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2011年01月08日

三条会『冬物語』01/05-09ザ・スズナリ

 三条会は関美能留さんが構成、演出を手掛ける千葉県の劇団です。シェイクスピアの『冬物語』をいつもながらの豪快で鮮やかな演出で1時間40分に。

 『冬物語』はこれまでに舞台で2度観たことがありますが、新たな切り口で再発見できました。示唆に富んだ、成熟した大人の演劇人による娯楽演劇でした。役者さんの身体能力や演技の技術も高く、何度も笑ったり涙ぐんだりして、心が満たされる観劇になりました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『冬物語

 『冬物語』のあらすじなどはこちらでどうぞ。

 いつもながら選曲が奇抜で面白すぎです(笑)。失笑しながらも「あ、意外にいい曲♪」なんて思いなおしたり。自分の中で解釈が二転三転します。曲終わりに合わせて演技もキリのいいところで止まるのも三条会ならでは。聴いたことのある名曲が次々と流れ、それに役者さんのセリフと動きが合わさっているのは、オペラのようだと感じました。この気づきでかなりすっきりしました。

 ここからネタバレします。

 教室のイスと机に学生服の人々。最初はリオンティーズ(榊原毅)とその息子(中島愛子)だけがボーダーシャツに短いズボンというカジュアルルック。これは彼らが“子供(ガキんちょ)”だってことなんでしょうね。チェッカーズ「ギザギザハートの子守唄」、アンジェラ・アキ「手紙」などから“15歳”ということがわかります。
 誰の言葉にも耳をかさず一方的に持論をわめき続けるリオンティーズは、某知事に重なりました。舞台が教室なので、学校内で苦しむ教師と生徒というイメージも。子供がわがままの限りを尽くして悪態をつき、暴言を吐き、やがて大罪に見あった厳しい罰を受け、とうとう改心するという流れから、先日観た『時計じかけのオレンジ』を思い出しました。

 冒頭のカミロー(永栄正顕)、ポーリーナ(大川潤子)、アンティゴナス(佐々木透)の3人組は、最後の三角関係を表していたんですね!アンティゴナス(佐々木透)とマミリアス(中島愛子)が死者同士で話すのも良かった。犬(関美能留)に爆笑。死神(?)だったり、俯瞰する視点だったり。

"The Winter's Tale" by W. Shakespeare
出演:大川潤子 榊原毅 立崎真紀子 橋口久男 渡部友一郎 近藤佑子 中島愛子 永栄正顕 佐々木透(リクウズルーム
原作:W・シェイクスピア 構成・演出:関美能留 美術:石原敬 照明:岩城保
◇一般:3,500円  ※年内割引:一般3,000円(12/31まで)◇学生:2,000円
http://homepage2.nifty.com/sanjokai/02.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 23:02 | TrackBack

カンパニーデラシネラ『異邦人』10/07-13シアタートラム

 パントマイマー、振付家、演出家の小野寺修二さん率いるカンパニーデラシネラ。新作『異邦人』が高知で創作され、東京にやってきました。

 千秋楽にすべりこみ、めっちゃくちゃ楽しくって、感動して、早く観に行ってメルマガ号外を出せば良かった…としきりに後悔した帰り道でした。再演希望!またパルコ劇場でやったりしてくれないかな!!

 ⇒CoRich舞台芸術!『異邦人

 オープニング。下手手前に一人の男性(森川弘和)。手を動かした時点で身震いしました・・・めっちゃくちゃかっこいい!!鍛えられた体で見せる選び抜いた動作です。この瞬間に「あぁ、観に来て良かった・・・♪」としみじみ。

 うだるような暑さの中の、コミカルでちょっと怖い白昼夢でした。身体表現だけでなくセリフも多く、老若男女が楽しめるパフォーマンスだったと思います。
 動きはもちろん、装置、照明、音響、衣裳、ヘアメイク、小道具などのスタッフワークにも大満足。舞台装置に組み込まれた盛りだくさんの仕掛けは贅沢なイリュージョンでもあり、『異邦人』の世界そのものをあらわす演出効果にもなっていました。

 小説『異邦人』はずっと昔に読んで「全然意味がわからなかった」という記憶しかなかったんですが(汗)、この舞台を観て、ああこれがあの、カミュの世界だったのだと、ものすごく気持ちよく腑に落ちました(←勝手ですが)。
 風景が絵画になったり、小説が映画になったり、漫画が舞台になったり。ある作品が他の表現方法に変換(翻訳?)される時は、必然的に大きな飛躍をすることになりますが、それでももとの作品の核の部分は変わらず、もしかすると、一層その作品らしいものが生まれることがありますよね。カンパニーデラシネラ『異邦人』はまさにそれだったと思います。

 検察およびインタビュアーなどを演じられた藤田桃子さん。かーわーいいーーーーーっ!!こんな声をしてらしたんだなーと、藤田さんが言葉を発する度に味わいました。オレンジがかった茶髪がマッシュルーム型にまるまっていて、それも可愛い!

≪高知、東京≫
出演: 片桐はいり  田村一行(大駱駝艦)、藤田桃子、森川弘和、菅彩夏、手代木花野、小野寺修二
原作:アルベール・カミュ/著 窪田啓作/訳『異邦人』(新潮文庫刊) 演出:小野寺修二 テキスト協力:小里清 照明:磯野眞也(アイズ) 音響:田中裕一(サウンドウエッジ) 美術:杉山至+鴉屋 小道具:高庄優子 衣装:堂本教子 舞台監督:矢島健
チケット料金:全席指定 一般前売 4,000円 当日 4,500円 学生前売 3,500円(ハイウッドにて前売のみ) 世田谷区民 3,900円(劇場チケットセンターにて前売のみ) 劇場友の会 3,800円(前売のみ)[お問合せ] ハイウッド TEL 03-3320-7217
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2010/10/post_199.html
http://www.onoderan.jp/website/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 19:25 | TrackBack