富士見市民文化会館キラリ☆ふじみの芸術監督である多田淳之介さんが、清水邦夫さんの戯曲を初演出されます。中村まことさん(猫のホテル)や大川潤子さん(三条会)など、強烈な個性と実力を兼ね備えた舞台俳優さんがキャスティングされた、公共ホールによる意欲的なプロデュース公演です。同劇場のレパートリーになるんですね。
途中休憩をはさむ、長い目のお芝居でした。休憩の時、清水邦夫作品で、こんなに日常と地続きに笑って楽しく感じるのって初めてかも・・・と思いました。
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≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
事故で記憶を失った男女3人が市民会館の舞台に逃げ込むと、彼らの家族と名のる男女が現れる。やがて会館に住み込む管理人夫婦も巻き込み、家財道具を並べた舞台のうえで、記憶を取り戻させるための奇妙な家族ごっこが始まる。そしてその過程では、はからずも崩壊してしまった、ある“家族”の姿があらわになっていく…
愛と裏切りのレッスンから浮かび上がる、過去と現在と家族の真相…
1960年代の「市民会館」に設定されたものがたりを、演出家・多田淳之介が「現在の劇場」に甦らせる。芸術監督がキラリふじみのレパートリー作品を創造するプログラム第一弾は、日本の現代演劇を牽引してきた劇作家、清水邦夫の戯曲に挑みます。
≪ここまで≫
観客は舞台上に作られたひな壇の客席に座ります。劇場スタッフのような人たち(中村まこと、大川潤子)がイスを運んだり、幕を下ろしたり(上げたり)、いわゆる劇場での作業をはじめます。劇場全体が舞台空間で、その中に観客も参加した状態なんですね。ものすごくわくわくしました。
今の感覚だと「そのセリフの後にそんな風に返すのは変だよね」と思うような会話がひん発するのですが、役者さんが体の中に根拠がある(と信じられる方法で)言葉を発してくださるので、意外性も含めて自然に受け入れられました。または、とっぴな展開をさらに上回るとっぴな行動(身体)を見せてくれて、笑ったり驚いたり、色んな方向に振り回されて、退屈しません。でも、ストーリーが苦手で・・・これはネタバレ以降に書きます。ごく個人的なことです。
劇場が生き物のように感じられたのが良かったです。人間を吸い込んでしまう、化け物(怪物・魔物)みたいに。
ここからネタバレします。
後半では「劇場で暮らす」と決めた家族が、家具を運び込んで生活を始めてしまいます。黄色一色に塗られた家具たちがちょっと不気味(美術:島次郎)。
結局、兄(宇井晴雄)が死んでしまうんですよね。ある共同体の中での仲間割れみたいな形で。そこで心が折れてしまいました。この劇から私が逃げてしまったんです。
ツイッターでのご指摘を受けて数えてみたところ、私は清水邦夫さんの作品を13本観ていまして、それを知った自分が驚いてしまいました。観劇に夢中になってもう10年以上になりますので、自分の好みというか、素養(感受性の限界)はわかってきたはずです。ここらではっきりさせなきゃいけないなと思いました。
私は「アングラが苦手」なんです。おそらくトラウマ? 大阪の田舎での息苦しい子供時代と、その頃に古いビルで見た天井桟敷の「奴婢訓」のポスターとが合体して、いわゆる60年代後半から70年代のアングラ演劇というものへの嫌悪感が、体に溜まっているんじゃないかと。そうじゃないと、こんなに反射的に心にシャッターが降りるはずないと思うんですよね・・・。これまでチャレンジの気持ちでそういう作品を観てきましたが、もう、これは体質なんだと受け入れ(あきらめ)ようと思います。
※アングラ演劇を批判する気持ちは全くありません。毎度書いてますように、ただの好みの問題です。
≪終演後のトーク≫
出演(?):多田淳之介 岩城保(照明)
全く変化してなさそうに見えて、実はかなり変化している、この作品の照明の実演をしてくださいました。
キラリふじみ・レパートリー新作
出演:宇井晴雄、伊東沙保、猪股俊明、中村まこと、大川潤子、大崎由利子、小田豊
作:清水邦夫 演出:多田淳之介(キラリふじみ芸術監督) 舞台美術:島次郎 舞台監督:中西隆雄、高橋京子 照明:岩城保 音響:泉田雄太 衣裳:竹原典子 演出助手:福本朝子
【日時指定・全席自由・整理番号つき】一般 3,000円 学生・シニア(65歳以上)2,000円 高校生以下1,000円 ※未就学児のご入場はお断りしております。保育サービスをご利用ください。
http://www.kirari-fujimi.com/program/view/35
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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