前川知大さんが作・演出される劇団イキウメの代表作の再々演です。初演、プロデュース公演、再演を数えると、『散歩する侵略者』を観るのは今回が4度目。キャスト、演出ともに刷新され、脚本も改訂されていました。上演時間は約2時間。
じわじわと静かに侵食するように進み、(おそらくあえて)平面的につくられた劇世界。最後は目には見えないものの力によって縦のラインが現れて、突然ぐっと立体化したように感じました。長い暗転の間、絶望するしかない状況で起こった、ひとつの小さな奇跡をかみしめました。
⇒東京新聞『「危機感に現実味を」震災後、演劇の意味自問 台本書き換え 舞台「散歩する侵略者」劇作家 前川知大』
⇒神奈川のプレビュー公演を芸術監督の宮本亜門さんが絶賛。
⇒前川さんは昨年の『プランクトンの踊り場』で鶴屋南北戯曲賞を受賞。
前川さんご自身による小説『散歩する侵略者』↓も販売されています。
⇒CoRich舞台芸術!『散歩する侵略者』
レビューは短めです。
≪あらすじ≫ CoRich舞台芸術!より
地球侵略会議はファミレスで
日本海に面した小さな港町。
大陸に近いこの町には同盟国の大規模な基地がある。
この国にとって戦略的に重要な土地だ。
加瀬真治は、地元の夏祭が終わると性格が一変していた。
今までの記憶を失くし、町の徘徊を始める真治。
夫を介護しなければならなくなった妻の鳴海は、新しい生活に戸惑う。
町に事件が起きる。
それは老婆が息子一家を刺殺した後、自殺するという凄惨なものだった。
同じ頃、海岸線では町の人々が奇妙な光を見る。
そして、真治は鳴海に告白をする…。
≪ここまで≫
灰色、白で統一され、隔たりのない空間。かなりストイックなつくり。
ここからネタバレします。
静かに始まるオープニングが良かった~。
窪田道聡さん(真治)と伊勢佳世さん(鳴海)という若い“夫婦”に合わせてラストが大幅に書き換えられていたようです。とても良かったです。なくてもいいのではと思っていた前までのラストシーンがなくなっていました。
鳴海(人間)から「愛」をもらってしまい、慟哭する真治(宇宙人)。侵略する側だったはずの真治ですが、「それが、今はもう、よくわからないんだ」とうっすら笑みを浮かべてポツリともらします。宇宙人が人間を愛しはじめてしまう、とてもロマンティックな奇跡。鳴海は彼の愛をもう受け取れないだろうし、地球はきっと一瞬で侵略されるだろうけど、「愛」の姿を見た感動は本物でした。長い暗転も良かった。
≪神奈川、東京、大阪、福岡≫
出演:浜田信也、盛隆二、岩本幸子、伊勢佳世、森下創、窪田道聡、大窪人衛、加茂杏子、安井順平
脚本・演出:前川知大 舞台監督:谷澤拓巳 / 美術:土岐研一 / 照明:松本大介 / 音楽:かみむら周平 /音響:鏑木知宏 /衣装:今村あずさ / ヘアメイク:西川直子 / 演出助手:石内エイコ / 演出部:棚瀬巧 /制作:中島隆裕 吉田直美/ 宣伝美術:鈴木成一デザイン室 / 宣伝写真:高橋和海/ 舞台写真:田中亜紀 主催:イキウメ/エッチビイ(東京・大阪・北九州)、神奈川芸術劇場(横浜)、財団法人水戸市芸術振興財団(水戸) 提携:財団法人せたがや文化財団 世田谷パブリックシアター(東京)、北九州芸術劇場(北九州) 後援:世田谷区 TOKYO FM(東京) 運営協力:サンライズプロモーション東京(東京)、サンライズプロモーション大阪(大阪) 提携:財団法人せたがや文化財団 世田谷パブリックシアター 後援:世田谷区 TOKYO FM 運営協力:サンライズプロモーション東京 主催:イキウメ/エッチビイ
【発売日】2011/04/02 一般 前売4,000円 当日4,200円 (全席指定・税込)
http://www.ikiume.jp/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。