詩森ろばさんが作・演出される風琴工房の公演です。出演者は客演の方々ばかりですね。『紅き深爪』は子どもの虐待をテーマにしたある家族の物語。私は京都で一度拝見しています。終演後のトークにも惹かれ、初日に伺いました。
登場人物が抱える問題がそれぞれに深刻で、空気も張りつめています。上演時間は約1時間と短いですが、ちょうど良かったと思えるぐらい密度高い目のお芝居でした。
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≪あらすじ≫ 公式サイトより
舞台は深夜の病室。
もう目覚めないかもしれない眠りをむさぼる一人の女と、
それを看病する娘、睦美。
そこに、睦美の姉である妙子、
その夫、
さらには睦美の夫と娘の知奈がやってくる
一見不毛にも思える4人の会話はやがて
姉妹がかつて女から受けた加虐の記憶へと辿りつく
これは、
誰がなにをしなくとも数日中には止まるはずの
ひとりの女の呼吸をめぐる物語。
≪ここまで≫
病院の個室。舞台下手側には2人掛けソファとテーブル。上手奥にカーテンに隠れた部屋があり、そこに母親が寝るベッドがあります。入院費はかなり高そうですね。
母親の病室には娘たち(葛木英&浅野千鶴)が毎日通い、基本的には妹(浅野千鶴)が母の介護をしています。とはいえ母はずっと眠っていて、どうやらもう目覚めないらしく・・・。
前回より面白かったです。妹の娘(小学生)を同年齢であろう子役が演じているのが良いですね。
ここからネタバレします。
母親による虐待のせいで自分の子供にも虐待をしてしまう妹。病室ではベッドに横たわる母親の体をつねっていました。肌にその後が残らないように、爪を深く切っています。きれいな女の姿のまま死んでいく母親をにくみ、妹は「誕生日に母を殺す」と日記に書いていました。その日記を見つけた妹の夫が、カーテンの裏でひっそりと母親を殺してしまいます。
立派な大人が子供に暴力を振るう図を見せることで、痛々しさ、深刻さが増します。娘を虐待している妹役の浅野千鶴さんは、一見平凡で大人しそうな女性に見えます。でも・・・というところが良かった。目に見えない心の傷が、暴力や怒鳴り声になって出てしまう、そのバランスを細やかに制御されていたと思います。
姉とその夫(佐野功)のラブシーンは至近距離で観るのもあって、かなり刺激的。でも官能的でなかったのが良かったですね。2人の関係は複雑だから、肌で愛情を確認し合うにしても欲望をむさぼるにしても、何やら不自然な、ぎくしゃくしたような空気があるのだと思います。ただ、ほんの少し形式ばった感があったのは残念。
最後にかかった音楽は私の好みではなかったですね。無音で暗転しても良かったのではないかと思いました。
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
出演:松枝佳紀(アロッタファジャイナ 主宰/日本の問題プロデューサー) 谷賢一(DULL-COLORED POP 主宰) 詩森ろば
谷さんが「妹の夫の方が怖いと思った。彼も狂気を抱えている」という意味のことをおっしゃっていて、同感でした。私は下手のサイド席だったので、最後に長ゼリフを言う夫の顔が全く見えなかったのですが、彼を見つめる妻(妹)の顔が見えていたので問題なかったです。
出演:浅野千鶴(味わい堂々) 葛木英(ehon) 園田裕樹(はらぺこペンギン!) 佐野功 大塚あかり(IVY アイビィーカンパニー) 横尾宏美(シアターノーチラス)女:露木友子(24日、26日昼・夜、27日、28日昼、9日夜)/中山有子(25日、29日昼)
脚本・演出:詩森ろば 演出助手:鳥越英士郎(けったマシーン) 当日運営:吉田仁美(クロカミショウネン18) 企画製作:ウィンディハープオフィス
【発売日】2011/04/02 日時・エリア指定 (劇場の構造上見やすさに多少の差がございます。予約の早いお客さまから見やすいお席にご案内いたします。) 一般 2500円 当日 2800円 障碍 1500円
http://windyharp.org/tsume/index.htm
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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