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2011年03月01日

東京デスロック『平成二十三年のシェイクスピア』02/25-27富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ

 東京デスロックの『WALTZ MACBETH』(⇒初演レビュー)と福島県いわき市の高校生が出演する『平成二十二年のシェイクスピア』の2本立て公演です。上演時間は2本で約3時間50分(途中休憩10分を含む)。

 『平成二十二年のシェイクスピア』はキラリ☆ふじみ芸術監督の多田淳之介さんが、いわき総合高校の現役高校生と創作した作品です。土佐有明さんの取材に基づいた考察がとても詳しい上に面白いので、高校教育の中の演劇にご興味のある方はぜひ↓

 ⇒土佐有明「演劇教育の先端で何が起きているのか-いわき総合高校の試み」(前編)・(後編
 ⇒JNSK OFFICIAL DIARY「卒業おめでとう!
 ⇒東京デスロック『平成二十三年のシェイクスピア』ツイッターの感想まとめ
 ⇒CoRich舞台芸術!『平成二十三年のシェイクスピア

 高校生が出ている『平成二十二年のシェイクスピア』の方から始まりました。生身の自分自身として舞台に居ることがとても上手な高校生たち。英国の古典文学が、現役高校生の生の感情とぴったり重なった、ある場面で落涙。

 『WALTZ MACBETH』は・・・苦手でした。体はいっぱい動くけれど感情はあまり動かないというか。いや、動かないわけじゃないけど揺れの種類が少なくて、振れ幅のバラエティーも、体ほどはなくて。あと、イス取りゲームの応酬に私の心は動かないんですよね。でも最後の最後、「いったいこのまま繰り返してどうなるの?」と思わせた先に見えてきたものがあって、そこがとても良かったです。

 ただのマイブームなのか観劇生活10年(以上)でぐるりと回って還ってきたのか、年を取って保守的になっただけなのかは定かではありませんが、私はストレート・プレイが好きだなぁと最近再び感じ入っております。戯曲の登場人物を演じる俳優の感情が、小刻みに、複雑に変化し続けるようなものが好きです。

 ここからネタバレします。

 高校生版「ロミオとジュリエット」が面白かったです。霊廟で眠るジュリエットを、ロミオは死んだものと勘違い。ソースを毒に見立て、ロミオはその毒をいっぱいかけた天ぷらをもぐもぐほうばります。「ピクニックに行きたいね」って話してたものね~。ミラーボールがくるくる輝くのも良かった。

 『平成二十二年の~』の最後には、出演者らの高校生活を映した写真が舞台奥の大きなスクリーンに映し出されました。『いわきのあゆみ』の稽古風景や野田秀樹さんと一緒の集合写真もあって、高校時代の思い出の写真集っていうのかな。ん~、もともと“いわき総合高校で演劇を専攻した8人の男女の演劇”ということに焦点を当てた作品だから、それはそれで卒業公演としてアリなのでしょうけど、私は興ざめしちゃいました。いわきの高校生が「ロミオとジュリエット」を自分たちの気持ちのままで表現しきったことで、もう十分以上に、彼らだけの、彼らにしかできない演劇でしたから。最後はあまり拍手はできなかった。そんなに心の広い人間じゃないのね、私。
 「10年後の私」を演じてみる場面で、女性が2人も「シングルマザー」になっていました。時代を映す、とか言ってる場合じゃないですよね。シングルマザーが幸せになる世界にしないとね。

 『WALTZ MACBETH』の最後は、あれだけ走って同じことを繰り返して、もう動けないよ・・・というぐらい疲労している(ように見せている)のに、また同じイス取りゲームが始まります。それも誰か(羽場睦子)の掛け声がきっかけで、あまり気が進まないんだけど、どうしてもやらずにはいられない・・・といった風に。周囲の人々の顔色を見ながら、不安や戸惑いを表情に浮かべながら、また走り出す俳優たち。これは戦争だなと思いました。

CONTEMPORARY SERIES#3『平成二十三年のシェイクスピア』include『WALTZ MACBETH』『平成二十二年のシェイクスピア』
『平成二十二年のシェイクスピア』出演:村芙侑美 大原奈奈 作山萌 鈴木彩香 鈴木芽生 手塚未那美 山﨑祥子 渡辺貴登 (以上いわき総合高校)
『WALTZ MACBETH』出演:夏目慎也 佐山和泉 佐藤誠 間野律子(以上東京デスロック) 石橋亜希子(青年団) 永井秀樹(青年団) 羽場睦子 山本雅幸(青年団)
脚本:W.シェイクスピア 演出:多田淳之介 照明:岩城保 音響:泉田雄太 舞台美術アドバイザー:濱崎賢二 演出助手:橋本清 宣伝美術:宇野モンド 演出協力:いしいみちこ 谷代克明 制作:服部悦子 企画製作:東京デスロック 主催:東京デスロック 財団法人富士見市施設管理公社
1日1ステージ(2作セット)のみ。25日夜は『WALTZ MACBETH』のみ上演。
【発売日】2011/01/08 一般…前売・予約=4,000円/当日=4,500円 学生・シニア(65歳以上)…前売・予約/当日共=3,000円 高校生以下…前売・予約/当日共=1,000円 ○25日(金)[『WALTZ MACBETH』のみ]は一般…2,500円 学生・シニア…2,000円
http://deathlock.specters.net

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年03月01日 22:15 | TrackBack (0)