大阪を拠点にさまざまな地域で行われているTACT/FEATIVALで上演されている新作で、日本+韓国+スイス共同製作作品です。上演時間は約1時間10分。
原案は韓国人のナム・イヌさん、舞台美術・映像はスイス人のヤン・ベッカーさん、作・演出なとトータルに手掛けるのは日本人の中立公平さん。出演は日本人のまいくまこさんと、韓国人の全リンダさんと、中立さんの3人でした。中立さんはTACT/FEATIVALのプログラムディレクターです。
⇒CoRich舞台芸術!『わたしにさよなら 青春編』
≪あらすじ≫ 劇場サイトより
日本人と韓国人の両親の間に生まれた少女。
2つの異なる文化を持つ家族の問題や、居場所のない周囲の環境から逃げるように
バーチャルなネットの世界にもう一人の自分をつくり、新しい人間関係を築いていく…。
ここは、どこなのだろう? そこはおそらく、私の部屋。
そこはわたしは浮いている。
わたしを取り巻くすべてから、私は浮いている。
世界から、教室から、リビングから。
朝が来るとわたしは学校に行き、日が落ちるころはここへ戻ってくる。
そこには、二つの違う国の言葉を話す私の両親がいて、いつも言い争いをし、時々、母親が殴られている。
私の他には、二匹のハムスターがいて、三羽のひよこが啼いている。
人形に取り囲まれた私の部屋は 私が捨てられないものたちで溢れかえっている。
わたしは泣いている。すべてのいらだちのために。
≪ここまで≫
身体表現や映像などのヴィジュアルで見せていきます。セリフはほぼ無言と言っていいでしょう。映像と照明、演技とダンス、そして生演奏が組み合わさり、じめっとした家族の関係を描きつつもサイバーな空間になっていました。
主人公は日本人の父と韓国人の母との間に生まれたハーフの女子中学生。彼女は学校でいじめられていて、家の中でも安心できる居場所がありません。家族間のコミュニケーションが少なく、語彙が貧弱であることが、強く伝わってきました。無言であるせいもあり、色々考えながら観ることになる作品です。
今の10代をリアルに描こうとすると、インターネットや携帯は欠かせないですよね。親はネットごと、秘密ごと、子供と積極的に関わった方がいいんじゃないかと思いました。
ここからネタバレします。
父はスーツで母はワンピース、娘は制服。全身に漢字やハングルが大きく描かれていて、雄弁で面白い衣裳です。娘だけでなく両親が抱える精神的、社会的問題も説明ゼリフなしに見えるようになっていました。
娘がネット上に自分の居場所を作ろうとし始めるまでが、少々長すぎたように感じました。最初からネット動画に顔を出してしまう時点で、彼女は自分を守る能力が非常に低いことがわかります。その後でアバターに逃げますが、そこで流れていたオリジナル曲が面白かったです。アバター同士が出会って友達になる(「友達になる」ボタンをクリックする)のが痛々しい。
父と母のケンカに割って入った娘は、ただただ、大きな声で叫びます。言葉がないんですよね。自分の気持ちを他人にわかる言葉で説明できない。でも叫ぶことができたのは良かったと思いました。それで両親が今の状況を変える選択ができたから。
≪鳥取、東京、大阪、東京≫TACT/PRODUCT 日本+韓国+スイス共同製作作品
出演 まいくまこ 全リンダ 中立公平
原案:ナム・イヌ 戯作・演出・音楽・演奏:中立公平 舞台美術・映像:ヤン・ベッカー(Yann Becker) 照明:伏屋知加 衣裳:太田雅公 制作協力:華のん企画 主催:あうるすぽっと(公益財団法人としま未来文化財団)、特定非営利活動法人DAEN
【発売日】2011/06/20全席自由○一般:前売:おとな2,000円/こども1,000円○当日:おとな2,500円/こども1,500円○としま未来友の会:おとな1,800円/こども900円
※こどもは4~18歳・高校生まで。(要身分証提示)※としま未来友の会はあうるすぽっとチケットコール&としまみらいチケットセンターのみ前売取扱)
http://www.owlspot.jp/performance/110806.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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