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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2012年03月11日

日本演出者協会プロデュース『フェニックスプロジェクトvol.4』03/10-11笹塚ファクトリー

 日本演出者協会が昨年の震災以降、笹塚ファクトリーで継続的に開催されているチャリティーイベントです(⇒過去レビュー)。第4回目はちょうど昨年3月11日から1年になる土日の2日間で、私は11日(日)に伺いました。「若い人の声を届けたい」との思いから、現役高校生によるお芝居4本の上演となったようです。

 12時から16時半まで約4時間半の大きなイベントでした。リーディングの途中で観客もともに黙とうをささげる時間を設けてくださったことに感謝します。

 都立新宿高校の『ひたすら、国道6号戦。』は昨年11月に都大会で鑑賞しました(⇒レビュー)。戯曲は東京都高等学校演劇連盟の公式サイトのデータベースに登録されています。無料ダウンロード(PDF)可。関連ツイート⇒

 ⇒togetterまとめ「フェニックスプロジェクトVol.4」(2012/03/29)
 ⇒CoRich舞台芸術!『フェニックスプロジェクトvol.4

 恥ずかしながら私は、知識として既に知っているはずのことを、お芝居で観て初めて本当に知った気持ちになることが多いです。だからお芝居をとても頼りにしています。知り直す、学び直す、そして変わるために、劇場に通うのだと思います。

 パンフレットがなく(見つけられず)、出演者やスタッフの名前がわかりませんでした。残念・・・。

 ここからネタバレします。セリフはうろ憶えですので正確ではありません。

 ■FTVスーパーニュース あさか開成演劇部(2012/03/28追加)

【プログラム3】高校2作品上演(福島)
●B「この青空は、ほんとの空ってことでいいですか?」あさか開成高校(郡山市)
 作:佐藤茂紀&あさか開成演劇部 演出:今野健太 出演:香西佳奈子、富永直樹、今野健太、鹿又由菜、坂路心、成山絵里香、ほか

 ≪作品紹介≫ 公式サイトより
 原発事故以来、福島に暮らす高校生として考えたことや感じたことを声に出したいという想いから即興劇を作り始めました。言いづらいことも劇中ならば「言えた」。そうして出来上がった物は数時間にも及ぶ物になりました。そしてその中から大切な大切な瞬間を切り取り、それを一つの芝居へと成長させたものがこの作品です。彼らにもたらされた生活の変化、ふるさと福島への思いを込め、翻弄されながらも強く生きようとする姿がそこにあります。
 ≪ここまで≫

 詩集「智恵子抄」(の“あどけない話”)を題材にした芝居を上演するはずだった郡山市の高校演劇部。でも今はウルトラマンと怪獣が登場する格闘モノの稽古をしています。今となっては智恵子の言う「本当の空」にリアリティーがないと主張する副部長と、それに反発する部員。間に入ろうとしてそわそわしている部長、そして転校してきた新入部員。夏なのに窓を閉め、長袖・長ズボンを着てマスクをしなければならない日常生活の中で、震災以前なら生まれなかったかもしれない、高校生の悲しみ、葛藤、闘いが描かれました。

 ひまわり畑の場面でピーーーーピーーと、どこかで聞いたことのある音が小さく鳴り続け、何だろうと思っていたら線量計の警告音でした。4μSvから5μSvとは、高いです。高校生が「そこ線量高いからこっち来い」と声を掛け合う、この現実の恐ろしさ。

 副部長イソジンを演じた今野健太さんの演技に見入りました。福島第一原発の10キロ圏内から転校してきた女子新入部員(香西佳菜子)との2人だけの場面では涙が流れっぱなし。なぜ避難なのに線量の高い郡山に来たのか。なぜマスクをしないのか。どうして自分を守らないのか。強く問いかけ、正直な気持ちを答える対話の形で問題を明確にし、今の意志を伝えてくれました。

 「(多数のバルタン星人が登場する芝居の稽古で)今はウルトラマンが嘘をついている。」
 「自分の思いを伝えないと、また繰り返される。チェルノブイリも第五福竜丸もそうだった。」
 「芝居は人の心を動かす。」

 終演後に偶然お会いした知人が今野さんのお知り合いで、直接お話することができました。今野さんはこのまま東京に滞在し、3月17日に日本青年館大ホールで上演される『CARE-WAVE AID Vol.4 被災地の子ども達による【平和宣言3・11】』に出演されるそうです。

 ザ・ブルーハーツの「シャララ」が何度も流れて、悲しくて、苦しかった。私が中学生の頃によく聴いていた歌を今の高校生が聴いていて、そしてこの歌詞が突き刺さるように響く世界になってしまうなんて。


●A「今伝えたいこと(仮)」相馬高校(相馬市)
 出演:3人の女子高生

 ≪作品紹介≫ 公式サイトより
 東京電力福島第一原子力発電所から45キロ、死者行方不明者あわせて459名の激甚被災地である相馬に立地する相馬高校です。会場が警戒区域の中にあるため、昨年の春の大会は実施されませんでした。今私達が置かれたこの状況について考え、それを芝居にしてみました。
 ≪ここまで≫

 ぐだぐだと楽しそうにおしゃべりする帰宅部の女子3人。その夜、突然1人が自殺してしまい、残された2人は胸の内を明かし始める。
 「未来なんか、希望なんか持てるわけがない」と投げやりに言い放つのを決して非難できない現状。そして死者となっても「助けて!」と叫ぶラストシーン。直接「助けて」って言われたのは、初めてかもしれません。


【プログラム4】3.11リーディング企画 
●「3.11から未来へ 高校生、100文字のメッセージ」 ⇒公式ブログ
 構成:森さんという方(?) 演出:東京都立世田谷総合高等学校のどなたか 出演:約25名の現役高校生(都立戸山高校 駒込高校 世田谷総合高校 東京農大一高 開成高校 都立足立高校、ほか)

 ≪作品紹介≫ 公式サイトより
 高校生の目に東日本大震災はどう映ったのか。そして1年経った現在、それぞれの思いは―。全国の高校生から集められた3.11をめぐる「100文字のメッセージ」。東京の高校演劇部員たちが14時46分に合わせて読み上げます。
 ≪ここまで≫

 3月11日という日を擬人化するところから始まり、海や家、そして放射性物質までも。日本人らしいと思いました。子供たちの「地震が怖い」という言葉が、鮮明に昨年3月のことを思い出させてくれました。
 劇中で観客も一緒に黙祷ができました。特別な時間をありがとうございました。「これからどうしよう?」と迷う気持ちをそのまま発して終幕したのも、私は良かったと思います。


【プログラム5】高校1作品上演(東京) 
●C「ひたすら、国道6号線。」新宿高校(東京都) ⇒公式ブログ ⇒過去レビュー ⇒戯曲アーカイブ
 関係者:高木優希(作・演出) 石井純哉 太田歩 北口美萌 佐藤友架 ほか

 ≪作品紹介≫ 公式サイトより
 福島県いわき市の国道6号線沿いを僕が見てきた後僕の頭の中を文字に起こした芝居です。どんな芝居か、未だに作者の僕も分かりません。とりあえず、上演後観客の皆様に何か考えて頂ける作品でありたいと思ってます。
 ≪ここまで≫

 笹塚ファクトリーは昨年11月の都大会の会場よりも小さな空間で、客席も舞台に近く、表情や絵などがよく見えて臨場感が増しました。やはり小劇場は贅沢です。

 役者さん一人ひとりが敢えて長い間を取るようにしていたのか、会話にこまごまと無言の間(ま)が挟まれていました。それでも(それゆえ?)空気の密度が高かったのは稽古の成果なのだろうと思いました。観客が舞台をじっと見つめて、何が起こっているのかを考えられる、充実した時間を作ってくれていました。ただ、間(ま)を長く取りすぎてスピード感や切迫感が薄まったようにも感じました。想像と現実の切り替え(場面転換)はもっと素早くてもいいと思います。

 ケーキを演じた女性は堂々たる存在感で、しばしば明るい笑いを誘っていました。登場を心待ちにする観客も多かったと思います。
 主人公が最初に恋に落ちる女生徒役は、キャストが変わったのかしら。色っぽくて可愛い上に、生足がなまめかしくてドキドキでした。
 高木優希さんがもし高校3年生になっても部活動を続けるならば、次回作もできれば観たいと思います。柿喰う客の玉置玲央さんのことをお好きなのだろうと思われる身体表現。がんばって!


 2012/02/24 にアップロードされていた動画です↓(2012/03/29)

福島の高校生×東京の高校生 コラボレーション企画
主催:日本演出者協会、笹塚ファクトリー 日本演出者協会理事長:和田喜夫 企画運営委員:宮田慶子、松本祐子、林英樹、青木淑子、町聡子、深寅芥、森陽平、斎藤美明、舞香、長谷川直輝、菅野直子他【順不同】 実行委員:青井陽治、瓜生正美、木村繁、ふじたあさや、森井睦、深津篤史、流山児祥、貝山武久、坂手洋二、ペーター・ゲスナー 【順不同】 制作:斎藤由夏、伊藤愛、松尾容子  舞台監督:斎藤美明  照明:千田実 協力:社団法人日本劇団協議会 社団法人国際演劇協会(ITI/UNESCO) Algiid、 福島県高校演劇連盟、 日本演劇教育連盟、 岡崎恵介 鴇田くにビヨンドXプロジェクト
【発売日】2012/02/11 高校生以下1,500円 一般2,000円
※このチャリティーイベントの収益金は被災地の舞台芸術家団体に送ります。なお、収益金の一部を福島の高校生作品上演の諸経費として使わせて頂きます。
http://phoenixpro.jimdo.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年03月11日 23:49 | TrackBack (0)