「日本の劇」戯曲賞2011最優秀賞受賞作の初上演です⇒選評(PDF)。製作は社団法人日本劇団協議会で、文化庁が主催しています。今年の応募締め切りは6/29必着(郵送or宅急便)。
受賞戯曲の上演が決まっている賞は多くなく、昨年の『オトカ』を見逃したので今年は初日に伺いました。上演時間は約1時間50分。石原慎太郎都知事が客席にいらしてて、ちょっと驚きました。最初から最後まで鑑賞されていました。
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≪あらすじ≫ 公式サイトより
9月の終わり・・・近郊のとある町。
世間に名をはせた画家上谷大吾は病に倒れ
まさに往生のときを住みなれた我が家で迎えようとしていた。
報せを受けた彼の血をひくそれぞれに母の異なる子供たちは
それぞれの思いを抱え集まってくる。
--そして始まる、いびつで可笑しな家族もどきの数日間。
≪ここまで≫
末期がんで死期が近い老齢の著名画家は3度結婚し、その度に子供が生まれたので、異母兄弟が集まってきます。役者さんの演技のタイプがそれぞれに違い、それがいい意味の混濁、化学変化といった効果を生んでいなかったため、プロデュース公演らしい、いわゆる寄せ集め感が否めない仕上がりでした。
舞台美術の張りぼて感はわざとなのかしら・・・。立体的に建てこまれた家屋ですが、存在感としては書き割り (平面に描かれた絵画)でした。あの演出、演技だと、たぶんわざとじゃないと思うんですよね~・・・
演技のタイプとしては、絵描きの弟子(古河耕史)、中学3年生の娘(鈴木ひかり)が私好み。
柿丸美智恵さんはいつもながら自由で奔放、かつ包容力のある存在感が魅力的でしたが、エロスを封印した役も観てみたいと思いました。
この戯曲の作者である鈴木穣さんは、テアトル・エコーに新作を書き下ろすそうです。折り込みの仮チラシより。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
3人目の妻(海外で活躍する画廊経営者・登場しない)との間に生まれた中学3年生の娘(鈴木ひかり)が、住みこみの絵描きの弟子(古河耕史)と肉体関係を持っているなど、市井の人々の日常を描く戯曲とはいえ、けっこう刺激的です。スパっと核心に迫る短くて強いセリフがあり、言葉としても展開としても面白いと思いました。でも、演出と演技のせいだと思うのですが、シチュエーションの信ぴょう性に欠けていて、頭に疑問符が浮かぶこと多数。また、性にまつわるテーマばかりなのは、私にはちょっとつまらないというか、30~40代の夫婦間、それより広い年齢層の家族間には他の問題も山積みだと思うので、性以外も描いてほしかったです。
2人目の妻との間に生まれた主婦(弓場沙織)と、絵描きの弟子(古河耕史)とのキスを含むラブシーンは、もっと危険でドラマティックになるんじゃないかな。消えた弟子のゆくえが明らかにされないラストが良かったです。二兎社『兄帰る』を思い出しました。
1人目の妻との間に生まれた長男(押切英希)が終盤で、「小さい頃にこの家で~」と昔話を語ります。となると、舞台美術の家屋には数十年の年輪を感じさせる必要があると思うんですが、その香りはなく、「家の形に似せた板の集合体」のように見えました。最初は何らかの演出意図なのかと考えたんですけど・・・物語の設定を疑ってかからざるを得なくするのは、作品にとって邪魔だと思います。やっつけ仕事みたいに感じたのが悲しいです。
中学3年生の娘(鈴木ひかり)の金髪はウィッグにしか見えなかったです。黒髪もはみ出てて・・・。「染めた」のなら、そう見えるように改善しないと意味が伝わらないと思います。ウィッグを普段着として使う若者も今は多いですから。
日本の演劇人を育てるプロジェクト 「日本の劇」戯曲賞2011
出演:押切英希(文学座) 有馬自由(扉座) 星智也(文学座) 古河耕史 古川龍太 弓場沙織 鈴木ひかり 柿丸美智恵(毛皮族)
脚本:鈴木穣 演出:西川信廣(文学座) 美術:石井強司(文学座)、照明:賀澤礼子(文学座)、音響:中島直勝、衣装:山田靖子、舞台監督:道場禎一、宣伝美術:早田二郎、宣伝:ユータス プロデューサー:菅野重郎 制作:日本劇団協議会 松村久美子
【発売日】2012/02/03 前売 3,000円/当日 3,500円 学生 2,500円(日本劇団協議会のみ取扱)
http://gekidankyo.blog59.fc2.com/blog-entry-33.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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