庭劇団ペニノのタニノクロウさんがSPACに初登場。しかも新作野外劇ということで期待最高潮で伺いました。⇒記者発表
老女6人と青年3人による歌って踊ってのパラダイスには、とぼけた笑いが満載!楽しすぎて、これでいいのかしらと不安になるほど(笑)。上演時間は約1時間20分。
タニノクロウさんがツイッターから投稿した舞台写真⇒1、2、3、4、5
⇒CoRich舞台芸術!『エクスターズ』
⇒庭劇団ペニノブログ「官能から遠く離れて?」
≪あらすじ≫ 当日パンフレットより。
ここはどこで、いつなのだろう。森の中にひっそりと佇む、とある施設。
肉色の斑模様に包まれた室内に並ぶのは、どこか懐かしい公園遊具と、ピアノ。
プレイルーム……なのだろうか?やがて朝が来て、住人たちが集いだす。
少女のような愛らしい装いの、六人の老女。
やんちやな少年のような格好をした、三人の青年。
なんでもない、彼女たちの一日が始まる。
やることと云えば……歌うことくらいしかない。
≪ここまで≫
あらすじを読まず、前知識ゼロで拝見。なるべくそうするようにしています。
高い壁に囲まれた部屋。白いネグリジェの老女6人と、なぜか彼女らに奉仕する若い男性3人。彼らは執事?子供用の遊具がならぶ空間で、のんびり音楽を聴いて、テレビを見て、歌を歌って過ごす人々。ここは実社会でないのは確か。天国なのかしら。
高い壁で守られた至福の密室ですが、野外劇場なので常に広く外へ、空へと開かれているのがミソですね。人間だけが集まって、たわいない、でもいとおしい行為が鮮やかに営まれますが、所詮それらは限られた世界の中でのこと。
ここからネタバレします。
つまり老人ホームなんでしょうね。終演後に一緒に観ていた人と話してわかりました(←遅い)。でも知らなくて良かったな~。知ってたら想像が広く飛ばなかった。朝起きて夜寝るまでを描いているようにも見え、人の一生を表しているようにも思えました。
男性3人が協力して、1人がわざわざロッククライミングで壁を登り、何をするのかと思ったら電灯を設置(笑)。あぁ仕事ってそうだよなと思いました。
水飲み場で「The Sound of Silence」をギターとコーラスで演奏する場面に爆笑。
一日の締めくくりはドレスを着てのダンス。3人の執事が見守る中、踊り終えた老女たちは寝室へ(たぶん)。一人残ったのはピアノを弾いていた女性。壁の木の隙間から光が射してきました。やんごとない後光のよう。やがて1枚の板が開いて壁の向こうに広がる闇が見えました。女性は恐れおののくような態度で光を見つめ、逃げるように退場。
言葉が通じる、一緒に歌が歌える、あ・うんの呼吸でいたわりあえる仲間との生活。でもその周囲には人知の及ばない世界が広がっています。「有度」の舞台奥は原始林ですから、未知の闇とはすなわち自然のこと。最後の場面は自然への畏敬の念のあらわれだと思いました。無力な私たちの小さな、小さな世界での絶頂の恍惚は、常に畏れと背中あわせです。『エクスターズ』は野外でしか成立しない作品なのではないでしょうか。
男性3人が歌う「雨」が素晴らしかった。私は「雨があがるようにしずかに死んでいこう」という境地には、まだまだ達しきれない凡人です。
「雨」 詩:八木重吉 作曲:多田武彦
歌われた曲(歌詞カードより):「庭の千草」「ふるさと」「サラスポンダ」「雨」「はるかな友に」「The Sound of Silence」「グッド・ナイト・ベイビー」
≪終演後のアーティスト・トーク≫
出演:タニノクロウ 宮城聰
SPAC「ふじのくに⇔せかい演劇祭2011」6/4(土)~7/3(日)
出演:飯田一期 森準人 山田伊久磨 小谷野桂子 杉浦南美子 鈴木久美子 長澤洋子 星出三貴 前田展子
作・演出:タニノクロウ 舞台監督:三津久 演出助手:郷淳子、森準人、海老原聡、吉野万里雄 美術助手:法龍院悠 美術協力:安部田保彦 照明プランナー:倉本泰史(APS) 照明オペレーター:根本諭(APS) 音響オペレーター:仮屋浩太郎 歌唱指導:望月智代 字幕:コーリー・タービン 制作協力:小野塚央 舞台:山田貴大、竹内舞 音響サポート:青木亮介 衣裳:竹田徹 制作:中尾栄治、伊藤尚子 協力:庭劇団ペニノ 製作:SPAC (財)静岡県舞台芸術センター
一般大人4,000円/大学生・専門学校生2,000円/高校生以下1,000円
http://www.spac.or.jp/11_fujinokuni/extase
記者発表⇒http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2011/0414230505.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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