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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2012年04月23日

空想組曲『深海のカンパネルラ』04/15-22赤坂RED/THEATER

 空想組曲はほさかようさんが作・演出を手掛ける個人ユニットです。作品ごとに役者さんを集めるプロデュース形式の公演を継続されています。上演時間は約2時間15分(休憩なし)。

 「CoRich舞台芸術まつり!2012春」審査員として拝見しました(⇒110本中の10本に選出 ⇒応募内容)。※レビューはCoRich舞台芸術!に書きます。下記にも転載しました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『深海のカンパネルラ

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 僕たちは誰も、あの頃には戻れない
 「絶対に引き返さない」
 決意と闇を胸に少年はカンパネルラとともに銀河鉄道に乗り込んだ。
 だけど誰も教えてくれなかった。
 幸せの難しさも、永遠のおそろしさもーー。
 ≪ここまで≫

 ■統一感のある純なファンタジー

 東京の小劇場界で知名度のある、個性的な役者さんがそろっています。知る人ぞ知る、かなり豪華なキャスティングですね。残念ながら私が観た回は、息が合っていないせいなのか心地よいリズムが生まれず、“いつも通りにいっていない”印象でした。魔女的ポジションの2人(小玉久仁子&牛水里美)が登場したところで面白くなったのですが、会心の一撃が出なかったですね。

 シンプルだけど細部へのこだわりが見て取れる抽象美術に、統一感のあるロマンティックな衣裳。照明で切り替えて場面転換するのは、絵として美しく、メリハリもはっきりしています。音楽および音響効果については、オペレーションのタイミングが合っていない気がしました。開場時間に流れていた曲は憂いを含んだメロディアスな曲が多く、「メランコリックなファンタジー」であることをアピールし過ぎているように感じました。美術、照明、衣裳、選曲などのスタッフワークがきれいにまとまった作品で、見た目は確かに美しいのですが、予想の範囲内に収まってしまったのは残念。

 宮沢賢治作「銀河鉄道の夜」を下地にした創作ファンタジーであることは、タイトルからもチラシのビジュアルからも明らかです。私としては、そのイメージをもうちょっと裏切って欲しかったですね。繰り返しになりますが、たまたま調子の悪いステージに当たったのだと思います。

 ここからネタバレします。

 プラネタリウムが好きなけんじ(篤海)と水族館が好きなりく(多田直人)。サンシャインシティで偶然会った2人の男子高校生が、心通わせて友達になりますが、間もなくけんじは沖縄の海で溺死。たった一人の大切な友人を失ったりくは、受かった大学にも行かず引きこもり、「銀河鉄道の夜」の物語の中に没入してしまいます。銀河鉄道の中では必ずけんじ(=カンパネルラ)に会えるから。そんなりくを救出するために、実の姉(川田希)や高校時代の友人らが、りくの部屋を訪れて説得しようとしますが…。

 親友を失ったティーンネイジャーの傷心というテーマだけで、2時間以上は持たせられないんじゃないでしょうか。無論、他にもテーマはあったのでしょうが、私にはそれほど重要なものとしては伝わってこず。
 宮沢賢治(中田顕史郎)が登場したのには驚きました。そういえば『ドロシーの帰還』でも作家が登場しましたね。入れ子構造をさらに強固にする演劇的効果はあったと思います。でも賢治に実の妹のことを語らせたのは、やりすぎだったんじゃないかな~。

 最初はお葬式の場面でした。当たった対象物が白黒になる黄色いライトが、あの時間だけのために(たぶん)使われているのは贅沢ですね。回想シーンが冒頭に来ていて、終演後に「あぁ、最初はあの場面だったんだ」と思い出し、味わい深くて良かったです。


「CoRich舞台芸術まつり!2012春」最終選考作品
出演:多田直人(演劇集団キャラメルボックス) 篤海  古川悦史 川田希 二瓶拓也(花組芝居) 石黒圭一郎(ゲキバカ) 小玉久仁子(ホチキス) 渡邉とかげ(クロムモリブデン) 牛水里美(黒色綺譚カナリア派) 鶴町憲 内山正則 上田理絵(A-LIGHT)  中田顕史郎
【作・演出】 ほさかよう 【舞台監督】 藤本志穂(うなぎ計画) 【舞台美術】 松本わかこ 【音響効果】 天野高志 【照明】 榊美香(有限会社アイズ) 【衣装】 広川文 【イラスト】 東京幻想 【宣伝写真】 守谷美峰 【宣伝美術】 岩根ナイル 【演出補佐】 渡辺望(天幕旅団)/海野広雄(オフィス櫻華) 【制作】 塩田友克 【制作協力】 岩間麻衣子 【企画・製作】空想組曲 【提携】赤坂RED/THEATER
【発売日】2012/03/12 前売 3500円 当日 3800円 平日昼割 3300円
http://www.k-kumikyoku.com

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年04月23日 11:59 | TrackBack (0)