井上ひさしさんの劇作家としての本格的なデビュー作『日本人のへそ』を、これまでに同作を2度演出したことのある栗山民也さんが演出されます。小曽根真さんが今回のために音楽を作曲し、舞台上で生演奏されます。
と~~っても楽しかったーーーーーっ!!踊って歌っての音楽劇で前半1時間50分はあっという間。後半はどんでん返しの連続です。スタッフワークにも役者さんにも大満足の約3時間。セリフはかなりエッチですので(笑)、心の準備をして劇場へどうぞ。
井上ひさし追悼号となった公演パンフレット『the 座』(1400円)は保存版だと思います。
⇒CoRich舞台芸術!『日本人のへそ』
≪あらすじ≫ 公式サイトより。
東北岩手から集団就職で
上京した田舎娘は希望に胸膨らませていた。
しかし現実は、希望に膨らむ胸でなく、
彼女のはじけそうな二つのオッパイに、
男達の欲望がふくれてあがる。
職を転々、男を変転と流転続きで、
果てはストリッパーへと転落なのか・・・・、
いやいや、男の玉を手玉にとって、
天下に成り上がる。
その娘の名前は、
――― ヘレン天津。
≪ここまで≫
音楽が、歌が、とにかく楽しいです!小曽根真さんが舞台上で、ある登場人物として演技をしつつ、ピアノを演奏されます。なんて贅沢!振付担当は謝珠栄さん。音楽やストーリーにぴったりの、派手で面白い動きにわくわくします。
出演されている女優さんは5人で、全員がストリッパー役を演じます。ストリッパーの本番用の衣裳を着るので、ドキっとするほど肌を露出されています。みなさんとってもきれい♪
歌と踊りで元気に見せていく場面で、なぜか泣けてきてしまいました。例えばストリップ小屋で働くコメディアンたちや、ストリッパーたちが自分たちの生活について歌うところ。重労働だけれどお給金は少なく、不満をもらしながらも懸命に生きる彼らの姿を、井上さんが大切に言葉にしてくださっているからだと思います。
笹本玲奈さんは可愛らしい丸顔で幼い印象もあったのですが、背が高くてスタイルも抜群なんですね!細くて長い、でも肉付きのいいおみ足、そして豊かな胸に目は釘づけ!歌はもちろんお上手ですし、演技もみずみずしく、鮮やか。ストリッパーとしてのなまめかしいダンスも凄かった。
たかお鷹さんがサイッコーーーーーーに面白かった!どんな役を演じられても可笑しい!
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
吃音症(きつおんしょう)、いわゆる“どもり”の患者が、どもりを矯正するためのプログラムとして演劇を上演します。吃音矯正を専門に研究する教授(辻萬長)の指導のもと、ヘレン天津という名前のストリッパー(笹本玲奈)の半生を、劇中劇として描くのが第一幕。岩手の女学生が上京し、さまざまな職業を転々とした末にストリッパーとなり、やがてやくざの女、政治家の女へとのし上がっていきます。
辻萬長さんが岩手から上野までの駅名を言い続ける場面がありました。本当に全部覚えて言ってるんだと思うと、可笑しいやら悲しいやら、なんとも言えない気持ちになって涙ぐんでしまいました。
「日本のボス」という歌は、音楽も歌詞もとても面白かったです。たとえば「政治家は腹をわって・・・」と、政治家の歌はすべて「腹」にまつわる言葉になっているんですよね。
第二幕では装置も雰囲気も一変し、舞台は教授役を演じていた政治家(辻萬長)の邸宅となります。やくざ役などを演じていた石丸幹二さんが、本物の教授でした。第一幕は、政治家が劇の最中に背中をナイフで刺されて倒れる場面で終わり、第二幕はその犯人を探す推理劇となるのです。
強い右翼思想を持った男性(たかお鷹)が「陸軍はみんなホモ」などというセリフを言います。演技も可笑しかったので爆笑しましたが、ものすごいこと言ってますよね。天皇陛下についても・・・。演劇だから、フィクションだから言えるし、笑いとばせるんですよね。言論の自由を謳歌する演劇だと思います。もちろん皮肉もこめているのでしょうけど。
ヘレンの恋人は教授(石丸幹二)ではなくピアニスト(小曽根真)だった、という衝撃の事実が明るみに出たところまでが、吃音矯正のためのお芝居だったという結末。やはり教授(石丸幹二)以外は全員、吃音症の患者だったのです。さらに最後の演出(装置が舞台奥へとスライドし、黒幕が天井へと上がって劇場の壁が露出する)で、「吃音症の患者たちもまた劇の登場人物だった」という入れ子構造となります。
人間は嘘の中に生きながら、自分もいつも嘘をついている。つまり演技をしているんですよね。シェイクスピアは「全世界は舞台。そして、すべての男も女もその役者にすぎない」という名ゼリフをのこしていますが、このお芝居ではよりポジティブな意味にとらえられました。何もかもが嘘(芝居)なのだから、自分で嘘の中の真実を見つけて、自分から嘘を楽しん生きていきたいなと思います。
井上ひさし追悼ファイナル こまつ座九十三回公演「日本人のへそ」
2011 都民芸術フェスティバル参加公演
≪東京、山形、大阪、市川、知立≫
出演:石丸幹二、笹本玲奈、辻萬長、植本潤、吉村直、古川龍太、久保酎吉、明星真由美、今泉由香、高畑こと美、町田マリー、たかお鷹、山崎一、小曽根真
脚本:井上ひさし 演出:栗山民也 音楽:小曽根真 振付:謝珠栄 美術:妹尾河童 照明:勝柴次朗 音響:山本浩一 衣裳:渡辺園子 ヘアメイク:鎌田直樹 歌唱指導:伊藤和美 満田恵子 宣伝美術:ペーター佐藤 アベキヒロカズ 演出助手:豊田めぐみ 舞台監督:増田裕幸 制作:井上麻矢 瀬川芳一 谷口泰寛 辻瑛美 馬場順子 主催:こまつ座、テレビ朝日 提携:Bunkamura
【休演日】3/15,22【発売日】2011/01/22 S席8,400円 A席6,300円 コクーンシート5,000円 学生割引5,000円(全席指定・消費税込み)*学生割引は、中学、高校、大学、各種専門学校ならびに演劇養成所の皆様を割引いたします。(全席種共通) *A席・コクーンシートはこまつ座・Bunkamuraチケットセンターのみの取り扱いとなります。 *コクーンシートは2階席左右のバルコニー席です。舞台上で見えない部分がございます。ご了承のうえ、ご予約、ご購入ください。 *車椅子でご来場のお客様は、チケットをご購入後お早めにこまつ座(03-3862-5941)までお知らせください。
http://www.komatsuza.co.jp/contents/performance/
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/shosai_11_heso.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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