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REVIEW

2011年10月08日

NPO法人エイブル・アート・ジャパン『R&J』10/09-10彩の国さいたま芸術劇場小ホール

 英国のグレイアイ・シアター・カンパニー(障害のある人たちによるプロ劇団)の芸術監督をつとめるジェニー・シーレイさんが、オーディション(⇒告知エントリー)により322名の応募者から選ばれた8名の日本の俳優たちと『ロミオとジュリエット』を創作します。⇒ジェニーさんのワークショップのレポート(2006年)

 本番は明日とあさっての各1ステージずつです。私はどうしても本番に伺えないので、関係者のご厚意により1日前のゲネプロ(本番同様に行うリハーサル)を拝見させていただきました。

 ジェニーさんならではの演出手法による、スタイリッシュなロミジュリでした。物語の全貌がわかる本格上演です。疾走する、透き通るような純愛に落涙止まらず。一般2000円は安すぎです。上演時間は1時間50分ぐらいかと。曖昧です、すみません。※前売り完売。当日券は数枚出るかどうかだそうです。

 ⇒CoRich舞台芸術!『R&J

 あらすじはコチラでどうぞ。
 以下、演出について少々ネタバレしますが、読んでから観ても問題ないと思います。

 装置は白い天板のテーブルとイスだけ。足や背もたれのパイプ部分の色は黒です(たぶん)。衣裳の色彩も白黒でまとめ、スパイスとして赤が入ります。
 『血の婚礼』でもそうでしたが、障がいのある方とない方が垣根なく俳優として出演しています。舞台上で交わされる言語は声を出して語るセリフの他に手話があり、舞台奥には字幕も出ています。また、セリフは日本語ではなく英語で語られることもあります。

 例えば声で語るロミオと手話で語るジュリエットのカップルのそばには、手話で語るロミオと声で語るジュリエットが居ます。2組のカップルが同時に存在して同じシーンを演じるので、障がいのない観客も耳の聞こえない観客も物語を理解できます。また今回はセリフの字幕も出ていますから、手話を知らない耳の不自由な観客も大丈夫なんですね。

 この演出方法にはバリアフリーな観劇環境を作る以外にも効果があります。カップルが2つ存在することで、ロミオとジュリエットという特定の人物だけでなく、他のカップルにも当てはまる物語だと思えますし、異なる言語(声に出す日本語と手話など)を使っていることで、全人類の物語であるとも受け取れるのです。また、これが重要だと思うのですが、“1組の男女の話”に収まらないようにすることで、観客が単線道路を直進するだけで済むような、一方通行の観劇にならないんですよね。実は劇中劇の構造にもなっているので、階層の違う、色んな種類の演劇(的表現)を同時に味わう構造になっています。時にはわざとストーリーの進行を止める仕掛けもあり、観客は観劇中に冷静な気持ちに戻って思考できるのです。

 『R&J』はこの公演のために集まったメンバーによる、いわゆるプロデュース公演です。初めて会った人同士、しかも異なる言語を使う人たちの集団なのに、なぜこんなに一体感があるのでしょうか。柔らかくて、優しくて、注意の行き届いた、気持ちのいい緊張感でつながった空間でした。ジェニーさんの稽古(ワークショップ)にその秘密があるのだと思います。

 恋は時に粗野で乱暴でみっともない上に、一時の思い込みに過ぎない、とてもはかないものです。でも2人の他人が同時に妄想に囚われて、相手の全てを愛し許し合うのは、幸せな奇跡と言っていいと思います。ロミオ役の若菜大輔さんとジュリエット役の中村ひとみさんが見つめ合うごとに、キスするごとに、涙がボロボロととめどなくこぼれました。※個人的には中央ブロック上手寄りの席がお薦めです。

 ここからネタバレします。

 シェイクスピア講座に集まった人々が先生(金崎敬江)の指導のもと『ロミオとジュリエット』を上演することに。オーディションで配役を決め、手話担当、セリフ担当なども交替しながら、徐々に古典恋愛劇の世界に入り込んでいきます。ゲネプロの最初はさすがに演技が硬かったですね。

 バルコニーの場面ではロミオが3人いたように思います。そうやって3種類のロミオがいたり、乳母とジュリエットがそれぞれ2人ずつ同時に演技をすると、同じ役でも全然違うアプローチがあり、演じる人たちの個性が粒だって見えてきます。そうやって見かけでは“違い”がクローズアップされるのですが、全員が持っている「好きだ!」「悲しい!」といった強い感情は、凝縮され、より激しく、重く、直球で伝わってくるように感じました。そうなってくるともうセリフは耳に入りません。大きなひとかたまりとなった思いが体にぶつかってくるんですから。
 2組の乳母とジュリエットのシーンで特に感じたのは、“2組の場面”ではなく“4人の場面”に見えてきたこと。相手の組み合わせも変わるので、2人芝居の2セットではなく4人による複数の層があるコミュニケーションになっていました。

 ジェニーさんがゲネプロ終了後にチラリと"My beautiful, perfect Romeo !"と評した若菜さん。まさに“美しい、完璧の”、ロミオ♪ はっきりとした語りに感情がブレずにともなう正統派の演技をされます。ルックスも声も美しくって、もう、吸いこまれるように若菜さんに見とれました。手話のジュリエットを演じる中村さんと何度もキスを交わしますが、そのキスがとってもきれいなんです。「ああ、キスってこんなに素敵なんだ」とあらためて愛情表現としてのキスの美しさを再認識。肌と肌が直接触れるラブシーンを観るのは得意な方じゃないのですが、この2人のキスはもっと観たかったですね。
 霊廟の場面で、それまで一度も声を出さなかった中村さんが、声と呼べるほどの音にはならない叫びをあげて、ロミオの遺体を揺さぶりました。恐怖と悲しみで静止したような表情と、コントロールできていない(であろう)、喉からしぼり出される音。その後にジュリエットがナイフで自殺するのは当然だと思えました。

 先生(金崎敬江)と主にマキューシオ役を演じていた男性(奥本真司)との関係が、劇中のラブシーンを経て本物の恋に発展しそうになるエピソードは、私個人としてはコミカルに演出してもいいんじゃないかと思いました。若菜&中村のロミジュリと比べると、どうやって観ていいのかわからないバランスだったんですよね。

出演:大橋ひろえ(乳母・手話) 奥本真司(マキューシオ、ロミオ・手話、他) 金崎敬江(ジュリエット・声、ロレンス新婦、先生) 高橋佑輔(ティボルト、乳母・声、ロミオ・手話、他) 中村ひとみ(ジュリエット・手話) 野澤健(ベンヴォーリオ、キャピュレット、他) 山野茉璃乃(キャピュレット夫人、他) 若菜大輔(ロミオ、他) 米内山陽子(ロレンス神父・手話、他 所属:トリコ劇場) ジェニ・ドレイパー(乳母、召使、バルサザー、他)
脚本:W.シェイクスピア 演出:ジェニー・シーレイ  舞台美術:杉山至+鴉屋 衣装:川口知美(COSTUME80+) 衣装アシスタント:千葉朋栄 照明:岩品武顕(公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団) 音響:山海隆弘(公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団) 舞台監督:平井徹(公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団) 演出助手:倉品淳子(山の手事情社) フライヤーデザイン:京(kyo.designworks) コーディネーター:吉野さつき 稽古通訳:山田規古 日本手話コーディネーター:米内山陽子(トリコ劇場) イギリス手話通訳:ジェニ・ドレイパー 制作助手:今井由希 宮本晶子  主催:厚生労働省、埼玉県、さいたま市 共催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団 後援:内閣府、文化庁、(財)日本障害者リハビリテーション協会、(社福)全国社会福祉協議会、(社福)日本身体障害者団体連合会、(社福)日本盲人会連合、(財)全日本ろうあ連盟、(社福)全日本手をつなぐ育成会、(財)日本知的障害者福祉協会、(公社)全国精神保健福祉会連合会、(財)毎日新聞社会事業団、(社福)朝日新聞厚生文化事業団、(社福)読売光と愛の事業団、(社福)産経新聞厚生文化事業団、(株)日本経済新聞社、(社福)中日新聞社会事業団、(社福)NHK厚生文化事業団、(社)共同通信社、(株)時事通信社、(株)毎日新聞社、(株)読売新聞社、(株)朝日新聞社、(株)産業経済新聞社、東京新聞、日本放送協会さいたま放送局、(株)埼玉新聞社、(株)テレビ埼玉、FM NACK5 協賛:埼玉音楽文化協会((社)埼玉県経営者協会)、埼玉県生命保険協会、(株)埼玉りそな銀行、(株)武蔵野銀行、埼玉縣信用金庫 企画製作:NPO法人エイブル・アート・ジャパン 運営:第11回全国障害者芸術・文化祭埼玉大会実行委員会
全席自由 一般=2,000円 割引=1,500円 ※ユース(25歳以下)、シニア(65歳以上)、障害のある 方及び介助の方(1名)が割引の対象となります。※障害のある方は障害者手帳を、ユース、シニアの方は年齢を確認できるものをご持参ください。受付時に確認させていただく場合があります。※車いすでご来場のお客様は、チケット購入時にお申し出ください。インターネットで購入された方は劇場チケットセンター(TEL:0570-064-939)まで事前にご連絡ください。
http://randj.jimdo.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年10月08日 22:02 | TrackBack (0)