『血の婚礼』はフェデリコ・ガルシア・ロルカ作の同名戯曲から想を得た、清水邦夫さんの戯曲です。初演は1986年で、蜷川幸雄さんが1999年以来4度目の演出をされます。12年ぶりの上演なんですね。
“大規模修繕劇団”は昨年亡くなった井上ひさしさんが名付けられたそうです(⇒由来)。
水を使うという噂だけ耳に入れて、にしすがも創造舎の元体育館に伺いました。本当に水、水、水!上演時間は約1時間40分。
⇒CoRich舞台芸術!『血の婚礼』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
夏。コインランドリーとビデオショップに囲まれ、点在する自動販売機が白々と灯りをともす路地裏。降りしきる雨の中を鼓笛隊が通り過ぎて行く―。
壊れたトランシーバーで〝どこか〟と交信を続ける【トランシーバー少年/田島優成】は水溜りに倒れこんだ【北の兄/窪塚洋介】と出会い、奇妙な友情を結んでいく。【北の兄】は二年前に【北の女/中嶋朋子】を結婚式場から奪い故郷を捨て上京したのだが、今や二人の愛は冷めてしまっているようだ。コインランドリーの店先。煙草をふかしながら【姉さん/伊藤蘭】が路地の人々をみつめている。その傍らには、腐れ縁の【兄さん/高橋和也】の姿が。ユーモラスでありながら、どこか悲哀のある男女の会話が続く。自殺した妻の葬儀から抜け出してきた【喪服の男/青山達三】を心配して追いかけてくる教え子たち。その騒ぎに路地の住人たちが顔を出したその時、幻の警報が鳴り響き、幻の電車が通過していく・・・。呆然と佇む人々の前を、雨にうたれながら鼓笛隊が通り過ぎた―。兄想いの【北の弟/近藤公園】に引き連れられて、花嫁に逃げられた【ハルキ/丸山智己】や親族たちが訪ねてくる。かつて、親友だった【北の兄】と【ハルキ】。【姉さん】をはじめ、路地の住人たちを巻き込み、三人は再会を果たすのだった。降り続ける雨と突然の停電が、人々の内に潜む野生を目覚めさせ、そして―。
≪ここまで≫
舞台には荒れたレンタルビデオ店、汚れたコインランドリー、歓楽街のネオンたち。立ち入り禁止の黄色いビニールテープが舞台と客席を遮るように×(ばってん)の形に貼られています。
会場が体育館であることを見せた上で、徐々にお芝居の空間になっていくのにわくわくしました。やっぱり蜷川さんの演出はオープニングが凄いですね。
ロルカ作『血の婚礼』(関連レビュー⇒1、2、3)に登場する兄弟と花嫁という三角関係はありましたが、原作とは全く違います。次々と脈絡なく意外なシーンが始まり、意味がわからないままに舞台で起こることを眺めていました。いわゆるアングラ風なので個人的には得意でない展開でしたが、繰り返しあらわれるモチーフや群舞(?)などの断片が積み重なり、ほぼ最後の場面になって、作品全体のイメージというか、湧き立つような感情や意志がドっと押し寄せて来るように感じました。
何らかの大きな力によって去勢された生きる意志や怒りが、どん詰まりの路地で屹立するように復活したような。粗野で乱暴だけど、その熱さがまぶしい、ひとときの夢のようでした。
ここからネタバレします。
雨の降りっぷりの豪快なこと!ず~っと降り続ける中、キャストはわざと濡れに行きます(笑)。わざわざ雨の降る場所で立ちっぱなし。どんどこ濡れながらセリフを言って、袖にはけても出てきたらまた濡れる!役者さん、大変です・・・。
もっと「俺、濡れてるゼ!」アピールとかがあっても良かったんじゃないかな~。喪服の男性(青山達三)の存在の仕方が、コミカルさを狙っているのかどうかが微妙なラインで、くすぐったくて面白かったです。
故郷を捨てた男女を逃がさない過去、乱暴に通り過ぎる少年少女の鼓笛隊、走り去る電車を見つめる人々の列。
雨が止んだ暗闇に光るのはろうそくの炎だけ。そのギャップが鮮やかです。ラストもまた大雨で、筒状の缶(?)に入った炎がいくつも燃えていました。本物の水と火が同時に舞台にあるのが刺激的。
オープニングでハラリと切れたようにはずれた立ち入り禁止のテープが、再び舞台をふさぐように×(ばってん)になりました。雨も火も太鼓も電車もみんな、少年の夢だったのかもしれない。こうやって私たちは「路地の下にもうひとつの路地があるかもしれない」可能性に蓋をして、また味気ない現実に戻っていくのだと思いました。ただ、夢を忘れなければ、すぐに戻ってこられるんですよね。
≪東京、新潟、大阪、福岡≫
出演:窪塚洋介 中嶋朋子 丸山智己 田島優成 近藤公園 青山達三 高橋和也 伊藤蘭 妹尾正文 清家栄一 新川將人 うずめ理衣 松田慎也 寺村耀子 土井睦月子 浦野真介 手打隆盛 周本えりか 西村篤 内田健司 高橋エクレア 浅場万矢 熊澤さえか 齋藤美穂 佐々木美奈 嶋田菜美 高橋永江 内田真莉奈 秋山拓也
脚本:清水邦夫 演出:蜷川幸雄 美術:中越司 音響:井上正弘 照明:服部基 衣裳:小峰リリー ヘアメイク:鎌田直樹 演出補:井上尊晶 舞台監督:明石伸一 技術監督:小林清隆 打楽器監修:貞岡幸男 演奏指導:宮本知聡 企画・製作:Bunkamura
【休演日】6/27 7/4,11,18,25【発売日】2011/04/09 全席指定\8,000(税込) ※客席通路の位置が未定な為、連番でご購入なさってもお席が離れる場合がございますので予めご了承ください。
http://www.bunkamura.co.jp/otherhalls/11_blood/index.html
http://www.bunkamura.co.jp/otherhalls/shosai_11_blood.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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