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しのぶの演劇レビュー
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2011年01月26日

劇団青年座『クラウド9(ナイン)』01/25-30青年座劇場

 英国の劇作家キャリル・チャーチルさん(現在72歳)の戯曲に興味があり、観に行きました。⇒過去レビュー⇒ 『クラウド9』の初演は1978年。俳優とのワークショップを経て書かれたものだそうです(パンフレットより)。

 開演前にアナウンスがあったとおり上演時間は約2時間45分(途中休憩15分を含む)。長かったですが、前半と後半が様変わりし、なかなか先が読めない刺激的なお話で、とても面白かったです。性描写が赤裸々ですので心の準備はしていった方がいいかも。

 ⇒CoRich舞台芸術!『クラウド9

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 cloud nine (クラウド9) アメリカ合衆国の気象用語。
 雲の分類の中で、「cloud9」とは真夏の青空に地上9000mから12000mの高さに浮かぶ積乱雲、 入道雲を表し、その高さから気分が『ハイ』の状態。幸福感に満ちた高揚した気分を言う。つまり19世紀だろうが現代だろうが、男だろうが女だろうが、大人だろうが子供だろうが、白人だろうが黒人だろうが・・・そんな事はどうでもいい。
 そこに個として存在する意味。本当の幸せを問いかけたキャリル・チャーチルの衝撃作。
 ≪ここまで≫

 前半はヴィクトリア朝のイギリス領アフリカ。完全な男尊女卑の価値観で人種差別も当然の世の中です。ぞっとしますが、これが当時のリアルだったんですよね。後半はおよそ100年後の現代のロンドン。男女ともに同性愛者がカミングアウトできるようになり、離婚も増えて家族の形態もさまざまになっています。

 男を女が演じ、その逆もあり、登場人物の年齢と役者さんの年齢もバラバラです。あからさまな違いをつきつけたまま物語が進むので、性差や世代間差、時代の変化などをはっきりと意識しながら観られました。
 性描写が「え・・・?」と戸惑うほど赤裸々で、見苦しいと感じる場面もありました。でも今も昔もこれからも人間とセックスは切り離せないですよね。人間が何かに気づいて変わる瞬間が、肉体と精神の両方を含んだ形で描かれていたことに説得力があると思いましたし、感動もおぼえました。前半と後半で時代ががらりと変わっている、でも登場人物が一部重なっているのがポイントです。

 白黒のモノトーンでまとまったシンプルな四角い空間を、照明で染めます。わかりやすかったけど、かっこ良くはなかったですね。壁や柱の素材に紙を使っているのは何らかの意図があるのかもしれませんが、衣裳も含め少し貧相な印象。
 演出は、演技も含め全体的に大衆向けコメディーのようなムードを作っていたように思います。私の好みじゃなかったですね。下ネタが下品に見えたのが残念。でも前半と後半がつながっていく終盤には、下ネタが不可欠だと思えました。

 前半で淑女ベティ、後半はベティの息子エドワードを演じた宇宙(たかおき)さんは、柔らかい存在感でキュートでした。前半でエドワード、後半でベティを演じた小暮智美さんは、独白が良かったです。前半で家庭教師と未亡人、後半でレズビアンのリンを演じられた勝島乙江さんはきれいな方ですね~。
 前半で使用人、後半でゲイのジェリーを演じられた南谷朝子さんはさすがの迫力。特に後半がかっこ良かったです。

 ※この公演は日本劇団協議会が主催する「次世代を担う演劇人育成公演12」です。育成対象者は安藤瞳さん、勝島乙江さん、小暮智美さん、宇宙さん。

 ここからネタバレします。いずれ加筆できたらしたいです。

"Cloud 9" by Caryl Churchil
出演:浅地直樹 宇宙(たかおき) 小暮智美 安藤瞳 南谷朝子 山賀教弘 勝島乙江
脚本=キャリル・チャーチル 翻訳=松岡和子 演出=伊藤大 装置=伊藤雅子 照明=宮野和夫 音響=堀江潤 衣裳=出川淳子 劇中歌作曲=高崎真介 舞台監督=今村智宏 宣伝美術=早田二郎 制作=青年座 平成22年度文化庁芸術団体人材育成支援事業 主催:(社)日本劇団協議会 次世代を担う演劇人育成公演12
【発売日】2010/11/16 一般:4000円 学生:3500円
http://seinenza.com/performance/gekidankyo/110125.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 23:52 | TrackBack

演劇集団砂地『リチャードⅡ』01/14-26 SPACE雑遊

 船岩祐太さんが構成・演出を手掛ける演劇集団砂地は、公演ごとに出演者を集めるプロデュース形式の団体です。古典原作を現代劇へとアレンジされます。

 シェイクスピア作『リチャード二世』をもとに、現代日本の政治とマスコミ、そして物言わぬ民衆という構図を堂々と見せてくださいました。上演時間は約2時間。

 ⇒CoRich舞台芸術!『リチャードⅡ
 レビューは記録のみ。

 ≪作品解説≫ 公式サイトより
 シェイクスピア作「リチャード二世」の、戯曲の真髄はそのままに、現代人が演じる・求める「指導者」の存在を、20代の演出・船岩祐太が構成・演出してお届けする新しいシェイクスピア劇です。
 リチャード二世を知らなくても、政治や世の中の出来事に興味がなくても、指導者の持つ「熱」に触れることのできる、密度の高い、濃い時間をお送り致します。
 ≪ここまで≫

出演:稲葉能敬(劇団桟敷童子) 中村伝 尾崎宇内 藤波瞬平 渡邊亮 岡田さやか 奥山滋樹 福島崇之(こゆび侍) 小瀧万梨子(青年団) 守美樹(T1 project)
原作:W・シェイクスピア作「リチャード二世」(訳:小田島雄志 白水社刊) 構成・演出:船岩祐太 演出助手:河崎一公 演出補:山下由宇 美術:倉蔵 音響:杉山碧(La Sens) 照明:松本大介(enjin-light) 舞台監督:法龍院悠 宣伝写真:コンドウダイスケ 制作:始点~Start Point~ 制作助手:田口遥佳 巣山孝幸 プロデューサー:小池陽子 協力:太田篤哉 池林房
【休演日】2011年1月19日【発売日】2010/12/05 前売3,500円、ペア6,000円、学生3,000円、当日3,800円 オープニング割引あり(14~18日は前売・当日が300円引き)
http://www.sunachi.net


※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 17:31 | TrackBack

【オーディション】SPAC「宮城聰演出・野田秀樹潤色『真夏の夜の夢』出演者オーディション」※3/6〆切(郵送のみ)

 宮城聰さんが芸術総監督をつとめるSPAC・静岡県舞台芸術センターが、今年6月に上演する『真夏の夜の夢』(演出:宮城聰 潤色:野田秀樹)の出演者を募集しています。

 『真夏の夜の夢』は「ふじのくに⇄せかい演劇祭」において2日間上演される演目で、お稽古は静岡で行われます。公演会場は静岡芸術劇場。

 「Shizuoka春の芸術祭」が「ふじのくに⇄せかい演劇祭」となったんですね。楽しみ!

●SPAC・静岡県舞台芸術センター『真夏の夜の夢』
 原作:W・シェイクスピア 演出:宮城聰 潤色:野田秀樹
 6/4(土)~5(日)@静岡芸術劇場
 オーディション開催日:①3月21日(月・祝)/②3月27日(日)のどちらかを選択。
 応募〆切:3月6日(日) ※郵送必着
 ⇒オーディション情報公式ページ

■宮城聰新演出作品『真夏の夜の夢』出演者オーディション ※公式サイトより
 演出:SPAC芸術総監督 宮城聰
 潤色:野田秀樹
  (原作 W・シェイクスピア、小田島雄志訳『夏の夜の夢』より)

◆公演日 2011年6月4日(土)、6月5日(日) 静岡芸術劇場
 「ふじのくに⇄せかい演劇祭」上演作品(Shizuoka春の芸術祭改め)

◆オーディション開催日  ①3月21日(月・祝) ②3月27日(日) 

※どちらかの日程でご参加ください。


◆オーディション会場:静岡芸術劇場リハーサル室(予定)

◆募集人数:男女若干名

◆応募資格:18歳以上の方。国籍不問。

4月1日から公演までのすべての稽古に参加できる方。

稽古時間=連日11:00~22:00 

稽古場所=静岡芸術劇場または静岡県舞台芸術公園内

*週1日程度の稽古オフがあります。

◆応募方法:市販の履歴書に必要事項をご記入の上、返信用封筒を添えて、

 郵送または持参にてお申し込みください。

 ※履歴書にはオーディション参加可能日(上記開催日の①か②)を明記してください。

 ※返信用封筒には80円切手を貼り、宛名をお書きください。

◆応募締切:3月6日(日) <必着>

◆お申込み・お問合せ:

SPAC – (財)静岡県舞台芸術センター

『真夏の夜の夢』出演者オーディション 係

 〒422-8005 静岡市駿河区池田79-4

TEL. 054-203-5730 http://www.spac.or.jp

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 09:52 | TrackBack

東京芸術劇場プロデュース『チェーホフ?!』01/21-02/13東京芸術劇場小ホール1

 稽古場レポートを書かせていただいた『チェーホフ?!』を拝見しました。プレビューが1/21から始まっており、2日間の休演日を挟んでの初日です。
 
 楽しかった~~~!!次々と美しい絵が現れる紙芝居のようで、ちょっぴり怖いけどどうしても先が、奥が見たくなる魅惑的な絵本のようで、精巧な巨大パペットショー(人形劇)のようで・・・♪弦楽器が何台もそろった生演奏に体をゆだね、無邪気な子供のように夢を見た約1時間20分でした。

 チェーホフを知らなくても全く問題ないと思います。言ってしまうと、タイトルから「チェーホフ」を抜いて『?!』だけでもいい気がしました(笑)。でも専門家の方によると非常にチェーホフらしいそうです。凄いことですね。

 ※2月1日(火)19:00の回終演後のトークのゲストは茂木健一郎さんです。残席わずか!
 ※1月29日(土)連続サミット『チェーホフ?!』はこうして生まれた
  「第3回 新たなるチェーホフ」 
  メインパネリスト:鴻英良 ゲスト:岩松了/タニノクロウ ほか

 ⇒ツイートまとめ「茂木健一郎氏がタニノクロウ氏演出の舞台『チェーホフ?!』を「絶対に行った方がいい」と絶賛」(2011年2月2日)
 ⇒CoRich舞台芸術!『チェーホフ?!』※CoRichでカンタン予約!
 【舞台写真↓撮影:田中亜紀】
chekov_stage_photo.JPG

 分厚い木の枠に赤い緞帳、その下にはオーケストラピット。劇場に入るなりテンションはダダ上がり!開幕すると、凝りに凝った衣裳、装置、生演奏に、作品の一部になることに徹する実力派俳優たち・・・贅沢過ぎて芸劇小ホール1だってことを忘れました。劇場の事情を知らない観客だから言えることだと思いますが、「実はこんなこともできる劇場だったのね!?」と驚いてしまいました。

 本を持つ少年(?)が白髪の謎の女性(?)に導かれて、森の中(?)でさまざまな風景に、人に、出会っていきます。幻想的な短い場面が連続していくのをドキドキしながら見つめました。舞台で描かれることは全てチェーホフの作品(小説や博士論文)がもとになっているそうですが、私は全くといっていいほど引用元はわかりませんでした。幕が開いた途端に夢中になってしまい、チェーホフのことは最初から頭から離れちゃいました(笑)。

 目に見えるものをその人なりに味わえばいいんだと思います。私のようなただの観客とチェーホフの専門家が一緒に鑑賞して、お互いに違うものを感じ取っているものの、双方が楽しめる作品になっているんですよね。『星影のJr.』を思い出しました。また、視覚的に「美しいもの」は、それだけで確かな価値があるものだなと改めて感じました。タニノさんは凄い演出家だと思います。

 5人の役者さんも素晴らしかったです。篠井英介さんが明るく、コミカルな雰囲気でもって観客を迎えてくださいました。歌声にもうっとり。

 終演後に小劇場好きのお友達とお話していたんですが、タニノクロウ作品を初めて観る人にお薦めかも、です。タニノさんが主宰する庭劇団ペニノでは、もっとグロテスクだったりエロティックだったりしますので。見た目も内容(ストーリー?)もそれに比べたら少しマイルドだと思います。もちろん“わかる人にはわかる、通もうなる面白さ”は内包されています。

 ここからネタバレします。

 大きな木枠の赤い緞帳が開くと、それより少し小さい木枠と緞帳が。次々とマトリョーシカのように小さな木枠が現れ、妖精※(篠井英介)の誘いにのって少年(マメ山田)は奥へ、奥へと吸い込まれていきます。めっちゃ楽しい!※白髪の女性は妖精と呼ぶことにしました(勝手に)。
 月夜を描いた絵画がそのまま舞台になるのが素敵。木枠とあいまって入れ子構造がさらに際立ちました。上下に白い壁があり、舞台奥はホリ幕になっているシンプルな空間なのですが、砂漠、草原、海底、宇宙、牢獄などなど、想像力で七変化。
 拘束着を着た蘭妖子さんが「煙草の害について」をポロっと言うのに爆笑。私がチェーホフ作品だとわかったのはこれだけ(笑)。

 毬谷友子さんと手塚とおるさんのダンスは稽古場で観たのとは全然違うものになってました。エロスというより生命の輝きのようなものを感じました。マイナスよりプラスというか。背中から床の方に倒れて行った手塚さんが、床に落ちずに宙に浮いたままだったのは、どういう仕掛け!?牛の肉が天井から降りてきたのにびっくり。でもブラ~ンと動いたのはあまりきれいじゃなかったな~。できればストンとまっすぐ降りて来て欲しかったです(←わがまま)。

 カーテンコールでは出演者に加えて舞台裏で活躍していた演出部のスタッフの方々も出てこられました。タニノクロウさんも合わせると13人!出演者の倍以上です。そしてオケピにいるミュージシャンが5名いらっしゃいましたね。本当に贅沢です。

※舞台写真は主催者よりご提供いただきました。
チェーホフ生誕150周年記念『チェーホフ?!』~哀しいテーマに関する滑稽な論考~
出演:篠井英介 毬谷友子 蘭妖子 マメ山田 手塚とおる
作・演出:タニノクロウ ドラマトゥルク:鴻英良 音楽:阿部篤志 美術:田中敏恵 衣裳:太田雅公 照明:山口暁 音響:中村嘉宏 ヘアメイク:川端富生 演出助手:若月理代 特殊小道具:小此木謙―郎 舞台監普:白石英輔 宣伝美術:松下計 制作:勝優紀/樺澤良 制作助手:坂田厚子 票券:大迫久美子 主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)/東京都/公益財団法人東京都歴史文化財団
S席4,500円 A席3,200円 A席(25歳以下)2,000円 ※1/21(金)、1/22(土)のプレビュー公演は一律3,000円
http://www.geigeki.jp/saiji/025/index.html

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