長澤まさみさんの初舞台は本谷有希子さん作・演出の新作です。共演はリリー・フランキーさん他、実力のある個性派キャスト。オーディションで選ばれたアンサンブルは10名で、なんと約1000人の応募があったそうです。
本谷さんは正直な方だな~と今回も思いました。私が受け取ったのは“ド直球の怒り”ですね。ストレートにさらけ出していることが潔いと思います。とはいえ登場人物の心理の変化は複雑で難解。自称“めんどくさい女”な本谷さん、今回はめんどくささ倍増ではないかしら(笑)。上演時間は約2時間10分休憩なし。
パンフレットがとても充実していました。写真もかっこいいですし、インタビューが多くて作品理解の助けになりました。本谷さんの新作は次回もぜひ観たいです(←求めるばかりの観客でごめんなさい。あ、謝るのもウザイのか・笑)。
⇒CoRich舞台芸術!『クレイジーハニー』
≪あらすじ≫
若くして落ち目の女流作家ひろみ結城(長澤まさみ)と、その親友であるゲイの甘田(リリー・フランキー)とのトークショー。ぐだぐだな内容についてくるファンはごく少数。現場にいた編集者の二見(成河)は、この場から新たな企画を立ち上げようとしていた。
≪ここまで≫
本谷さんは小説家でもありますから、長澤さん演じる主人公にご自身を反映したのだろうと考えるのは自然だと思います。それが本当かどうかはわかりませんが(パンフレットのよると違うみたい)、クリエイターの悩み、エゴが赤裸々に、乱暴に明かされていきます。ドギマギするし居心地が悪いし、でも「一体ここからどうするんだ!?」と興味を引かれどおし。
震災以降(今も続いていますが)、クリエイターや批評家、ジャーナリストなどの独自の意見を発信する人に対して、自分の立場を棚に上げて説教したり罵倒したりする人を、インターネット上でよく目にしてきました。この作品ではマスコミや作家などの情報発信・作品発表する側だけでなく、受け手である視聴者・読者ら(=ファン)の野放図な暴力が描かれ、追い詰められてじりじり焼かれるような気持ちと、念願かなって胸のすくような思いとが、自分の中で交ざりました。
長澤まさみさんのスタイルの良さ、可愛らしさはさすがの折り紙つき。美脚!!!でも演技には迫力不足の感あり。人間のマイナス面を爆発させ続けるような役なので、仕方ないと思います。ここまでやっちゃえるのなら、またぜひ舞台で拝見したい女優さんでした。
ここからネタバレします。
祭りは祭りでも祝祭ではない方の祭りでした。直接ぶつかりあって傷つけあう人間の狂乱。醜いんだけど、わくわくしちゃう。ただ、そこに至る方法(ファンと甘田のやりとり)は段取りに見えてしまったな~。
ひろみがの甘田ことを頼ってずっと一緒にいようとするのは自然なことだと思いましたが、甘田がなぜひろみをそこまで支えるのかがわかりませんでした。私には彼の愛情が見つけづらかったです。
最後に両目、両耳、口が不自由になった(自分でそうした)甘田のことを、ひろみが笑い飛ばしたのは衝撃的。他の誰にもわかってもらえない(と本人が思う)つながりってありますよね。
≪東京、石川、福岡、大阪、名古屋≫
出演:長澤まさみ 成河(ソンハ ※チョウソンハ改め) 安藤玉恵 吉本菜穂子 リリー・フランキー 中野麻衣 坂口辰平 太田信吾 札内幸太 池田大 中泰雅 北川麗 鉢嶺杏奈 加藤諒 清水葉月
脚本・演出:本谷有希子 美術:松井るみ 照明:佐藤啓 音楽:渡邊琢磨 音響:藤森直樹 衣裳:澤田知寛 ヘアメイク:二宮ミハル 演出助手:石内詠子 舞台監督:林和宏 宣伝美術:加藤秀幸 宣伝:吉田プロモーション 制作協力:寺本真美 プロデューサー:佐藤玄 田中希世子 製作:山崎浩一 企画・製作:パルコ
¥7,350 U-25チケット¥5,000 ※未就学児の入場不可
http://www.parco-play.com/web/page/information/crazyhoney/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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