アル☆カンパニーは平田満さんと井上加奈子さんご夫婦の企画プロデュース共同体で、『ゆすり』は2008年初演です。今回も作・演出は青木豪さん。見逃していたので再演はありがたいです。上演時間は約1時間10分。
“ゆすり”(脅して金品を手に入れようとする人)が登場する会話劇。最後がすごく良かったです。大谷亮介さんが語ったのは過去への郷愁、未来への希望、そして予言だったような。つまり詩だったのかな。
昨年春に上演された『罪』(⇒レビュー)が9月に再演されます。SPACE雑遊という小さい空間に適した作品だと思います。お勧めです。
⇒CoRich舞台芸術!『ゆすり』
≪あらすじ≫
突然の来客(平田満)に戸惑いつつ、客室の掃除をする中年の男女(大谷亮介&井上加奈子)。客は昔からの知り合いだと言うが、親しい付き合いは全くないのだ。たどたどしく言葉を交わす内に、過去の記憶が解きほぐされて…。
≪ここまで≫
演技にはぎこちなさ(あえてなのかも?)が見えたものの、次々と新しい情報が飛び出してきて、気が抜けません。果たして嘘をついているのは誰なのか。もしかして舞台上に居る3人のうち、本当は存在しない人がいたりするのかも…?ぐらいに想像する余地もありました。
今の私にも、自分の人生を振り返って思い当たることがありました。きっとまた数年後、数十年後にこのお芝居を観たら、もっと悲しく、もっと嬉しくなるんだろうと思いました。
ここからネタバレします。
恋に落ちた兄(大谷亮介)と妹(井上加奈子)の情事を、向かいのアパートに住んでいた貧乏学生の安東(平田満)が覗いていた。30年後、金に困った安東は、兄の方に金を借りに来た。断られると、「窓から見たあのことを、妹さんご本人に言いますよ」と脅しはじめ…。
安東を追いだし、部屋に残った兄と妹は、かつて愛し合っていたことを思い出し、確かめます。最後の兄のセリフが素晴らしかったです。たしかこんな内容でした。
「すっかり忘れてしまったことも、きっといつか誰かがゆさぶりをかけてきて、思い出すことになる。あぁ、あの時も私は泣いていたんだ、と。それはきっと4月で桜が咲いていて…。」
きっといつか私にも訪れるだろうと思いました。自分がすっかり忘れていたことを、誰かに思い知らされる時が来る。とっさに「思いもよらなかった、予想だにしなかった、なかったことにしたい」と思うかもしれない。でも、できれば、「そのとおりだった、確かに私はそれをした、失敗だったかもしれないけど、その時は本当にそうしたかったのだ」と受け入れて、「では今の私ならどうするのか、どうしたいのか」と、その時の私の気持ちに従いたいものです。若い頃には叶わなかったことが、できるようになるかもしれない(逆もあるかもしれない)。
初演の舞台写真を見ると、再演では装置のデザインが変わっているようですね。家具も含め、古くからあるアパートのイメージがわいて良かったです。
第9回公演
出演:平田満 大谷亮介 井上加奈子
作・演出:青木豪 美術:田中敏江 照明:相良浩司[MGS] 照明操作:長島希和子[MGS] 音響:藤田赤目 音響操作:鈴木三枝子[ステージオフィス] 衣裳:前田文子 演出助手:稲葉賀恵 舞台監督:金安凌平 イラストレーション:東海林さだお 宣伝美術:松吉太郎 宣伝写真:五十嵐和則[WISH] 記録:齋藤耕路[ユニコーン] 制作:有本佳子[プリエール] 津田はつ恵[プリエール] 協力:望月印刷株式会社 助成:芸術文化振興基金 企画・製作・主催:アル☆カンパニー
前売開始=2011年6月14日[火] 料金[税込]=[椅子指定席]:3,800円/ベンチ自由席:3,500円/学生;3,000円(ベンチ席のみ・入場時学生証提示)
http://www.aru-c.com/stage09.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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