しマイルドだと思います。もちろん“わかる人にはわかる、通もうなる面白さ”は内包されています。

 ここからネタバレします。

 大きな木枠の赤い緞帳が開くと、それより少し小さい木枠と緞帳が。次々とマトリョーシカのように小さな木枠が現れ、妖精※(篠井英介)の誘いにのって少年(マメ山田)は奥へ、奥へと吸い込まれていきます。めっちゃ楽しい!※白髪の女性は妖精と呼ぶことにしました(勝手に)。
 月夜を描いた絵画がそのまま舞台になるのが素敵。木枠とあいまって入れ子構造がさらに際立ちました。上下に白い壁があり、舞台奥はホリ幕になっているシンプルな空間なのですが、砂漠、草原、海底、宇宙、牢獄などなど、想像力で七変化。
 拘束着を着た蘭妖子さんが「煙草の害について」をポロっと言うのに爆笑。私がチェーホフ作品だとわかったのはこれだけ(笑)。

 毬谷友子さんと手塚とおるさんのダンスは稽古場で観たのとは全然違うものになってました。エロスというより生命の輝きのようなものを感じました。マイナスよりプラスというか。背中から床の方に倒れて行った手塚さんが、床に落ちずに宙に浮いたままだったのは、どういう仕掛け!?牛の肉が天井から降りてきたのにびっくり。でもブラ~ンと動いたのはあまりきれいじゃなかったな~。できればストンとまっすぐ降りて来て欲しかったです(←わがまま)。

 カーテンコールでは出演者に加えて舞台裏で活躍していた演出部のスタッフの方々も出てこられました。タニノクロウさんも合わせると13人!出演者の倍以上です。そしてオケピにいるミュージシャンが5名いらっしゃいましたね。本当に贅沢です。

※舞台写真は主催者よりご提供いただきました。
チェーホフ生誕150周年記念『チェーホフ?!』~哀しいテーマに関する滑稽な論考~
出演:篠井英介 毬谷友子 蘭妖子 マメ山田 手塚とおる
作・演出:タニノクロウ ドラマトゥルク:鴻英良 音楽:阿部篤志 美術:田中敏恵 衣裳:太田雅公 照明:山口暁 音響:中村嘉宏 ヘアメイク:川端富生 演出助手:若月理代 特殊小道具:小此木謙―郎 舞台監普:白石英輔 宣伝美術:松下計 制作:勝優紀/樺澤良 制作助手:坂田厚子 票券:大迫久美子 主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)/東京都/公益財団法人東京都歴史文化財団
S席4,500円 A席3,200円 A席(25歳以下)2,000円 ※1/21(金)、1/22(土)のプレビュー公演は一律3,000円
http://www.geigeki.jp/saiji/025/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年01月26日 00:09 | TrackBack (0)