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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2012年01月14日

東宝『ピアフ』10/13-11/06シアタークリエ

 イギリスの女流劇作家パム・ジェムスさんの戯曲を栗山民也さんが演出。大竹しのぶさんがシャンソンの女王エディット・ピアフを演じます。大竹さんは東京公演中に紫綬褒章を受章されました。大竹さん以外もすごい豪華キャストなんですよね。

 エディット・ピアフが主人公のお芝居はたぶん2度拝見してまして、一番記憶にはっきりと残っているのは、ピアフの恋愛に焦点を当てた美輪明宏さん主演の『愛の賛歌』。今作は戦時中を生きた1人の有名歌手の人生を描いていたように思います。

 ⇒「『ピアフ』初日観劇レポート
 ⇒「大竹しのぶさん 紫綬褒章受章会見レポート
 ⇒CoRich舞台芸術!『ピアフ

 土曜日のお昼に日比谷の劇場に着くと、ゴージャスなムードの人だかり。劇場の壁には大竹さんの顔写真入りの紫綬褒章受賞記事が載った新聞が、拡大され貼り出されていました。
 そういえばシアタークリエに来たのは久しぶりでしたね~。シャープで品の良い色合いの、派手でなくとも決して地味にならない、洗練されたデザインのお洋服をお召しのマダムたちが、劇場前に集まって談笑されています(着物じゃなくて洋装なのが銀座との違いかしら)。劇場内も含め華やかな風景で、私がよく行く小劇場とのギャップにしばらく戸惑っちゃいました。「観劇」の意味が違うんだろうなー。私はこういう華やかでゴージャスなのも大好きです。

 お芝居の美術もまた豪華でした。凝った装飾がほどこされた金色の額縁が舞台枠を囲んでいます。でも柱がところどころ朽ちていて、骨組みの針金が露出していたりも。額縁を埋めるどっしりとした赤い緞帳が開いて現れたのは、路上でした。舞台奥に黒や灰色、こげ茶色などの暗い色合いの煉瓦の壁がそそり立っています。

 大竹さん以外の役者さんは色んな役を演じます。スピーディーに場面転換して次々と時代が進んでいくのが快いです。戦時中の場面では、人間の愛を歌っているはずのヒット曲が、敵の殺戮を肯定するかのように響いて、胸をかきむしられるような思いがしました。ピアフがフランスのレジスタンスを支援していたエピソードがあり、巨大な国旗で盛り上がるナショナリズムをあらわす演出が見事でした。

 この作品はミュージカルではなく音楽劇なんですね。たとえば田代万里生さんやKENTAROさんが歌うと、歌い終わった時に自然と拍手が起こるのですが、ピアフ(大竹しのぶ)が歌うと拍手が起こりません(一部例外はあります)。歌としてでなくセリフとして、どうしても止められなくて口から飛び出てしまった叫びとして、受け取るからだと思います。音楽として聴かせるための歌声ではなく、全身からしぼり出される、ひとりの人間の命の証しのような、慟哭。ピアフの命でもあり、「大竹しのぶ」という女優の命でもあるのだと思いました。

 大竹さんは本当にパワフル。熱を宿した岩石のような、ゆるがない存在感。こんなお芝居を昼と夜に2度も上演してるなんて・・・世界を変えるのは体力だと思います(⇒この芝居より ⇒「体力で地球を救わないと」)。

 ここからネタバレします。

 ハーケンクロイツの腕章をつけた兵士らを含むドイツ人が、フランスに勝って、マレーネ・ディートリッヒの「リリー・マルレーン」を力強く歌う場面がありました。世界が切り裂かれるのを歌で表現する、素晴らしい演出でした。

 恋人(男)がいないと心穏やかでいられないピアフの、最後の夫は若いギリシャ人のテオ。うーん、D-BOYS STAGEでとても良かったので期待していたせいか、碓井将大さんが伸び伸びしていなかったのが残念でしたね。

 「水に流して(Non, je ne regrette rien)」が最後の曲でした。

≪東京、新潟、富山、石川、大阪、愛知≫
出演(順不同):大竹しのぶ 彩輝なお 梅沢昌代 辻萬長、山路和弘、高橋和也、田代万里生、碓井将大、KENTARO、山口馬木也、吉田理恵
脚本:パム・ジェムス 翻訳:常田景子 演出:栗山民也 音楽監督:甲斐正人 美術:松井るみ 照明:高見和義 衣裳:前田文子 音響:山本浩一 ヘアメイク:佐藤裕子 ステージング:西祐子 アクション:渥美博 歌唱指導:菅井英斗 舞台監督:荒智司 津田光正 演出助手:鈴木ひがし 製作:東宝
【休演日】10/17,24,31【発売日】2011/09/03 全席指定 9,500円
http://www.tohostage.com/piaf/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年01月14日 21:47 | TrackBack (0)