REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2011年02月04日

森崎事務所・M&O playsプロデュース『国民傘―避けえぬ戦争をめぐる3つの物語』01/21-02/13ザ・スズナリ

 岩松了さんの新作です。出演者は全員オーディションで選ばれた方々(⇒告知エントリー)。上演時間は約2時間25分(途中休憩10分を含む)。

 初日の帰り道に思わずこんなツイートをしちゃいました。少々興奮気味(笑)。“全然わからないこと”が刺激的なんですよね。
 D-BOYSの方々が2人出演されていて、客席にはファンの女性が多かったような。足立理さんがすっごく良かったですね~。

 ⇒CoRich舞台芸術!『国民傘

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより。
小さな3本の物語から、やがて大きな「戦争」が見えてくる-。
 岩松了が書き下ろした3本の短編を、オムニバス形式で上演する試験的・冒険的・刺激的な公演。3本の作品には共通して「戦争」の背景がある。大きな社会的背景の中で、巡る因果に翻弄される小さな存在である個人の事情と、大きな運命の流れを描く岩松渾身の新作は、オーディションにより選ばれたジャンルにとらわれない精鋭たちと、ザ・スズナリの緊密な空間の中で繰り広げられる。2011年のスタートを飾る話題作。
 ≪ここまで≫

 全員がオーディションで選ばれたということで、演技の種類や質感などはバラバラでした。上手手前には生演奏をする
 高くそびえる壁がパタパタと畳まれたり広げられたりして場面転換します。どの部屋も遮断されている息苦しさがあって、人生の行き止まりのよう。でも全然違う空間にすぐに変化しますから、無数の壁があり、でも通り抜けられたりする迷宮のようでした。

 おおまかに分けると3つの物語があり、どんどん関わって交わっていきます。テーマは「戦争」とのことで、兵士が登場するので具体的に「戦争」の姿は目に見えています。そんな「戦争」自体と、私たちが生きる日常にある「戦争」とか同列で存在したような。「戦争」の種は意外に普段から人間が無意識に、いとも簡単にまき散らしていて、その被害もまた目に見える形で日常生活の中にあらわれているのだろうなと思いました。

 映画撮影に参加する兵士役の足立理さん。発想・想像する力に柔らかさがある方なのではないでしょうか。瞬発力もあって素直で、(私には)支離滅裂な(ように見える)言動や行動、しぐさを、次々と軽快にあらわしていかれます。舞台の上にそのまま自然に居ることもしていらしたような。
 石住昭彦さんは演劇集団円の翻訳戯曲上演で拝見し、かっこいいな~と思っていたのですが、今作ではキュート!石住さんも「わかる」「わからない」を意識せずに、素直に演技をされていたように思います。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 母(長田奈麻)と娘(早織)。長男は戦場に行ってしまって不在。2人は“国民傘”の置き場を勝手に変えたため投獄される。看守(三浦誠己)が読む本には印刷所の話が書かれていた。
 小さな印刷所で働く兄弟(石住昭彦、渋川清彦)と従業員(三浦俊輔)、使用人(浅野かや)。弟が撮影する映画に兄は出演したことがある。“国民傘”という傘を全国に置くという法律を作った暴君の役だった。戦地から戻った若者(三上真史)が、印刷所で働かせてくれと言ってきた。従業員には美しい愛人(片山瞳)がいる。
 中隊長を探している兵士たち(佐藤銀平、足立理、太賀)。探している、と言っているが実は殺害して埋めてしまったようだ。

 語られた言葉から意味や感情を受け取ろうとして、自分の頭(心)で解釈しようとしても、そんな余裕は与えてくれません。自分がいた物語から脱して違う世界に行く人物もいますし、「台本があるからその動きをしてるんでしょう(セリフを言ってるんでしょう)」と言ってしまう人もいて、映画を撮る場面では劇中劇もあります。演劇の内と外も自由に行き来されるので、振り回されっぱなし。物語の結末まで翻弄されながら誘導されますが、最後もまた手に確かなものをつかめることはなく。

出演:足立理 石住昭彦 佐藤銀平 渋川清彦 太賀 三浦俊輔 三浦誠己 三上真史 浅野かや 長田奈麻 片山瞳 早織(五十音順)
脚本・演出:岩松了
【発売日】2010/11/20 前売り\4,500/当日\4,800(全席指定・税込み) ベンチ・椅子共通
http://www.morisk.com/plays/umbrella/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2011年02月04日 16:18 | TrackBack (0)