青年団演出部所属の映画監督である深田晃司さんの新作「歓待」を、映画館で拝見しました。
私事ですがこの5年半ほど、毎月ほぼ5本のペースで邦画(DVD)を拝見しています。映画館公式ページに「日本映画の今年最大の収穫!」とありますが、本当にそうかもしれない・・・。現時点で世界22カ国で上映され、フランスとアメリカで一般公開が決まったそうです。
7月16日(土)から渋谷で再上映が始まりますので、ご興味もたれた方はよかったらぜひ。青年団の役者さんが多数出演されていますので、小劇場ファンの方はそこもお楽しみいただけると思います。
2009年に青年団の若手自主企画として製作された「東京人間喜劇」も上映されます。キャスト全員が青年団劇団員という、深田監督の初の本格長編映画で、アトリエ春風舎で初上映以降、映画館で初めて公開されるそうです。
●「歓待」
上映期間:7/16(土)・7/17(日)・7/19(火)~22(金)
※7月16日(土)19:00の回上映後 前田司郎さんと深田晃司監督のトークあり。
●「東京人間喜劇」
上映期間:7月30日(土)~8月5日(金)
「歓待」は安部公房作『友達』にそっくりで、最初はかなり警戒しました(『友達』苦手なので)。見知らぬ客人が、ある夫婦の質素ながらも幸せな生活をぶち壊していきます。でも『友達』とは全く違ったんです。『友達』よりもはるか先へと、私の意識を進ませてくれる映画でした。
私たちは目先の便利さや個人的安泰を確保するために、姿の見えない弱者を排除して、もしかしたら彼らの命までも奪っているかもしれない。自分自身が自覚なく世界に対して振るっている暴力に気づかされました。
変わらない日常なんて幻想で、現実は常に変化に満ちています。全く未知のモノや人との出会いには恐怖や不安がともなうものです。怖い思いをするよりも膠着した日常にしがみつく方が楽ですよね。でも未知に飛び込むことは、実は人生を刺激的で豊かにするチャンスなのだと感じられました。大波乱の後に夫婦に訪れた静寂が素晴らしかった。
最後に出演者やスタッフのクレジットが流れる中、涙がぼろぼろぼろぼろ・・・終映後にロビーにいらした深田監督とご挨拶させていただいた時も止まらなくて、本当に恥ずかしい客でした。
「東京人間喜劇」は昨日試写を拝見し、約2時間20分という長さを感じませんでした。3編のオムニバスがゆるりとつながった群像劇で、最初は“いい話”で少し物足りなかったものの、最後の「右腕」でドス黒い意地悪さが炸裂(笑)。
私たちは他人のことが全くわかりません。幸も不幸も自分次第とはいえ、やはり現実は厳しいです。自分で自分のことがわからないことも多々ありますから。でも自分を支配する脳でさえ、人間のちょっとした工夫でコントロールできるかもしれないんですよね。最後は希望の持てる未来も見えました。
メインビジュアルはこちら。山本雅幸さんの“あの”瞬間ですね。右腕が写ってていい写真だなー!
医師(志賀廣太郎)が山本さんの耳元でささやいたひとことに爆笑しました。
『歓待』96分
監督・脚本・編集:深田晃司
出演:山内健司 杉野希妃 古舘寛治 ブライアリー・ロング オノエリコ 松田弘子 河村竜也 菅原直樹 齋藤晴香 永井秀樹 足立誠 兵藤公美
http://kantai-hospitalite.com/
『東京人間喜劇』139分
監督・脚本・編集:深田晃司
「白猫」出演:角舘玲奈 根本江理子 河村竜也 古舘寛治 福士史麻 大塚洋 兵藤公美 鄭亜美 村田牧子 畑中友仁 小河原康二 岩下徹(特別出演) 齋藤徹(特別出演)
「写真」出演:荻野友里 木引優子 足立誠 根本江理子 島田曜蔵 鈴木智香子 井上三奈子 山本雅幸 石橋亜希子 端田新菜 高橋智子 たむらみずほ 宇田川千珠子 安倍健太郎 山本裕子 真山俊作(フリー) 立蔵葉子
「右腕」出演:山本雅幸 井上三奈子 志賀廣太郎 足立誠 根本江理子 古舘寛治 秋山建一 石橋亜希子 佐藤誠 大竹直 酒井和哉 村井まどか 天明留理子 山村崇子 小河原康二(声)
企画制作:青年団、アゴラ企画、こまばアゴラ劇場
http://human-comedy-in-tokyo.com/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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