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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2011年09月07日

座・高円寺『ふたごの星』09/02-17座・高円寺1

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パンフレット

 座・高円寺の芸術監督である佐藤信さんが、宮沢賢治作『双子の星』(⇒青空文庫)を脚本・演出した児童向け舞台の新作です。上演時間は約1時間。

 座・高円寺は杉並区の劇場で、児童向けの企画がとても充実しています。『ふたごの星』の次に上演される『旅とあいつとお姫さま』(⇒2009年レビュー)は毎年再演されており、多地域公演も行われている人気演目です。観たことのない方はぜひ!

 両公演とも貸切のステージが多いので一般客が観られる回がすごく少ないんです。ご興味のある方はスケジュールをチェックしてみてくださいね。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ふたごの星

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 天の川の西の岸、水晶でできたちいさなお宮に、
 チュンセ童子とポウセ童子というふたごのお星さまが住んでいます。
 毎晩お宮の前に座って、
 一晩中、星めぐりの歌にあわせて笛を吹くのがふたりの役目。
 ある朝、役目を終えた二人が、空の泉に遊びに行くと、
 大烏が泉の水を飲みに来ました。
 そこへ乱暴者の蠍もやってきて……
 ≪ここまで≫

 オリオン座、みずがめ座などの星座のキャラクターの姿をした黒い板(厚紙?)が多数、天井から吊り下げられています。下手にある白いスクリーンには動画が映写され、上手には音響オペレーター(?)などのスタッフさんが待機しています。時には役者さんも待機します。
 裏方も含めて劇場のすべてを露出する意図があるようです。ステージ中央に白い半円のシートが敷かれ、その周囲にはランダムに空の瓶が多数置かれています。

 絵本の挿絵が次々と出てくるように、全体が平面のつらなりで構成されているように思いました。はっきりと分かれたパーツ(スクリーン、舞台中央、スタッフブース)が俳優の演技と歌、生演奏によって一体化し、奥行きや深み、高みがプラスされていく試みなのではないかと想像。アイデアは面白いですが成功していたとは言いがたく、残念ながら1時間を長く感じました。劇中歌の挿入で流れが途切れちゃうんですよね。役者さんは観客との関わり方がまだこなれていない様子。

 4人の役者さんは自分の役のセリフを役として発する以外に、観客に向かって「そしてサソリは~~しました」といった説明ゼリフも語ります。そこに歌も演奏も加わりますから、舞台上での役割がめまぐるしく変わるのでしょう。演技の難易度は高いと思います。

 どうしても『旅と…』と比較せざるを得ないので辛口になっちゃいました。きっと同劇場の今後のレパートリーになるんですよね。まだ開幕したばかりですので、これから密度も精度も高くなっていくと思います。

 ここからネタバレします。

 0と1の二進法の映像をバックに、携帯電話で会話する場面から開幕。唐突だけど現実と童話(夢)が直結する感覚が良かったです。

 チュンセ童子とポウセ童子の両方を演じるのは紅一点の女優さん(山本称子、服部容子のダブルキャスト)。ひたむきな存在感が素敵。青い衣装に青いウィッグがいいな~。
 男性3人は多数の役を演じます。楽器が演奏できて歌も歌える人が選ばれたんでしょうね。演じるのは人間ではないものばかりなので、もっと「人間でないもの」になって欲しかったな。ケレンも気迫もまだまだ上を目指せるのではと思いました。でも三人三様の個性がわかってきた終盤の頃には、どなたも魅力的だと感じられました。

 赤い彗星にだまされた2人の童子が、空から海へと落ちていくのはスリリング。恐ろしい展開に興味がぐっとわいたところで、ギターのイントロからのんびりと童子役のソロ曲になり、流れが止まってしまいました。「はい、今から歌いますよ~」という準備を待ってから歌が始まるのは・・・かっこ悪いです。そこだけでも変われば体感時間は短くなるんじゃないかしら(素人考えですが)。

 宮沢賢治作詞・作曲の「星のめぐりの歌」の歌詞をプログラムに載せてくれているし、「うたってみましょう」とも書かれているのですが、リズム(と編曲?)が難しすぎて歌えず・・・『きらめく星座』で聴いた時はもっと簡単な歌だと思ってたんですが、実際はそうじゃないのかな。
 海のヒトデと空の星が会話するファンタジーが好き。星の形の照明も可愛かったです。

秋の劇場[演劇][あしたの劇場]
出演:久保恒雄(彗星など)、重盛次郎(さそりなど)、北川響(大ガラスなど)、山本称子※、服部容子※ ※劇場創造アカデミー1期生。公演日により、出演が替わります。⇒私が拝見したのはおそらく服部容子さんかと。
原作:宮沢賢治 脚本・演出:佐藤信 美術:tupera tupera 音楽:KONTA 照明:齋藤茂男 音響:島猛 衣装:STORE 舞台監督:津田光正後援:杉並区 杉並区教育委員会 杉並区文化協会 企画・製作:座・高円寺/NPO法人劇場創造ネットワーク
チケット発売日 2011年07月01日(金) 全席自由  大人(18歳以上) 3,000円(税込) 子ども 2,000円(税込) 未就学児 500円(税込) 「なみちけ」ご使用になれます。
※星めぐりセット券(『ふたごの星』と『旅とあいつとお姫さま』2作品をご覧いただけます。前売りのみ、劇場チケットボックス窓口のみ取扱い)大人(18歳以上) 4,000円 子ども 3,000円 未就学児 500円 
※購入時に「世界をみよう!」のチケット半券をご持参いただければ、半券1枚でお一人様1ステージ分の料金から500円を割引きします(劇場チケットボックス窓口のみ取扱い)
※すぎなみ子育て応援券がご利用になれます。
http://za-koenji.jp/detail/index.php?id=488

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年09月07日 16:23 | TrackBack (0)