にしすがも創造舎の毎夏恒例「子どもに見せたい舞台」も今年で5回目。私は毎回欠かさず通っています(⇒前回レビュー)。小学生以下は無料!中高生(中学生~18歳未満)500円、おとな(18歳以上)1,500円も破格です!夜公演は残席あるとのこと(初日時点)。上演時間は約1時間20分。
今年はモーリス・メーテルリンクの「青い鳥」。今までで一番ストーリーが唐突で、恐ろしくて、哲学的です。でも子供たちは集中してチルチルとミチルの旅に同行していました。大きくなった子供(私)も、この絶望の中で生きるためのメッセージをもらいました。
⇒脚本・演出の倉迫康史さんのブログ「原作の青い鳥が描いているもの」「メーテルリンクと宮沢賢治」「弱者の冒険」「『青い鳥』を終えて思うこと」
⇒CoRich舞台芸術!『子どもに見せたい舞台vol.5「青い鳥」』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
兄妹のチルチルとミチルのもとにある夜、魔法使いのおばあさんが現れて二人に告げます。
「幸せになりたがっている娘のために青い鳥を探してきておくれ」。チルチルがおばあさんからもらった帽子についたダイヤモンドの飾りを回すと現れたのは…!
見えないものが見えるようになり、〈思い出の国〉〈幸福の花園〉〈未来の王国〉とさまざまな国を旅するチルチルとミチル、二人ははたして青い鳥を見つけることができるのでしょうか。そして青い鳥の正体とは。少年少女の幸せをめぐる幻想的な旅が始まります!
≪ここまで≫
いつもと違って横幅が広い美術でした。元体育館を縦に長く使っています。役者さんはパーカッションの生演奏もしますので、衣裳を何度も着替えてフル回転。実在しない(とされる)生き物の凝った衣裳が楽しい!人間ではない生き物(妖精など)の演技に迫力があってイイ!猫(井上貴子)が無言で踊る場面が怖くてかっこ良かったな~。そう、恐怖が大事ですよね。
初日ということもあり、転換に手間取ったり役者さんの演技が硬かったところもありましたが、親子向けの破格の舞台として不満なしです。登場人物が子供たちに話しかけることが多かったですが、それも今後こなれていくことと思います。
3月11日以降、作り手も観客も、誰もが変化せざるを得なかったと思います(今も続いていますが)。その変化をそのまま引きうけて、今伝えたいことを丸ごと『青い鳥』に載せた作品だと思います。
チラシがすっごく可愛いい~~~~!正面↓
開いた内側↓
開いた外側↓
ここからネタバレします。
幼い兄妹がなぜか魔女の娘のために青い鳥を獲りに行く決心したり、いきなり「思い出の国」に到着していたり。物語の流れに自然な脈絡は見つけられません。いきなり旅の終わりが告げられて「与えられた時間は1年間だったのね」なんて、唐突だし、ひどい!(笑) でもそれが私たちの現実なんですよね。
過去(思い出)に現在の幸せはないし、食欲・物欲を追求した果てにも幸せは来ない。誰か(ナイチンゲール)を犠牲にした上の幸せは成り立たない。暗闇の森は悪だけど、太陽の光が射せば善になるのにも納得です(人間視点ですが)。
「未来の王国」はこれから生まれる赤ん坊が待機する場所。すなわち青い光が当てられた客席の観客が、未来への明るい希望を託された赤ん坊であり、青い鳥でした。赤ん坊はいっせいに地球へと生まれに行き、影絵の地球は青く染まります。でも徐々に真っ赤に塗りかえられていきました。赤ん坊(=私たち)は生まれた瞬間に「未来の王国」での記憶を失い、地上で罪を犯し続けるからでしょう。現に地球は私たちのせいで汚染されていますよね。
でもチルチルの頭には青い帽子がありました。この帽子がつまり青い鳥であり、未来への希望、すなわち誰か(何か)の為に役に立ちたい気持ちなのだと私は思います。最初に魔女から青い帽子をもらった時点、つまりチルチルが魔女の娘のために青い鳥を探すと言った時に、彼は青い鳥を手に入れていたのです。
私事ですが、いま東京で暮らしていて、インターネットから飛び込んでくるニュースに毎日ひどくがっかりさせられ、情けなさ過ぎて泣くパワーもなく、常に恐怖とともにあるので落ち込むことをやめる踏ん切りもつきません。「それでも未来への希望を持って生きる」と決めて、少しでも明るい気持ちを自分から発信し、行動に移し続けること。それしかないのだと、言っていただけたように思います。
魔女の娘のために危険に飛び込んだチルチルの気持ちこそが、私たちの希望です。旅(夢)から帰ってきた時には、チルチルの頭から帽子は消えていましたが、チルチルとミチルが近所の老婆(=最初に登場した魔女)の娘とともに鳥を探しに出発した最後の場面で、彼ら自身が青い鳥になっていました。
子どもに見せたい舞台vol.5
【出演】魔女・かしわの裁判官:村上哲也 夜の女王:三橋麻子 光:平佐喜子 ミチル(妹):渡辺麻依 演奏:金子由菜 演奏:名倉歩美(以上 Ort-d.d) 猫のチレット:井上貴子(双数姉妹) 犬のチロー:加藤幸夫 チルチル(兄):佐藤円
原作:モーリス・メーテルリンク 脚本・演出:倉迫康史 音楽監督:棚川寛子 美術:伊藤雅子 衣装:竹内陽子 照明:佐々木真喜子(ファクター) 音響:相川晶(サウンドウィーズ) メイク:レサンクサンス 影絵指導:川村亘平斎 舞台監督:弘光哲也 制作:坂田厚子 制作アシスタント:飯塚なな子 プロデューサー:蓮池奈緒子 宣伝美術:FLATROOM イラスト:末延素 助成:文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業) 共催:シアターカンパニーOrt-d.d 制作:NPO法人アートネットワーク・ジャパン
【休演日】8/16【発売日】2011/07/09 子ども(小学生以下):無料 中高生(中学生~18歳未満):500円 おとな(18歳以上):1,500円
http://sozosha.anj.or.jp/natsumatsuri/2011top/program/thebluebird
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。